風営法中間試験講評
(過激な内容は含まれていないはずですが、書く自由もあれば読まない自由も認めているブロガーとしてしつこく注意喚起です。)出題の前提となっている論文は日本における社会道徳と法規制との関係等をラブホテルを題材に論じるものです。著者自身も真面目に研究され、私も真面目にご紹介するに値するものだと思います。可能な限り不適切な表現は避けたつもりですが、テーマに鑑み、気分を害される可能性がある方は読まないでください。



3回にわたり、アメリカのロースクール教授の論文を紹介したうえで、以下の出題をいたしました。
1. 今までの論述を参考に既存の風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の枠組みでラブホテルを規制するとした場合に、どのように定義規定を設けるべきか。理由を含めて簡潔に記述せよ。
2. 他に異なる規制アプローチが考えられるか。長所・短所を比較検討のうえ、もっとも望ましいアプローチを簡潔に記述せよ。
〔制限時間24時間以内。いかなる文献の参照も可能とする(但し、引用すること)がコピー&ペーストは不可とする。回答はトラックバックによること。以上。検討を祈る。〕
「先生」として偉そうに講評をするだけの資格は私にはないんですが、調子にのってノリで考えた出題に対して回答を47thさんgo2cさんから頂きましたので、責任をとって「先生」として講評をすることにいたします。なお、「トラックバックによること」という回答形式に従われなかったgo2cさんの責任は、あくまでもシャレの出題なので問わないことにします(^^)。

1. 出題意図

エントリを書き上げた当時は文字通り「ああ疲れた」という状態で、出題意図は「何も考えてなかった」というのが正直なところです。若干、後付け的に当時頭の中にあった出題意図らしくものを書くとすれば、論文を読んで規制をする場合の手段の選択の困難さを認識し、規制目的との間でもっとも適切な手段を選択し、その理由を述べなさいということでしょうか。ファッションホテルですからその存在自体は社会的に正当なものだという意見の方が多いでしょうし、規制根拠との関係で合理的な手段が選択され、その理由がよく説明されていれば合格点が与えられる簡単な問題です。24時間以内のオープンブックの出題は、ロースクールのTake Home Examを想定しています。どうでもいいですが、Take Home Examはほとんどエンドレスのように思われ、時間が長ければ長いほどNative English SpeakerであるJDとの差がつきますし、ほとんど寝ずに仕上げたりする人もいますから、苦しいんですよね。

私はたまたま好奇心からある論文をご紹介し、テキトーに出題しただけなので、自分の論文でもないものを自慢してもしょうがないのですが、回答をいただいてつくづく面白いテーマだなあと自分で思ってしまいました。というのは、ラブホテルという存在を非常に敵視する方から、そんなに目くじらたてなくたっていいじゃないという方から様々であり、社会として色んな対応方法がありうる業態なんですよね。ある意味では、競馬・競輪・パチンコなどのある種の「賭博行為」よりも健全といえ、色んな価値観に基づいて様々な規制(規制しないという選択肢も含む。)が考えられるところです。こういった観点からは、出題者が適切な所与の前提を設定しなければ回答が無限に広がるという可能性のある問題なのかもしれません。

2. 設問1

設問1は、定義がラブホテルという業態を完全にキャッチできなかったということを評価したうえで、風営法を所与の前提としてそれを活用する場合に、定義をどのように設定すべきかという問題です。

規制する側の立場としては、ラブホテルの中で行われるかもしれない犯罪行為そのものを処罰すれば十分であってラブホテル自体に規制は不要だという立場から、極端ではありますがラブホテルなるものは景観や青少年に与える悪影響から存在を許さないという立場までありうるところであり、ここは価値観の問題でしょうから立ち入らないことにします。まずは規制目的を考えたうえで、都市計画規制・増改築規制を主体として風営法規制を前提とした場合にどういう定義にするか、定義と規制目的の関連性が考慮されていればOK、さらに長所・短所がきちんと考慮されていれば加点という具合でしょうか(何だか偉そうで申し訳ありません。)。

「今までの論述を参考に既存の風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律の枠組みでラブホテルを規制するとした場合」としたのは、政府の立場が正当であるとしたうえでラブホテルを逃がさないキャッチオール的な定義(「専ら性行為を行うことを目的とする施設」とか)を考えるのか、弊害の大きさを考慮して現行法の定義に近い具体的なものを考えるのか、後者とした場合にどういった特徴をとらえるのが適当なのかという点を考えていただきたいと思ったわけですが、出題を読んでもはっきりとはわかりにくいですね。出題者の問題意識をどこまで明らかにするのか、「先生」になるのは難しいことを十分認識いたしました(^^)。

