某所からパクってきたようなこのタイトルですが、ここでのインハウスロイヤーというのは資格の有無を問いませんので「企業内の法務担当者」くらいの意味合いです。
ろじゃあさんのところの
企業法務マンの生きる道?というエントリを拝見して、常々思っていることを少し書いてみます。Popoluさんの
企業法務マンの生きる道というエントリにある
法務部勤務になって丸3年が過ぎようとしていますが、最近私は自分のキャリアに危機感を抱いています。今後日本が訴訟社会化し、法曹改革で弁護士が増えれば、企業内の法務部の存在意義がなくなるのではという危機感です。
というコメントを契機にしてろじゃあさんが企業法務マン(企業法務パーソンといった方がcorrectでしょうけど、このままいきます。)としての重要性なり、資格に甘んじる「弁護士」への叱責なりを含んだ興味深いエントリをされています。
まず、ろじゃあさんは通訳としての企業法務マンの役割として、案件を弁護士に理解させる能力と、所見を担当部署に理解させる能力をあげておられますが、これは当該企業のことを本当に熟知していないとできません。ビジネスのニーズなんてわかっちゃいない弁護士に教えてあげる姿勢と、リーガルのことなんてわかっちゃいない現場なり、役員なりに教えてあげる姿勢はまさに企業内にいないとできない職務でしょう。
弁護士との法律相談のときの人選はとても大切だと思います。事実を適格に把握している現場の方を相談に連れていき、事実をきちんと伝える。重要な事実が少し違うと「あてはめ」の部分が全然違う場合が多い仕事ですから、弁護士の判断を間違えさせないとともに、弁護士に「知らなかった」という言い訳を与えないことは大切と思います。
私は通訳以上に大切だと思っている役割は、「問題発掘者」としての役割です。弁護士なんて監査をしないといけないわけではないし、聞かれた問題だけ答えるという側面がないではないです。頼まれてもいないのに、「あ、それ、法的には問題ありますよ。」なんて弁護士は言ってくれないわけですから、まず初期対応をするのは「問題発掘者」としての企業法務マンです。外部の弁護士は「僕は知らない」という言い訳を常にかかえている中で、企業法務マンはある程度内部のことを知っているわけですから、大変です。外部の弁護士が顧客を通じて業界のプラクティスなり、契約書のスタンダードを知っているとすれば、内部の企業法務マンは業界のプラクティスにもっと詳しくて、部署横断的なチェックポイントの役割を負っているんじゃないでしょうか。企業の法務部門に必要な知識って圧倒的に広いですし、「僕M&Aしかしないからヨロシク」なんてわけにはいきません。事実と法律と両方について「僕知らない」の抗弁がたたないのはすごいプレッシャーだと思います。問題を発掘した後は、しかるべき弁護士なり、会計士なり、その手の専門家を選び、社内での報告なり方向性を出し、営業・IR・経理といった部署との間もつなぎ・・・なんてことも要求されるすごい仕事ですよね。
これだけ重要な職責を負った法務担当者の職責が重くなることはあっても、それが軽くなることはないんじゃないでしょうか。
それとは別に、弁護士資格保持者が企業内弁護士として入ってくると資格のない人はどうなるのだろうという危機感をお持ちの方と話をしたことがあります。私は弁護士資格を持っていて、それが自分の人生に多少なりとも有利な面が多いことを知っているので、資格が関係ないなんて嘘は述べられません。資格の有無が転職に有利とか、給与に響くとかいう要素はあると想像されますし、知らない人にこいつは法務のプロだという推定を働かせる役割としてあった方がいいに決まっています。でも、そういう短期的な利益は、社内での実績を積むにつれ、メリットがなくなりますから、最後は所詮実力勝負です。
弁護士資格を持っていないと困る場面って実は企業内法務担当者としてはそんなに多くないんじゃないかと思います。訴訟代理業務(支配人登記すれば別)とか、DiscoveryでAttorney-Client Privilegeが認められるとか、あるにはあって、特に後者なんかは米国で訴訟に巻き込まれるおそれのある日本企業にとっても重要でしょう
日本企業だとそうでもないですよね(ご指摘のとおり、かなり言いすぎなので訂正)。有資格者の採用にこだわる企業もさほど多くないでしょうし、日本の法曹人口の少なさをカバーされてこられたのは資格なしで法務担当者が重要な役割を担ってこられたからではないかと思うのです。
プレッシャーのある大変な仕事ですし、競争も激しいし、新しいことをどんどん勉強していかないといけないわけですから、危機感を持つことは必要不可欠なんでしょうが、企業内法務部はますます繁栄の時代を迎え、わかっちゃいない弁護士は淘汰されていくんじゃないかと思う今日この頃でした。さて、生き残りをかけ、頑張りますか。