2006年 01月 30日 ( 1 )

シリーズ 日本のCorporate Governanceを考える(3)―Henry FordとShareholder Primacy Norm
今日はHenry Fordという有名人を題材にShareholder Primacy Normと”The least said, the soonest mended” (口は災いのもと)という格言の関係について考えてみましょう。

Shareholder Primacy Normということで一番よく引用されるのが、DODGE v. FORD MOTOR CO., 204 Mich. 459, 170 N.W. 668 (1919)というケースで、有名なHenry FordとJohn and Horace Dodgeというフォードモーターの2人の株主の間の争いを扱ったものです。現在は巨大企業のフォードモーターも当時はHenry Fordが58%を保有する閉鎖会社であり、このDodge Brothersはフォードへの部品供給者であり、かつ10%の株主でもありました。ちなみに、現在クライスラーの傘下にあるDodgeはこのDodge Brothersの会社です。T型フォードの成功をみて、Dodge brothersはフォードへの部品供給を停止し、フォードの競争者として自動車市場に参入します。そのための資金源としてDodge brothersはフォード株を売却しようとしますが閉鎖会社であったため買主もおらず、さらにHenry Fordからは配当の一部の支払いを止められてしまいます。そこで、配当支払とその原資として事業拡大差止めを求めたのがこの事案です。

配当を支払うのか、内部留保により投資にあてるのかはまさに経営者の判断すべきことであり、Business Judgment Ruleの適用場面だと思うのです(当時の米国法は知りませんが)が、裁判所は以下のフォードの発言をとりあげ、配当を命じます(事業拡大差止めについえてはさすがに認めていません。)。
"My ambition," said Mr. Ford, "is to employ still more men, to spread the benefits of this industrial system to the greatest possible number, to help them build up their lives and their homes. To do this we are putting the greatest share of our profits back in the business."(引用は判決文より)
裁判所の判示は以下の部分に顕著にあらわれています。
A business corporation is organized and carried on primarily for the profit of the stockholders. The powers of the directors are to be employed for that end. The discretion of directors is to be exercised in the choice of means to attain that end, and does not extend to a change in the end itself, to the reduction of profits, or to the nondistribution of profits among shareholders in order to devote them to other purposes.
推測ですが、Henry Fordが「配当を留保してでも製品の価格を下げ、販売数量を拡大することが長期的に株主のためになる」とでも言えば裁判所もこのような結論をとりえなかったのではないでしょうか。ある意味正直なHenry Fordの発言は当時の平均的な経営者(もしかしたら現在も)の率直な気持ちをあらわしているように思えます。気持ちとしては理解できなくもないですが、経営者として正しい考えとはいえないでしょうし、少なくともOfficialな場面で発言するのはPolitically Correctではないということでしょう。

ちなみに、このHenry Ford氏は、機械工の身から、T型フォードを開発し、製品ラインの工夫により安い車を提供しつづけたことで大金持ちになったわけですが、第一次世界大戦を集結させるために”Peace”という船を欧州に送ったり、禁煙パンフレットを自主出版したり、ユダヤ人銀行家を差別する発言で物議をかもしたりしたことでも有名だそうです(Robert and Marilyn Aitken, Pride and Prejudice: The Dark side of Henry Ford, 32 Litigation 1 (ABA), 53 (Fall 2005))。ということで、横道にずれながらのエントリでした。
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by neon98 | 2006-01-30 08:12 | Corporate Governance

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