振り上げた拳を下ろすにはーThe 3rd Day of Strike
本日で地下鉄・バスのストライキが3日目に突入しました。これらの交通機関がストップするとNew Yorkerの市民生活に著しい支障をきたすのですが、それにも関わらず、人々はこの状況を克服し、乗用車やタクシーに乗り合い、別の交通機関を利用し、なんとか職場までたどりついているように見えます。皆が市民生活に支障をきたす一方で労働組合側にも様々な圧力がかかっており、ストライキを維持するのは容易ではないように思います。なぜこのような異常な状況に陥ったのか、New York Timesの記事をもう少し丁寧に追いかけて考えてみたいと思います。

1. ストライキの経緯

まず、主要な争点は、新規雇用者の年金の満額受給開始年齢を55歳から62歳に引き上げるなどの年金改革にあります。当局側は先週16日金曜日のストライキ期限までに一部譲歩し、組合側に譲歩を迫ったものの、組合側は当局に1Billionドルの剰余金があることを理由として譲歩を拒否し、ストライキの期限を20日火曜日に設定しました。

公共機関の労働者のストライキは州法で禁止されており、既に13日の段階で、裁判所から労働者に対してストライキを禁止し、地下鉄・バスを運営するようにPreliminary Injunctionが発せられています。

当局側は、16日までの段階で、年金の満額受給開始年齢を62歳まで引き上げる一方で、受給資格を30年勤務から25年勤務に引き下げるなどの「最終提案」を行いました。年金改革は州立法府の法改正が必要な事項であり、当局が交渉により決定することができる事項ではないため、当局は労働組合側と協議のうえ当局・組合双方による法改正の請願を行うことを要求しています。これに対して組合側は法改正への請願は最終提案などというかたちで強制できるものではないと反発を強め、第一弾のストライキとして、19日月曜日、NY州の管轄にない(州法でストが禁止されていない)Queensのバスでストライキを開始しました。

当局は、スト開始直前に受給開始年齢を現状維持にすることを合意し、その代わり労働者の年金負担率を現行の2%から6%に増加させることを提案しています。また、今後3年間の賃上げについても一部譲歩を行いましたが、組合をこれを拒否し、20日火曜日には州法で禁止されたNYCityの地下鉄・バスにおいてもストライキを開始しました。

このストライキは親組合からは支持されず、組合内部でも全員一致で決議がされたわけではありません。組合は一日につき1Millionドルの罰金を科せられ、NY州知事、NY市長からも批判が相次ぎ、一時は組合指導者の収監を裁判所が示唆するほどでした(これにはNY市長からの反対があり、実行されていません。)。
組合側は罰金が支払能力を超えていることを理由に平然とした構えを見せていますが、組合員も一枚岩ではない中で持ちこたえるのは苦しいでしょう。

2. 振り上げた拳を下ろすには

労働組合との交渉も、労働組合側での交渉も代理人として行ったことがあるのですが、組合指導者の面子を考慮してあげないと組合としての意思決定ができないという側面が多分にあります。

当局側からは既に年金満額支給開始年齢の引き上げという提案は撤回されており、これ以上大きな提案は望みにくいのではないかと推察します。違法なストに対して譲歩をする枠組みをつくると今後に懸念を残すことになりますから、ストを契機として当局から譲歩をするというのは難しいのではないでしょうか。

他方、労働組合としても一度開始したストを成果なく終わらせることは困難です。既に個々の労働者は賃金を、組合は罰金ならびに世論の批判を受け、多くのものを犠牲にしています。違法なストであることは非難されるべきでしょうけど、立法でしか変更できない年金制度を組合に押し付けるという交渉スタイルに反発を覚える理屈はよく理解できるところです。成果なきストとなれば、指導者の組合での立場がたたないことから拳を振り下ろすのが難しいのでしょう。

米国の文化に「振り上げた拳を下ろすだけの理由」というものがあてはまるのかどうかはわかりませんが、このまま進んでもお互いにデッドロックのままで交渉に勝者は存在しません。拳を下ろすだけの理由として、ここは仲介者に頑張っていただき、「当局の提案には依然反対であり、協議を継続していくが、NY市民の皆様に迷惑をかけることは組合としても本位ではない。仲介者に労をとってもらったことや、当局が一部提案を撤回したことをも考慮して、ストライキは一時停止する。」と言わせるための大義名分を与えることが必要ではないかと思います。

本日22日木曜日、州の仲介者は労働者がストライキを停止し、職に戻る枠組みを暫定的に提案したそうです。組合の最終意思決定がどうなるかわかりませんが、これを逃してしまうと降り時を失うことになるように思います。仲介者と組合幹部の英断に期待したいものです。

<参考記事>
No Timetable Is Announced on Resumption of Service
Tough Stance, Tougher Fines: Union Leader Is in a Corner
Transit Union Calls for Strike in Divided Vote
Leaders of Both Sides at the Table in Marathon N.Y. Transit Talks
Changing Transit Workers' Pension Plan Might Pose Dilemma for Legislature
Transit Union Tries New Tack on Pensions
New Transit Talks Set; Strike Is Put Off to Tuesday
Preliminary Injunction
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by neon98 | 2005-12-23 02:13 | LEGAL(General)
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