2005年 10月 26日 ( 1 )

Conflicts of interest in financial institutions
TBSの企業価値評価特別委員会が「敵対的買収」とみなすかどうかが注目を集めているとして、諸井委員長の発言が色々と世間を騒がせていたわけですが、「敵対的買収」だとしたらどうなの?という疑問がとけませんでした。TBSという企業体、株主、従業員にとって良い買収なのかどうなのかを判断するのがその職責であって、「敵対的」かどうかはそれには関係ないんじゃないのと思っていたわけです。「敵対的」という言葉を表面的にとらえる報道姿勢はやめてほしいものですが、どうやら「敵対的」かどうかはディールに影響がありそうです
記事はこちら)。
特別委の議論は、楽天に融資する大手銀行などが注目する。敵対的買収に資金を提供することによるイメージの悪化を懸念し、特別委が敵対的買収とみなせば追加融資は断る方針だ。楽天がさらにTBS株取得に動く資金が必要になれば、外資系金融機関や投資ファンドなどから資金を調達しなければならなくなる可能性が高い(Asahi.com)。
現在は楽天のTBSに対する持株数からして特別委員会の正式諮問を受ける段階には至っていないようですが、特別委員会の勧告をTBS経営陣が重視して対応を決定することになりますので、特別委員会の意見によって「敵対的買収」または「友好的買収」のいずれに該当するのかが左右されることになります。そうした場合、既存の顧客との関係で、または銀行のレピュテーションとの関係で、金融機関の融資姿勢に影響を与えるというわけです。

1. 金融機関におけるコンプライアンスの問題

金融機関の利益相反の問題として、(1)法令上遵守することが要求される利益相反、(2)法令上遵守は要求されないが、経営判断上利益相反を避けるというの2つのレベルがあると思います。前者として、例えば投資銀行がディールの当事者に対してアドバイザリー業務を行う場合、顧客に対して善管注意義務を負い、利益が相反する相手方に対してアドバイザリー業務を行うことはできません。法令上の根拠としては、準委任契約における民法644条・656条でしょうか。後者としては、「あそこに貸すんだったらおたくからの借り入れを別のところから借り替えるよ」と言われちゃうと困るねという話がわかりやすいですかね。

2. ルールって整備されているの?

実は(1)と(2)の境界って非常に微妙だと思うのは私だけでしょうか。弁護士業務だと弁護士倫理上ある程度ルールが明確なのですが(米国ほどではありませんけど)、金融機関に対してこの手のルールが明確に存在するという話は私は知りません(ご存知の方、教えてください。)。それにも関わらず、金融機関の利益相反が生じて問題になってきたケースは実はたくさんあるような気がします。

3. 利益相反が生じるケース

 古典的なものは、メインバンクによる顧客に対する不動産、金融商品の売り込みです。金融機関特に顧客のメインバンクは自らが顧客に対して持っている圧力を推して知るべきで、優越的地位の濫用に近いケースも幾つか見聞きしたことがあります。その多くは「社長、判子押したんはあなたでしょ。」という一言で片付けられ、不良不動産を抱えて銀行に対する愚痴を言う中小企業経営者がたくさんうまれてきたわけです。某巨大都市銀行による融資先に対する増資協力依頼も優越的地位の濫用という観点から問題にされたことがありました。これは銀行あるいは銀行の関連会社の利益と顧客との利益の相反が生じるケースです。

顧客同士の利益相反が生じるケースもたくさんあります。昔ながらの企業に対する運転資金、設備投資資金の融資だと、通常の商取引を超えた利益相反は生じていないし、銀行側の情報へのアクセスはたかがしれています。しかし、融資契約が複雑になるにつれ、銀行側は事業計画、M&Aのデューディリジェンス報告書とありとあらゆる情報にアクセスすることを要求し、対象となるディールから離れた一当事者ではありえなくなってきたわけです。一つのディールに対して複数の買い手が存在し、双方から融資の申出を受けた場合を考えてみると、銀行側は複数の買い手の考えている事業計画、買収スキーム、提示価格とありとあらゆる情報にアクセスすることができます。秘密保持契約書で目的外使用が禁止されているし、チームを分けて「情報の壁」を作っているからいいんだという話なのかもしれないですが、顧客サイドからは検証のしようがありません。従来は、金融機関同士の利益相反という問題はあまりシビアに考えられていなかったように思うのですが、段々経営判断として金融機関にまかせられている範囲は狭くなっていくように思います。

4. 今回のケースはどうなの?

楽天に対して融資枠を設定している大手都銀各行とTBSとの関係は調べていないので、わかりません。仮にTBSがA行から事業資金を借りているとした場合に、法令上A行は楽天に貸すことができないのかというとそんなことはないでしょう。ただ、楽天が買収資金を調達するとなるとA行は楽天の事業プランに対する情報を当然に入手するでしょうから、その場合は利益相反を考えるのが難しくなります。銀行が情報へのアクセスを要求すればするほど、利益相反の問題は顕在化していくわけです。
次に経営判断として、敵対的買収資金は融資しないという問題はどうでしょうか。例えば、ほとんどの証券会社は敵対的買収における公開買付けの事務取り扱いを行いません。彼らの既存の顧客層は上場会社であることを考えると、業界の仲間外れにされるリスクはとれないというわけで、これは妥当な判断だと思います。仮にA行のTBSに対する貸付が相当程度あった場合に、TBSとの関係を重視して楽天に対する買収資金の供与は拒否するという姿勢もまあ理解できます。
ただ、個別の顧客との利害相反がない場合に一般論として敵対的買収資金は供与しないという経営判断だとすればどうなのでしょう。おそらく楽天は外資系の金融機関に融資を求めるでしょうし、彼らにとってもディールにかめる絶好のチャンスですから色んな金融技術を駆使して参加してくるにちがいありません。大手都銀という性格上、日本企業に優良な顧客をたくさん抱えていることは事実ですが、それを維持するだけでは収益拡大はできないという判断をしたのではなかったのでしょうか。投資銀行業務での収入拡大を目指すという方針はどこにいってしまったのかという感じがします。彼らが従前の融資を中心とした業務を継続していくだけで終わるのか、エクィティも絡めて投資銀行としての評判とノウハウを蓄積していくのか、将来の方向性が問われているように思います。まとまりのない文章を、日系のプレーヤーにも是非頑張ってほしいなあ、なんていう個人的希望で終えておくことにします。
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by neon98 | 2005-10-26 03:48 | LEGAL(General)

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