取引所の組織改革ー規則制定権と利害関係
Due Diligence Reportをエイヤッとパートナーに投げておいて、次は証券取引所の株式会社化・上場問題にいきます。Competition among Securities Exchanges – Reduxというエントリで、Andreas M. Fleckner, Stock Exchange at the Crossroads: Competitive Challenges – Reorganization – Regulatory Concerns, 10/2005; forthcoming in Fordham Law Review, Volume 74, (2006)(Available from here)を少しとりあげたのですが、論旨の株式会社化・上場問題については触れずにいたので今日はこのテーマをとりあげます。

証券取引所の自主規制部門を切り離すというFlecknerの提案に対し、47thさんからは以下のような疑問をコメントでいただきました。
ひとつ分からないのは、日本でも分離が主張されている規則制定権なんですが、これを分離させたときに、この規則制定主体は、どういう行動原理で動くんですかね?利益相反の問題とインセンティブは表裏一体なので、単に利害相反がなくなったといっても、それが最も望ましいルールの作成にインセンティブを持つとは限らないように思われるので、常々不思議に思っていたところです。ご紹介されている論文で、その辺りのインセンティブ問題について、どのような解決がされているのかお時間のあるときに教えて頂けると嬉しいなぁ・・・って、自分で読めって?
いえいえ、そんなことは申しません。それよりも残りの試験に全力を尽くしていただきたいところです^^。せっかく色々と勉強を続けているところなので、上場問題くらいまではとりあげて勉強しても損はないと思います。ただ、この答えはFlecknerでは明確には意識されていません。

著者の主張をミスリーディングなかたちでまとめてしまった私が悪いのですが、Flecknerは株式会社化・上場問題に関するSECの規制強化というアプローチに反対する立場で書いていて、分離案は証券取引所株式の取得制限などの方法によらずともより制限的でない代替案で十分であるという文脈で使われています。より正確に書くと、彼の提案は、(1)証券取引所の自主規制部門を「分離」し、(2)自主規制部門がManagementではなく、SECに対してreportし、(3)証券取引所がその株式を他の市場にも二重に上場するようにすることを義務づけるというものです。彼の立場では、(1)会員制証券取引所においても利益相反の問題は存在した、(2)品位・誠実さというものが顧客の評判につながるのだから品位・誠実さへのインセンティブが存在している(自由競争が原則)、(3)最終的にSECが介入できるのだから効率性を害する政府規制をすべきではないということになります。つまり、彼は基本的にはグローバルな競争に勝ち抜くために株式会社化・上場は不可欠であり、議会やSECによる規制に対しては不必要という立場をとっていて、自主規制部門を「分離」するという彼の主張は組織体としては取引所内部に残し、自主規制部門の長によるreportの対象を取締役会からSECにするものにすぎません。現在、NYSEでは、自主規制部門はchairmanではなく、独立取締役による委員会に対してReportするように組織が改変されたようですが、彼の主張はこれを一歩進めているにすぎません。例えば、自主規制部門への資源配置の決定などは従来どおり証券取引所が行うことを前提としています。ですから、この著者の主張する「分離」策は、インセンティブを完全に切り離すものではありませんので、47thさんが懸念されるような無関心の問題は存在せず、Modestな提案になっているように思います。

「利益相反の問題とインセンティブは表裏一体」というのはおっしゃるとおりで、神様がパレート最適で、かつ公正にかなうルールを決めてくれるわけじゃないですから、あとは利害関係がないけれど無関心かもしれない人間が決めるのか、利害相反・インセンティブのある人間が決めるのかという問題になってしまいます。東証の上場の条件として金融庁が自主規制部門の分離を主張しているように聞いていますが、どういう制度設計を予定しているのか、具体的に、どういう利益相反から分離して、誰がどのように自主規制を行おうとしているのかを見ていく必要があると思います。今の私には情報ソースが限定されているので、米国の議論を探していくわけですがそれが日本にそのままあてはまるかどうかには注意が必要なのは言うまでもありません。

自主規制部門を分離するという立場の中にも具体的設計としておそらく色々あるように思います。例えば、複数の証券取引所に対して一つの自主規制機関をおくという主張(個人的にはそれをするなら自主規制を放棄した方がましなように思いますが)もあるようです。

脚注にあるうち、参考になりそうな文献を次なる考察のためにメモ書きしておきます。

SEC, Release No. 34-50699 (File No. S7-39-04): Proposed Rule on Fair Administration and Governance of Self-Regulatory Organizations…..(引用略), 69 Fed. Reg. 71, 126 (2004)
SEC, Release No. 34-51019 (File No. S7-39-04): (引用略), 70 Fed. Reg. 2829 (2005)
John W. Carson, Conflicts of Interests in Self-Regulation: Can Demuturalized Exchanges Successfully Manage Them (World Bank Policy Paper No. 3183, December 2003)

これらを含め、参考になりそうな文献を読んでいって日本法との比較考察をしたらそれなりの論文になっちゃいますね(既にどなたかが立派なものを書かれておられるのかもしれませんが。)。そこまで読んでいくつもりはないので、他がどのようにやったのか実例紹介などできればいいなと思ってます。ちなみに、香港市場は株式会社化と同時に規制部門をスピンオフしたと指摘されており、NYSEでもArchipelagoとの合併および上場計画の一部として規制部門を分離する計画について書かれています(実行済?)。この論文は73頁もあり、脚注は381番までありました。よくもまあここまで調べたなあと改めて感服いたしました。

ということで、Hopefully To Be Continued...
[PR]
by neon98 | 2005-12-20 07:24 | Securities
<< Strike on Subwa... 赤信号、みんなで渡れば怖くない... >>

法律Blogよりも奥深いよしなしごとを目指して
S M T W T F S
1 2 3 4
5 6 7 8 9 10 11
12 13 14 15 16 17 18
19 20 21 22 23 24 25
26 27 28 29 30 31
検索
カテゴリ
以前の記事
お気に入りブログ
お気に入りBlog
最新のトラックバック
法律の英訳
from 明日は明日のホラを吹く-To..
今さらなんですが・・・
from はらほろとまひれ ~ 米国ロ..
英会話と留学
from 英語がしゃべれるようになる学習法
シンドラー社:労働組合と..
from 今出川通信
エリート法学部生は官僚よ..
from wrong, rogue a..
中央青山
from 1万人のための投資業
今頃危惧しても・・・制度..
from 法務の国のろじゃあ
PwCが日本で監査法人を..
from 法務の国のろじゃあ
[USA]こんだけ旅した..
from BBRの雑記帳
中央青山に一部業務停止命..
from 法務の国のろじゃあ
人気ジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