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PosnerによるLaw School Ranking
ロースクールランキングというものがある。その中で最も有名なものがU.S. News & World Reportによるものだ。当のロースクール業界からは反対を受けているが、優秀な出願者の確保、寄付金集め、卒業生の就職確保などで多大な影響力を有するものらしい。少し前にあるロースクールでUSNEWSに誤ったデータを提供してしまった結果、ランキングが大幅に低下してしまい、決まっていた就職に支障が出るなど困った結果が起きたことがあったようだ。これは当然ながらJDを対象としたランキングだが、多くの学校はJDと同じ授業を受け、同じ教育環境におかれるのだから、LLM出願者にも関係がないとはいえない(むろんLLM卒業校のランキングがその人の将来を左右する局面がJD学生と比較して少ないとはいえるだろう。)。

このランキング制度には弊害もあって、対象となるロースクールに間違ったインセンティブを与えるとの指摘もある。指宿教授のブログの過去記事で紹介されている記事(Law.com)では、ランキングをあげるための以下のような作為的な手法が幾つか紹介されている。
For example, schools can delay granting sabbaticals or leave to their professors until the spring semester in order to improve their student-faculty ratios for the survey. That means an overload of courses in the fall and a thin selection in the spring.

They also can divert students with lower LSAT or grade point averages to their part-time programs, the credentials of which have less weight in the ranking computations. The result is a two-tiered system where students with perhaps more diverse backgrounds and experiences are separated from other students whose LSAT scores and grade-point averages happen to be high.

Law schools may also reduce their first-year class size, the class that the publication uses to compute some of its data. Such a move could cause students who may otherwise have been accepted into the school to wait until their second year to attend their first-pick school.
ランキングが著しく改善したロースクールがあり、その原因を検証したところ、教育内容等の変化ではなく、卒業生の進路を把握する努力をしたというのが原因だったそうだ。また、ランキングを負いすぎるとLSATのスコアのみを重視するようになり、少数者の学習機会を与えるインセンティブに欠くという批判もある。

このような批判があるとはいえ、出願者が学校を選択するにあたり、ランキングおよびその背景にあるデータが有益な情報となるのはたしかであり、ランキング制度そのものをなくすという方向には賛成しがたい。上のLaw.comで紹介されているランキングに関するシンポジウムに参加した著名なRichard A. Posnerが、Law School Rankingsというペーパーを書いている。

ポズナーもランキング制度を、出願者が選択をするための情報を提供する最も効率的な方法として支持はするものの、USNEWSの手法を恣意的であると批判をしている。彼の批判の要点は、(1)ランキングの有効性はランキングを決定するにあたっての数々の指標に充てられる恣意的な重みづけにより損なわれる、(2)順位間の格差の大きさを示さないという点にある。脚注4によれば、2004年のランキングを決定する指標とその重み付けは以下のとおりである。
quality assessment by academics, 25%; quality assessment by lawyers and judges, 15%; median LSAT score, 12.5%; median undergraduate GPA, 10%; acceptance rate, 2.5%; employment rate at graduation, 6%; employment rate nine months after graduation, 12%; bar passage rate, 2%; expenditures per students for instruction, library, and supporting services, 9.75%; student/teacher ratio, 3%; average per-student spending on all other items (e.g. financial aid), 1.5%; and total number of volumes and titles in library, 0.75%
Posnerは、Top45校のデータを調査し、多くの出願者にとって有益なcomposite rankingというものをあげる。これは、mean LSAT; LSAT dispersion; job replacement; clerk replacement; and business-law faculty qualityという各指標それぞれのランキングを重み付けすることなく平均をとったものである。彼がそれぞれの指標を重要とした理由の要点は以下のとおりである。

LSATのスコアは現在のランキングと相関関係が高い、またランキング内の指標のうちacademic reputation, non-academic reputation, GPAなどの主観的な指標とも相関関係が高い。ロースクールを他の生徒からも学び、成功者同士の人脈をつくる機会と位置づけると、LSATの平均値は重要である。

LSAT dispersionは、生徒の中でLSATのスコアにどれだけバラつきがあるかを示す。バラつきが大きいと、教師が低いレベルの生徒にあわせて講義をするプレッシャーを感じ、教育レベルが低くなる(Posnerの考え方からすると当然かもしれないが、彼がAffirmative Actionに対して否定的だということがわかる。この指標をとると当然ながらAffirmative Actionで有名なUC Berkeleyのランキングが低くなることが指摘されている。)。

トップローファームへの就職、エリートへの道と思われているClerkへの就職については特段説明が必要ないだろう。ビジネスローに関する教授陣の質という指標については、多くの学生が法律実務に興味があることからすれば教授陣の質というデータはビジネスローに絞るべきだという彼の主張を反映している。

これらの指標によるランキングをまず弾き出し、これを単純に平均した平均ランキングが彼の主張するcomposite rankingである。これにより弾き出したランキングと元のUSNEWSのランキングを見てみよう。
PosnerによるLaw School Ranking_d0042715_7343166.gif
当然ながら、ビジネスローに強いといわれてきたロースクールの順位はUSNEWSランキングよりも向上し、学者系といわれるYaleなどの順位は下がることとなる(だからといって、Yaleを蹴るかというのは別問題だけど。)。でも、えー、Stanford、そんなとこまで落ちちゃうのーという驚きはもちろんある。ちなみに、中堅・下位校になるとUSNEWSランキングとの差異はもっと大きくなる。興味がある人は原文Table3の「USNWR RANK」と「AVERAGE RANK」を比較していただきたい。

ちなみにPosnerは出願者のあるべき学校選択について以下のように指摘している。

まず、Richard SanderによるAffirmative ActionのA Systemic Analysis of Affirmative Action in American Law Schools, 57 Stanford Law Review 367 (2004) (PDF47thさんのエントリ)の中で、権威あるロースクールに通って平凡な成績、低いランクのロースクールに通って好成績をおさめることのトレードオフが証明されたとする。
次に、ローファームは、出身校とそこでの成績との両方を重視しているが、最高レベルのロースクール以外では成績が重視されているとする。
このことの帰結は、ギリギリの成績で合格した出願者はランクの低いロースクールを選択すべきだということになる。すなわち、ランキングの高いX校でのB平均よりも、ランキングの低いY校でのAマイナス平均を選択せよということになろうか。

感情的にしっくり来ないものはあるけれど、エリート弁護士として成功するということに興味を抱く出願者に有益な情報として割り切ってしまえば、一つの考え方としておもしろい。典型的な出願者にとっての賢いロースクールの選び方とでも言うべきかもしれない。
by neon98 | 2005-12-10 07:41 | Law School
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