赤信号、みんなで渡れば怖くない的な時代の終焉?
防衛庁が談合利得の返還請求(Asahi.com)訴訟を提起したようである。納税者の立場からすると当然の動きなのだが、比較的腰の重かった行政機関が自身の損害について問題意識を持つようになってきたことは望ましいことであり、法のEnforcementという面でもいいことだと思う。

法のEnforcementという部分は法律実務家として実はすごく悩ましい部分である。法律解釈上、黒あるいはグレーゾーン部分であるものの、法のEnforcementが弱いがために実情をよく知る競争者は当該規制を守らず、コンプライアンス意識の高い企業が損をするということが実際にある。「これ、大丈夫ですか?」と聞かれた場合に、黒と確信する部分については当然Noとお答えするほかないのだが、条文だけからは一見黒のように見え、でも法令の趣旨解釈からすると白のように見え、他の人皆さんやってますよと言われた場合にあれこれ思案をめぐらすものの、あまり明快な答えが出てこない場合が多い。みんなで渡れば大丈夫的な論理は口が裂けても言えないわけで、法律上のあるべき姿と社会的実態が大きくずれている場合には本当に困る。

みんながやっていることが適正な法的評価を経てなされている場合であるならば、顧客企業側にも対応する手段があるのだが、単に行政機関の怠慢のために法が執行されない、あるいは行政機関に十分な調査・執行権限が付与されていないなどの場合には、顧客としても非常に困惑する。法が存在していてそれが守られていない状態は、法が存在しないよりも悪いという趣旨のことが、Awake in a muddleというBlogでとりあげられていた(こちら→正直者が馬鹿をみるような法規制)が、その通りだと思う。

談合=みんなやっている=発注者サイドも事情を熟知している=やらないと業界の中でやっていけないという循環が続いていった場合にはもうどうにもならないわけで、談合に限らず、違法行為をするためのインセンティブを減らすことに尽きる。

違法行為をすることのインセンティブが存在する場合、「あいつはやっているんだから大丈夫なはずだ。」「そんなことを言っていたら業界の競争についていけない。」という圧力により、違法行為をしたくないのにせざるを得ない状況に陥る方がいらっしゃるはずで、違法行為をすることは割にあわないと自覚するためのEnforcementにもう少し力を入れていかないと「正直者が馬鹿を見るような法規制」を遵守する人だけが損をすることになりかねないといえよう。

敷居の高い刑事罰に限らず、営業免許の停止・入札資格剥奪・課徴金・民事訴訟などより効果の高い制度が取り入れられてきている背景もこの点にあるのだろう。刑事事件だとハードルの高いうえ、トカゲの尻尾きりで終わってしまうわけだが、法律守らないと会社つぶれちゃいますよという恐怖の方が実効的だという主張はよく理解できる。
[PR]
by neon98 | 2005-12-20 02:37 | よしなしごと
<< 取引所の組織改革ー規則制定権と... あるlawyerの悩み >>

法律Blogよりも奥深いよしなしごとを目指して
S M T W T F S
1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31
検索
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
お気に入りBlog
最新のトラックバック
法律の英訳
from 明日は明日のホラを吹く-To..
今さらなんですが・・・
from はらほろとまひれ ~ 米国ロ..
英会話と留学
from 英語がしゃべれるようになる学習法
シンドラー社:労働組合と..
from 今出川通信
エリート法学部生は官僚よ..
from wrong, rogue a..
中央青山
from 1万人のための投資業
今頃危惧しても・・・制度..
from 法務の国のろじゃあ
PwCが日本で監査法人を..
from 法務の国のろじゃあ
[USA]こんだけ旅した..
from BBRの雑記帳
中央青山に一部業務停止命..
from 法務の国のろじゃあ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