ということで、何が正解かはともかくとして、私が論文を読みながら考えていた点を補足します。私の問題意識としては、ラブホテルと通常のホテルが外観上は誰でも区別ができて、実際に顧客はラブホテルであることを認識したうえで利用している例が大多数であるにもかかわらず、法が区別できない原因はなんだろうかという点にあります。回転ベッドという特徴にラブホテルの特性を認識すると、回転ベッドのないラブホテルが顧客サービスとして機能すれば容易に法からの逸脱を許してしまいますから、それを許さない方法は存在しうるのだろうかということを考えないといけません。顧客がラブホテルと認識する要素は、看板にドンキーコングがついているとか、お城みたいとか、ネオンが派手だとか、カップルウケを狙った名前になっているとか、場所ですぐわかるとか、色々とあるわけですが、これらの要素で通常のホテルと区別するわけにはいきません。一つありうるなあと思っていたのが「顧客の匿名性」(政令では宿泊名簿というかたちでとりいれられています。)という観点でとられる方法ですが、逞しいラブホテル業界はそれをも乗り越えてくるのでしょうね。

さて、go2cさんの回答をみてみましょう。
「無店舗型性風俗特殊営業の用に供することを目的とする宿泊施設」と定義する。ラブホテル規制は宿泊施設の異性間の自発的な性行為のための利用まで規制することを目的としてはいないと思われるので、宿泊施設が風俗営業の用に供されているか否かを基準にするほうが適切。
ラブホテル自体は自ら接客サービスを提供してはいないので、そこでサービスを提供する「無店舗型性風俗特殊営業」(法2条7項)の存在があってはじめて「善良の風俗と清浄な風俗環境」や「風俗営業の健全化」が問題になる。
したがってホテル・旅館の中で無店舗型性風俗特殊営業業者と契約・提携しているものについて規制をかけるのが法の目的にもそっていると思われる。
もっとも利用客が形式的に宿泊料金を払う場合、施設側が無店舗業者を黙認する行為(通常のホテル)にどのように規制するかは今後の課題。
私は、「異性間の自発的な性行為のための利用まで規制することを目的としてはいない」とされていることから、この回答を性風俗サービスを提供するホテルのみを対象として規制をかけるという趣旨と理解しました(読み間違いであればご指摘ください。)。つまりは自発的な性行為のために利用され、自ら(または提携業者を通じて)そういったサービスを提供しないラブホテルは、どこに存在していてもかまわないという立場と思われます。個人的にどう思うかはともかくとして、この立場も十分ありうるところだと思います。

ただ、定義としてどうかというと、「無店舗型性風俗特殊営業」とは、次の各号のいずれかに該当する営業
一  人の住居又は人の宿泊の用に供する施設において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業で、当該役務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもの
二  電話その他の国家公安委員会規則で定める方法による客の依頼を受けて、専ら、前項第五号の政令で定める物品を販売し、又は貸し付ける営業で、当該物品を配達し、又は配達させることにより営むもの
とされていますから、やや読み方が難しくなるのではないでしょうか。つまり、ラブホテル自らが主体となってサービスを提供する場合は「店舗性風俗特殊営業」(但し、四号を除く)としてラブホテル業者を、他の業者と契約・提携している場合は「無店舗型風俗特殊営業」としてラブホテル業者および協力業者を摘発すればいいのであって、「無店舗型性風俗特殊営業の用に供することを目的とする宿泊施設」という形で引用して定義することの必要性がないような気がします。引用することに何か意図があるのかもしれませんが、どうなのでしょう、考えてもよくわかりませんでした。

47thさんはというと、元ネタの原典から入り、風営法改正が失敗だったという「暗黙の前提」から疑問を呈されます。著者の結論が不明確だというご指摘はそのとおりで、47thさんのブログのコメントでは触れたのですが、私も実は著者の結論が明快にはわからなかったため、風営法改正についての著者の結論は明確には書いていません。立法者の意図どおりの規制効果は発揮されなかったが、ラブホテルがファッションホテルとして随分綺麗になったし、本当に怪しい業態は駆逐されつつあるのでそれはいいんじゃないの、というのが私の読み取る著者の結論です(著者は”Healthier love hotel market”と表現しています。)。私のエントリのみを読んでいただいた場合、失敗であることを前提に回答いただけると思っていたのですが、47thさんには怠惰な分析を許していただけませんでした(^^)。実際のところ、学校付近や住宅街におけるラブホテルの増減データは掲載されておらず、特定の地域におけるラブホテルを規制することという規制目的との関係では著者は実証的なデータを入手しておられないようです。規制を逃れられることが理論的には可能な状況であるから仮に学校付近や住宅街におけるラブホテルが減少していたとしても立法と因果関係がないともいえますが、47thさんご指摘のように脅しの効果として風営法改正が機能する可能性もあるわけですから一概には評価ができないと思います。

