日本の法化社会とリーガルエリート市場(下)
4. 給与・雇用データ

著者らは、エリート弁護士の給与は増加し、エリート官僚の生涯給与(天下り後の給与含む)は低下している、とする(この部分、丁寧に書こうと思ったのだが、アメリカの弁護士の収入と比較みたいな分析が多いので、悲しくなりそうだし、やめとこう…。)。

5. 結論

著者らは、ここまでのデータで、法曹界はますますリーガルエリートの受け皿となっていき、報酬もあがりつつあるのに対し、官僚はその逆であると主張する。(雇用市場との明確な因果関係や、個人が社会変化を意識して職業選択を行っているかどうかはともかくとして)金融・通信分野に代表される規制緩和(新金融商品・M&Aの新手法などが弁護士業との関わりのある典型的なものである)や、規制緩和により生じるリーガルリスクへの対応として、弁護士の活躍分野が増えたとする。そして、この日本での経験からいえることは、(1)日本は従来のような官僚機構による事前統制国家ではないということ、(2)弁護士の役割によって経済成長が促進または阻害されるという単純な見方は受け入れられないことの2点であるとする。

一般論として規制緩和が進んできたことと、弁護士の活躍分野が増えたきたことは実感できるので敢えてその点に反論するつもりはないのだが、批判めいた感想を言ってしまうとどうも「法化社会」というステレオタイプの議論にのっかってしまったせいか、議論が荒い気がしないではない。一度試験勉強をはじめてしまえば、国家一種試験法律職と司法試験というものはある程度互換性があるとはいえ、まずこの2者が択一的に選択される職業なのだろうかという点に疑問がないではない。筆者らはこの点をインタビューにより択一的に選択されるとしてしまっているが、その対象学生が所属するセクターによっては偏った結果をもたらすだろう。また、受験者・合格者数の推移というものは、各年代人口推移、将来の合否見通し(法科大学院の設置、新司法試験、丙案など)や、またビジネスセクターの景気動向にも左右されるものであり、著者らが主張するほど国家一種から司法試験への推移が強く認められるかどうかはよくわからない(ましては因果関係はもっと分析が難しい。)。まあこの手の分析に因果関係の証明を求めるのがそもそもナンセンスという話もあるので、代替案の指摘をすることなく、批判的にのみ検討するのもどうかとは思うのだが…。

その中でわりと明確なのは、東大生の国家一種試験離れの傾向である。あの給与であれだけ働いて…というマイナス面を考慮すると、私にはあまり魅力的な職場にはみえないので、そもそも過去の東大生がなぜさほど国家一種試験に殺到したのかを分析した方が面白いかもしれない(個人の趣向の話で他意はありませんので気を悪くなされぬようお願いします。)。やりがい、権力志向、退職後の収入…まあ人それぞれなのだろうけれど。
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by neon98 | 2006-06-27 07:56 | LEGAL(General)
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