時々Blogにコメントを下さる
Bunさんが大体どのようなエントリに反応してくださるか概ねわかってきました(^^)。BunさんのBlogやBunさんが他の方のBlogに残されたコメントをみると、どこで拾ってきたのか全く想像もつかない超一流のギャグ映像やら、ケインズ経済学に関するコメントやら、普段何をされている方なのか全く想像もつきませんが、色んな雑学にアンテナを広げられている方のレーダーにひっかかるというのはなかなか光栄なものです。とよいしょをしたところで、一銭にもならないことは承知しておりますので、ぼちぼち
前々回紹介した論文の本論に入っていこうと思います。
その前に、なぜこの手の論文に価値を見出すべきなのかというところから少しだけ個人的見解を書いてみようと思います。まず、読もうと思った動機は当然ながら興味本位なのです(^^)が、実際に読んでみた後、私の感想は「Blogネタとしておもろいやん」から「学問的にもおもしろいじゃないですか。」に変わりました。というのは、ある種の法規制がなされたときに社会経済が現実にどのように作用を受けるのかという実証研究というのは、まだまだ日本の法律学の中では研究が進んでいないからです。
当然ながら、立法者は、立法段階で立法目的と規制手段の選択ということは当然考えないといけないわけですが、その時点での最良の手段というのは「合理的推測」に基づかざるを得ないわけで、こういった実証的研究はこのような「合理的推測」を歴史的に検証し、後の「合理的推測」を高めていく作用を持ちます。もちろん、社会科学の分野において、規制と効果との間の因果関係の厳密な立証は不可能なため、実証的研究自体に推論が入らざるを得ないとか、統計・調査方法に限界があるということ自体は自覚して読んでいく必要はありますが、この手の実証的研究というのは蓄積されていくこと自体に意味があるように思うのです。私は、法と経済学という分野については耳学問でかじった程度の素人にすぎませんが、法が何のために存在するのかということを考えると、日本には日本なりの法と経済学の発展の仕方があるのではないかと思うわけです。
さて、前置きはこれくらいにして、実際に論文を紹介していくことにします。まず、規制の歴史をみていきますが、ケーススタディとして面白いと思うのはラブホテル業界が「定義が難しい業種」であるという特色を有するからです。通常のホテルとラブホテルをどのように区別していくのでしょうか。その実際的な困難さを考えると、規制手段に限界があることに気がつくでしょう。以下、著者の主張は引用スタイル(但し、本来の引用のように逐語的な翻訳ではありません。)にして、論文の骨子をご紹介していくことにします。
(ご注意)この論文は日本における社会道徳と法規制との関係等をラブホテルを題材に論じるものです。著者自身も真面目に研究され、私も真面目にご紹介するに値するものだと思います。可能な限り不適切な表現は避けたつもりですが、文脈を失わないために説明を欠かせない場所については「不適切な」表現により気分を害される方がいらっしゃるかもしれません。気にされない方のみお読みください。
1.ラブホテルと売春との歴史的関係
まず、著者は江戸時代に遡り、「ラブホテル」と売春との関係から分析に入ります。売春防止法についての法意識の調査は当時の日本人の感覚を知るうえでとても興味深いものだと思います。
江戸時代は”deaiya”、20世紀の初めからは”machiai”, “noodle restaurants (sobaya)”で売春行為が行われ、これらは当該行為を職業とする方を対象とするものだった。1948年の調査では、70%の回答者(男性のうち78%、女性のうち59%)は組織的な売春宿は社会的に必要であり、52%の回答者(男性のうち58%、女性のうち45%)は売春防止法に反対しており、売春防止法はその成立を1956年まで待つこととなった。また、売春防止法は、売春を「防止」するためのもので、文字通り売春を「禁止」するものではなかったため、大きな規制効果はなかった。
ご存じの方が多いと思いますが売春防止法は一応売春行為を禁止するものの、罰則の対象となるのはその勧誘や斡旋行為であって、売春行為そのものではありません。現在多くの売春行為は淫行条例によって規制がなされています。著者は警察関係者からのインタビューから、日本での売春防止法のEnforcementはあいまいで、原則としてラブホテルの中にまで警察の手が及ぶことはないとコメントをしており、このあたりの観察は日本人の法意識を知るにあたり面白いところではあります。
2.なぜ規制がなされることとなったのか風営法は風俗産業を規制しているが、ラブホテルは通常のホテルとの区別が難しいために旅館業法によって規制がなされているだけであった。いかなる法律もラブホテルと通常のホテルとを区別するメカニズムを有していなかったのである。ラブホテルの数が増えるにつれ、それに付随する問題点が指摘されるようになった。日本の緩やかな区画規制においては、居住用建物が許される11の区域のうち6区画でホテルの建築が許されていたため、学校の側などにもラブホテルが建設され、その問題点は明らかであった。ラブホテル反対論者は、性産業が公衆の面前におかれることによる社会道徳的な懸念、ラブホテルにしばしば付随する犯罪、周辺環境への悪影響、青少年への悪影響などを問題にし、日本政府は規制に乗り出した。ラブホテルという産業は大手企業、家族営業、犯罪組織など多様な営業主体に分かれていたため、業界での自主規制という方法では対応ができなかったのである。
(長くなりましたので、続きは次回ということで。次回こそ、ちゃんと書きます。たぶん…。)