ここから先は、データもありませんので“I guess”というレベルの話です。仮に特定地域でのラブホテルの減少というデータが得られたとして、考えうるのは(1)住民の反対運動にあう、(2)顧客層との関係で当該地域に開業するメリットがない、(3)他の地域で十分開業メリットがある、または(4)特定地域だと、警察関係者・地方公共団体職員からの有形無形の圧力が厳しいなどの理由付けがありそうです。著者は、廃業したオーナーとのインタビューの中で、警察や地方公共団体関係者とのやりとりに疲れたとの感想を述べた方がいると指摘しておられ、行政の目の敵にされる立地にあるラブホテルには調査が頻繁になされるなどの事実があるのかもしれません。47thさんの立法対応による「脅し」という文脈とは別に行政による「脅し」がありうるとすれば、ラブホテルという業態からして、調査が入る可能性があるということ自体は営業にマイナスになる可能性は大きいので、風営法が文言から想定される以上の規制効果を発揮している可能性はありそうです。

改正が効果を発揮していないとした場合の回答として、47thさんは、
(前略)extralegal love hotelが、そうしたゾーンに高いレベルで進出しているのであれば、①外形的・一義的に定義可能な基準を設けて、執行を厳格化するか、②定義上は「もっぱら異性と一緒に・・・」とかいう極めて広範な形態にして、執行で調節するかの何れかなんでしょうね。どちらがいいかは一概に言えませんが、サンクコストが極めて大きい業界ですので、上にあげたゲーム理論的な枠組の下で、①の方向で対処しつつ、脱法的な事例が現れた場合には、再度の法改正でタイムリーに対応することを明確にコミットするというのが、いいような気がします。
としておられます。私も個人的には①の方向なんですが、どの特徴を捉えるのかは非常に難しいんですよね。②は執行で調整するとした場合に、行政当局、具体的には警察当局の権限が強くなりすぎて、色んな問題を生みそうな気がします(あまり書くと怖いので、書けませんが)。

3. 設問2

go2cさんの回答は、
1にくわえて無店舗業者に部屋を賃貸している者なども風営法の規制に取り込む、看板の規制等を条例レベルで行ない既存施設にも対処するというような方法があるのではないでしょうか。
とされています。1の回答で、「もっとも利用客が形式的に宿泊料金を払う場合、施設側が無店舗業者を黙認する行為(通常のホテル)にどのように規制するかは今後の課題。」とされているとおり、施設に着目せず、行為に着目した規制手段を採用されておられることから、執行に若干問題点を残すことにはなっています。たかがラブホテルで施設自体に違法性があるわけじゃないというのはその通りで、こういうやり方も大いにありうると思います。条例での規制については表現の自由、条例の制定可能範囲という論点がでてきそうです。

47thさんの「非合法な規律」というところには怖くてとてもコメントできません(^^)。立ち入らないほうがいい「規律領域」があるということで、皆さん気をつけて生活しましょう。

出題意図としましては、許可制を考慮してもらいたかったのですが、それならそうと書けよという話ですね。都市計画規制の観点からは、特定地域におけるホテルや旅館を一律に審査対象にし、外観からラブホテルをはねるという手段もありうるとは思いますが、行政裁量の問題、萎縮効果の問題、行政コストの問題など考えないといけないことがたくさんありそうです。

今回の試験はあくまでも中間試験であり、成績評価のうち30%を占めるにすぎないので、期末試験および授業への積極的な参加により学期を通じての評価を得られるように努力されたいということで、テキトーな講評を終わらせておきます。なお、反論、コメントは、「先生」を過度にいじめない程度において許可します。テキトーに考えた問題に、真剣に付き合っていただいたgo2cさん、47thさん、どうもありがとうございました。
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by neon98 | 2005-11-16 07:43 | LEGAL(General)
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