これはすごい論文だ(その1)
研修先でようやく一つのプロジェクトが終わり、少し時間があいた。日本法について扱った文献を検索していたところ、コロンビア大学のMilhaupt教授による有名な敵対的買収に関する論文、In the Shadow of Delaware? The Rise of Hostile Takeovers in Japanをおしのけて目にとまったのが、これである。著者はMark.D.Westというミシガン大学の日本法の教授である。この人は、他にLegal Determinants of World Cup Successなんていう巷では密かに有名なパロディ論文を書いている(パロディである点についての解説はこちら

仕事との関連性からいうと本当はMilhaupt教授の論文を読まないといけないのだが、研究テーマの斬新さに思わず、魅了されてしまい、この論文を先に読むことにした。

(ご注意)この論文は日本における社会道徳と法規制との関係等をラブホテルを題材に論じるものです。著者自身も真面目に研究され、私も真面目にご紹介するに値するものだと思います。不適切な表現は避けたつもりですが、テーマがテーマだけに不快に思われる方もいらっしゃるかもしれませんので、気にされない方のみお読みください。



ラブホテル、少なくとも”Adult Hotel”は米国にも存在するが、それらはしばしばやばい場所にあり、みずぼらしく、安くいかがわしい施設である。これに対し、日本ではディズニーランドの城や自由の女神のような派手な建築物とまばゆいネオンに包まれ、カップルが注意をひきつけることなく、街路から入ることができるような場所に存在する。
こんな感じのIntroductionに続き、ラブホテルの名前の特徴、設備、システム、価格帯、利用者、ラブホテルに関連して発生する犯罪(売春)、ラブホテルの収支などの説明がなされ、江戸時代から始まる「ラブホテル」の歴史、性風俗の歴史などについても調査がなされている。タブーとまでは言わないまでも、少なくともアカデミックな文脈では扱われることが稀であり(法律学という分野ではおそらくは皆無ではあるまいか)、十分な資料もなく、情報収集も極めて困難な分野について現地調査を行って論文を仕上げている点には賛辞を示したい。

例えば、ラブホテルに関する文献、風営法などの関連法律の調査はもちろん、3年をかけて日本全国の50ものラブホテルを訪問(unaccompaniedと注記してある)し、18のホテルで71名にインタビューし、さらの30のラブホテルの従業員とカジュアルに話をされている。インタビュー対象者は、ざっと列挙すると受付、清掃員、支配人、オーナー、ラブホテルコンサルタント、警察関係者、(通常の)ホテル関係者、反ホテルキャンペーン実施者、性産業従事者などである。50人の常連顧客に対する非公式な聞き取り、300名を超える知識人からの情報収集も行ったということだ。調査の途中で顧客層を見るためにどのような人がラブホテルに入るのかを観察したそうで、ミシガン大学という名門大学のロースクールの教授がラブホテルの前でじっと観察しているところを想像すると思わず、笑ってしまう。

日本人の法意識のグレーな部分を見せつけられるとともに、法規制が産業にどのような影響を与えるのかの題材として真面目に面白い(興味本位でも面白いが)テーマだと思う。少し長くなってきたので、気になる内容はまた次回。

至って真面目に研究された論文を真面目にコメントしていくつもりなので、嫌でなければお付き合い願いたい。次回へ続く。
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by neon98 | 2005-10-29 06:28 | LEGAL(General)
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