教養のありかた
立花隆の東大生はバカになったか―知的亡国論+現代教養論という本を読み終えた。一部東大を他大学と比較して論述する箇所はあるものの、基本的には全ての大学に共通するものである。(1)あの東大ですら問題があるという論理、(2)ショッキングなタイトル、(3)立花隆が個人的に東大で教えた経験から東大が選択されただけで、東大のみを批判することが目的とは思われない。東大関係者にはカチンと来る記載があるやもしれないが、一読を薦めたい。

筆者の主張は、最近の大学生の基礎学力の低下を契機として考えた教養重視の教育改革論なので、我が身に照らして素直に共感する部分と、「最近の若者は・・・」という年寄りの愚痴と思える部分と両方あるのだが、実際教養の必要性というのは常々感じるところである(当たり前か)。

大学の教養課程で例えば文学を選択すると正岡子規の一生について延々と講義を続けられ、何が面白いものだと当時は思ったから出席しなかったし、今でも絶対に出席しないだろうけれど、役に立つかどうかということではなく、勉強すること自体はいいことというものはあるものだ。

実学と理学(知識学)という分類では法学は実学に入れられてしまうのだが、広く法学という場合に実学というよりは理学に近いものも含まれている。例えば、「国際法は法か」という多分に理念的な思索は一銭の役にも立たないけれど、それを考えることで体系的な知識が身についたりすることもあるだろう。また、物理学・地質学・化学・生物学・医学・・・あらゆる絡みで法律問題が発生することは当然であり、専門知識とまでは言わなくてもお客さんの話す用語くらいはわからないと困る場合も多い。仕事を離れても、特に留学に来てからは自分の国のことを、会話相手の国の事情と比較しながら説明したりする機会が多く、教養の無さを実感することも多い。

何だって勉強する以上は面白いと思ってやった方がいいし、わかるようになれば面白いものなのだろう。教養なんてものは人がどのように生きてきたかを示すもので、一朝一夕で身につくものではないのだから、何が役立つとかあまり考えずに面白いと思うことは楽しんで勉強すればいいのではないかと思うようになった(とはいえ、本を読む時間は有限なのである程度選択はせざるを得ないのだが。)。

ただ、教養があるとかないとかいう表現は多分に主観的である。それゆえ、違う世代の方から受ける無教養との謗りは敢えて反論はせず、話半分に聞き捨てることにしている。彼らにとって教養だと思われるものと、我々の世代にとって教養とされるものは当然違うのであり、彼らの思うところの教養スタンダードを充足することは私にとっての課題にはならないのだ。なお、この本では日本の大学と欧州の大学の歴史がすごくわかりやすく(多分にわかりやすすぎる点は問題なのだが)説明がされているので、大学の歴史紹介として読んでもいいと思う。立花隆という人は強引な論理展開に若干抵抗があって、あまり好きになれなかったのだけれど、この本はあまり抵抗なく読めた。
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by neon98 | 2006-01-20 04:48 | 読書・映画等
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