「平時」「有事」の区別は絶対か?
ライブドア事件を追いかけるのは少し疲れてきたので、今日は買収防衛策の不思議に迫ってみようと思います。
企業価値研究会の報告は「平時導入型」を前提にして作成されていますが、そもそもなぜ「平時」と「有事」の区別が必要なのでしょう?
こういうことを言い出すと勉強不足でアホな弁護士だとか、なんでもかんでも反論するのが好きな奴とか思われちゃうかもしれませんけど、私にはこれが世間で言われるほど絶対的な区別だとは思えないのです。

平時導入型が推奨されている理由としては、(1)株主に対する事前開示がなされるため、合理性が担保されやすい、(2)買収をする者に不測の損害を与えるおそれがない、などの理由があげられると思うのですが、だからといって有事導入型が駄目だという理屈は難しいように思うのです。

株主総会の議決を経て導入した買収防衛策は議論の対象から除くとすると、事前開示はあくまでも開示にすぎないのであって取締役会のみの判断でポイズンピルを発行したという事実は変わりがないわけです。購入前に開示がなされていた株主との関係では合理性が担保できたとしても、購入後に防衛策が導入された場合「平時」「有事」の区別は相対的なものにすぎません。

いきなり買収防衛策が導入されると買収予定者に不測の損害を与えるというのはそのとおりですが、取締役会の決議のみで発行できる買収防衛策があることは予測可能です(参考:John C. Coates, Takeover Defenses in the Shadow of the Pill: A Critique of the Scientific Evidence, 79 Tex. L. Rev. 271)。従来から、第三者割当増資により敵対的買収防衛が有事になされてきたところであり、ベルシステム24事件(一応「有事」と評価できると思います)などの判断が覆されているわけではないはずです。また、TOB法制が予定通り改正され、撤回条件が柔軟になればなおさらでしょう。

むろん、何かが発生してから防衛策を検討していて間に合わなければどうにもならないわけですから、買収防衛を導入する企業側にとって平時の方が望ましいのは言うまでもないのですが、なにをもって「買収開始」というのかは微妙な点もあり、「有事」と解釈されかねない場面でも防衛策導入を検討する余地はあるのではないでしょうか。

例えば30%超をとられてしまえば買収防衛といってもある意味「買収完了」といえなくもないのですが、突然10%超とられているようなケースでは(1)有事ではない(従前からの検討の結果である)、(2)有事だとしても問題がないという二段構えで勝負していくことも十分可能なのではないかと思うわけでした。個人的には、むしろ「有事」「平時」の区分よりもどうやって防衛策を解消できるのか、このあたりの手当ての方を重視したいところです。
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by neon98 | 2006-01-26 05:49 | M&A
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