旅をする人々ととどまる人々
前にも書いたように23歳の頃読んだ沢木耕太郎の「深夜特急」を再び読み返してみた。当時はこの本を読んで(あるいは映画化されたものを観て)同じルートをたどる若者が多数いたものだし、現在もそうなのかもしれない。

この本は私の中では2つのパートに分けられる。前半は、香港・バンコク・マレー半島・シンガポール・カルカッタ・カトマンズと抜け、再びインドに戻り、西へ向かうまでの部分であり、後半は、パキスタン・アフガニスタン・イラン・トルコ・ギリシャ・イタリア・モナコ・スペイン・ポルトガル・フランスと抜け、ロンドンで旅を終えるまでの部分である。前者は主人公が好奇心を持ち、人と関わりながら生活の中に溶け込んでいく部分であるが、後半に近づくにつれ、好奇心が崩壊していき、人と関わるのを避け、金銭をケチるだけの危険な旅に変容していく。そして、ただひたすら前に進みながら(ピサにいながらピサの斜塔を見ようともしない。)、旅を終えるだけの理由を探そうとしていたようにも思える。
d0042715_15325821.jpg
旅行記というには旅の記述に乏しく、10数年後に書かれたものであるためにタイムリーでもない。当時彼が考えたであろうことを旅を卒業した後に書いた自伝的小説であり、旅を続けるごとに少しずつ退廃的になっていく心境を見事に描ききっている。旅の直後に書いたのであれば逆に距離をおいた自己分析はできなかったであろうし、一定の年齢に達した後に振り返った「創作」であるからこそ、共感を覚えるのだろう。

不思議なことに以前はこの本を読むたびに旅に憧れ、旅にでようと思ったものだが、今回はなぜか自分のこととは考えられず、むしろ元の場所に帰ろうと思ってしまった。現在海外に住んでいるとはいえ、私は所詮帰国を前提に一時的に滞在しているにすぎない。そのコミュニティに所属せず、母国への帰国という選択以外ありえないと思っている時点で、単なる旅行者と本質的に異なる点はないのだ。「旅行者」として2年間アメリカに滞在している現在においてはどことなく帰国する理由、ひとところに住むつく理由を探しながら読んだしまったような気がするのは気のせいだろうか。

帰国したらまた大変な日々が待っているけれど、それもまた楽しい。絶対やめてやると思いながら働いた留学前だった(笑)けど、不思議なことにその生活が少し懐かしくもある。

(写真はネパールのポカラから見たヒマラヤ山脈)
[PR]
by neon98 | 2006-05-28 15:38 | 読書・映画等
<< 中古品市場の日米比較 私の子供たちが観るアニメはなぜ... >>

法律Blogよりも奥深いよしなしごとを目指して
S M T W T F S
1 2 3 4 5 6
7 8 9 10 11 12 13
14 15 16 17 18 19 20
21 22 23 24 25 26 27
28 29 30 31
検索
カテゴリ
以前の記事
フォロー中のブログ
お気に入りBlog
最新のトラックバック
法律の英訳
from 明日は明日のホラを吹く-To..
今さらなんですが・・・
from はらほろとまひれ ~ 米国ロ..
英会話と留学
from 英語がしゃべれるようになる学習法
シンドラー社:労働組合と..
from 今出川通信
エリート法学部生は官僚よ..
from wrong, rogue a..
中央青山
from 1万人のための投資業
今頃危惧しても・・・制度..
from 法務の国のろじゃあ
PwCが日本で監査法人を..
from 法務の国のろじゃあ
[USA]こんだけ旅した..
from BBRの雑記帳
中央青山に一部業務停止命..
from 法務の国のろじゃあ
その他のジャンル
ファン
記事ランキング
ブログジャンル
画像一覧