我妻栄 in 深夜特急
沢木耕太郎「深夜特急」を読み返していて、ああこんなくだりがあったなあと思った。主人公(沢木)がバンコクーデリーの変更不可のチケットをインド航空の従業員と交渉してバンコクーカルカッタに変更してもらうシーンである。
チケットを書き換えてもらい、礼を言って出ていこうとすると、彼は突然、流暢な日本語で話しかけてきた。
「我妻先生はお元気でしょうかね」
私が驚くのを楽しみでもするように彼はさらに言った。
「私は、東京大学で我妻先生に法律を習っていました」
我妻先生とは『民法大意』を書いたあの我妻栄のことだろうか。彼に訊ねると、そうだと答える。こちらも大学時代に、教科書として『民法大意』を使わされたことはあるが、その民法の大学者に直接教えてもらったわけではない。
といきなり我妻大先生が登場するのである。
(中略)そそくさとそこを出てから、彼が本当に東大で我妻栄に習ったのかどうか、疑問に思えてきた。我妻栄に直接教壇の上から講義を受けたにしては若すぎたからだ。あるいは、それは日本人の度肝を抜くための、彼の得意のジョークだったのかもしれない。我妻先生はお元気ですか、といきなり言われても、弟子でもない日本人にわかるわけがない。日本人の東大崇拝を逆手にとって、日本人を煙にまいては面白がっているだけなのかもしれない。そうだとすれば、私もまたうまくからかわれたということになる。
いくら我妻栄大先生とはいえ、法律科目について聞きかじったこともない人にはさすがに無縁の人であろうし、ここで敢えて我妻先生の名前を出している以上は沢木耕太郎の創作とは思えない部分である。なんとも面白い経験があるものだ。

得意のジョークという筋書きはさすがに深読みのしすぎではあるまいか。我妻栄先生を知らないのにも関わらず、インド人がジョークのネタとして我妻栄先生を選択する可能性がどれだけあるものかを考えてみればおのずとわかるというものだ。
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by neon98 | 2006-05-25 12:09 | よしなしごと
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