ロースクール回想記
 今年某ロースクールでLL.Mを取得する予定の方とお会いする機会があった。彼はCorporate Lawyerで基本的には自分の専門分野を深めたいと思って留学をされたようだが、授業選択の結果が正しかったのかどうか少し疑問を呈されているようだった。

 アメリカのロースクールの授業は当然ながらJDなど当該法律を初めて学ぶ人向けに開講されており、例え日本においてであれ、数年間の法律実務経験を有する人たちにとって難しくもなんともないというのが彼の感想で、僕もその意見に100%同意する。もちろん個々人の経験も違えば、ロースクールも違う、受講する講義を担当する教授も違うということで、一般化することは危険なのだけど、少なくともCorporate LawyerにとってLL.M.で目新しいことは少ないのではないかと思う。割り切って言ってしまえば、新しいのは英語だけだ。特に会社法・証券取引法という分野では、日本はその多くはアメリカから法律を持ってきているわけで、契約実務の分野でもアメリカの契約をそのまま日本語訳したような契約書も多数みかけるわけだから、詳細は知らないまでも実はほとんどの知識は既に取得しているものなのだ。

 そもそも僕は留学して何かをキャリアのために身につけようと思っているわけではないし、生活を含めて色んなものを楽しみ、感じられればよいと思っているので、仮に講義から得られるものが少なくとも留学が無駄だとは思っていない。ここで学んだことは即効性のある知識としてではなく、もう少し広いレベルの教養として自分の中に生きていけばいいのではないかと思っている。ただ、何も授業で得たものはありませんというのではあまりにもさびしいので、自分の反省も含めてどのようにロースクール生活をおくるべきか(僕にとってはおくるべきだったかということでもある。)、少し書いてみたい。

1.専門分野を深めたいというのであれば自分で勉強するしかない
Corporate Lawyerが多くとる科目としては、Corporation, Merger & Acquisition, Corporate Finance, Securities Regulation, Antitrust, Bankruptcy…といったところがほとんどではないだろうか。多くのロースクールでは、これらを全部選択受講した段階で、ほぼ一年の受講枠が埋まってしまうと思う。それでも80%は本を読めばすんなり理解できることだと思う。英語の巧拙はあるにせよ、授業で取り扱うことはほとんど知っているという状態だろう。それ以上のことをやりたければ、教授のところに行き、自分でもリサーチをし、論文などをどんどん読んでいくほかない。
僕の基本的な選択肢は自分で勉強するというもので、本や論文を教授に紹介してもらい、個人的に質問(というか雑談)に行き、LL.M.ペーパーの題材にもした。多くのロースクールにおいて、教授は比較的親切だし、Appointを入れて個人的に相談に乗ってもらえると思うので、これらの機会を生かさない手はない。
Assignment以外のものを読むなんてとても時間がないという方、次の学期には要領をつかみ(読むのが早くなるのが半分、手の抜き方を覚えるのが半分)、ぐっと楽になるはずですから、ご心配なく。

2.専門分野以外のことも勉強して損はない

 専門分野についてどのように知識を深めたところで、日本に帰国してアメリカ法の流れをおいかけていくのは不可能だから、知識として利用できるのはほんの数年間だけだと思う。Corporate Lawに関係する分野だけでなく、Contractだとか、Tortだとか、International Trade, IP系の科目だとか、なんでもいいから勉強してみるのも悪くない。英米法を勉強して日本法の理解が深くなるということは実際あると思うので、日本であまり知らなかった法律を勉強するのも面白い。

3.法律以外の周辺のことも教養として勉強して損はない

僕が反省しているのは授業選択をPracticalにやりすぎたのではないかということだ。別に役に立とうが立つまいが面白ければそれでいいのだ、くらいの感覚で授業を選択した方が面白い生活がおくれるような気がする。統計学だとか、Public Policyとか、Law and Economicsだとか、Legal Historyだとか、一見どうでもいいような(失礼)ものにこそ、学ぶ価値があるような気もする。多くのロースクールではIntroductionの中に含まれていることが多いのかもしれないけど、憲法をきちんと学んでおくと、人種差別、ゲイ差別など新聞で話題になっていることがよりわかるようになるので、これは是非お勧めしたい。

たった一年で何もかも勉強するのは不可能だし、そんなことをしていたらそれこそずっと図書館で誰とも話さずに本を読み続けることになってしまう。せっかくの留学期間、それももったいない。貴重な機会だから友人を作り、色んな場所を旅行し、色んなものを楽しむべきというものだ。結局何を選択し、何を捨てるのかは個人の選択の問題であって、他人がとやかく言うべきものじゃないのだけど、ひとつの意見として参考になればいいと思う。

皆さんの留学が実りあるものになりますように。
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by neon98 | 2005-09-23 23:53 | Law School
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