リスクマネジメントと文化論ー典型的な失敗事例
日本社会において何か事故が発生したときの対応はおそらく米国よりも困難である。正確な情報が集まらない中で、刑事事件・民事事件でのリスク回避、捜査協力・情報提供などによる反感の軽減などのバランスをとれた判断をしていかなければならないからである。前者のみに重きをおいた戦略をとると少なくとも日本社会においては袋叩きにあい、前者への悪影響すら与えかねない場合がある。リスクマネジメントは高度に文化的色彩の強いものであり、シンドラー社の今回の対応はまさにリスク対応に失敗したものととらえざるをえない。日本においては同社の事業はもはや終わったと言わざるを得ないだろう。

まず根本的なミスが6月6日段階でのリリースに存在する。
事故がありましたエレベーターは、シンドラーエレベータ株式会社が1998年に設置を行い、2005年3月までは当社が保守を担当し、その後は2社が保守を行っております。
というのが保守業者による責任を匂わせる部分である。さらに、
捜査による詳細が出るまで、事故に関するコメントは差し控えさせていただきます。しかしながら、2006年6月6日時点では、この事故がエレベーターの設計や設備によるものではない事を確信している旨を述べさせていただきたいと思います。
と続き、ここまで来るともはやありえないプレスリリースである。何も事実確認ができていない段階で説明すべき内容ではない。そのくせ、捜査への影響を懸念し、住民説明会への出席拒否(Asahi)などの報道もなされている。

事故の発生=メーカー責任というわけではない。ただ、エレベータなどは利用者はボタンを押すだけの製品であり、利用者のミスということは考えがたいため、それだけでメーカーの責任が強く推認されるものである。よほどの根拠がない限り、保守業者の責任を匂わせる声明など出すべきではない。被害者への哀悼の意を示し、捜査協力、自主調査、緊急点検をする旨を公表し、責任の所在については何も言わないという対応があるべき姿ではないだろうか。

危機発生後のリリースの内容がひどすぎる。日本の然るべき弁護士に依頼していないか、その弁護士が文化の違いを乗り越えて社長を説得しきれていないのかのいずれかだろう。対応すべき弁護士がリリースに目を通し、OKを出しているとすれば駄目弁護士というほかない。
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by neon98 | 2006-06-09 10:50 | LEGAL(General)
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