優越的地位の濫用と企業トップの責任
少し古いニュースになりますが、2005年12月に三井住友銀行が不公正な取引方法(優越的地位の濫用)により金利スワップを購入させたとして違法行為の排除勧告(公正取引委員会リリースPDF)を受け、それを受諾(同行リリース)したことがありました。

それに基づき、金融庁が銀行法第26条第1項に基づく行政処分を行い、三井住友銀行が西川元頭取に対する役員報酬返還請求(Sankei)を行うということが報道されています。西川氏は関与は否定するものの、銀行からの要請には応じる方針のようです。

まず、一つ目の違和感なるものは優越的地位の濫用なるものがどこで認定されるのかという点です。これに該当するためには、自己の取引上の地位が相手方に優越していることを利用して、一般指定14条1号から5号に定められている行為を正常な商慣習に照らして不当に行うことが必要とされており、これの認定は非常に微妙です。銀行は債務者に対する貸付期限の延長に応じる義務は何もないわけで現在の金利よりも高い金利であれば期限延長に応じると主張する場合と、金利スワップを売りつける場合でどれほどの違いがあるのでしょうか。

良いことかどうかはさておき、主要取引先からの要請で当該取引先の製品をたくさん購入している方々はたくさんいるわけで、どのラインを超えれば優越的地位の濫用とされるのか、非常に微妙な感じがします。マイクロソフトからライセンスを受けてWindowsをインストールしないと売れないPCを販売しているわけではないのですから、もう少し争う余地もあったのではないかと思うところです。銀行が応諾しているとはいえ、業種がら世論やら政治の影響を受けやすいこともあって応諾したと思えないこともなく、なんだか割り切れない感じが残ります。

まあ、その点は当事者がいいと言っているのでさておき、次は西川氏の責任という部分でしょうか。西川氏の対応はある意味で日本人的であり、ガチガチに法的に詰めるまでもなく、返してほしいなら返すという潔いもので気持ちがよいのですが、何か不祥事があればすぐに辞任や報酬の返還を求める発想というものはどうなのでしょうか。役員報酬は彼が頭取として激務をこなし、成果をあげてきた対価なのであって、(監視義務違反ととれる事情があればともかくとして)結果責任に近いかたちで返還をせまられる理由はないはずです。

返還を拒否するとマスコミやら世論の批判を浴びてやりにくいでしょうから、面倒だし、いいやという気分になるのはよく理解できるところですし、西川氏ほどの方であれば経済的に困られることもないでしょうから、私も同じ立場であれば返すと思うんですが、何かがあれば辞任せよ、報酬返せという全体主義的風潮はなんとかなりませんかね。
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by neon98 | 2006-05-13 06:37 | LEGAL(General)
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