カテゴリ:Law School( 14 )

日本の法化社会とリーガルエリート市場(上)
「法化社会」という用語はそれ自体では意味不明なのであまり好きではないのだが、ググッてみてもわりとよく利用されているのでこの語をあてることにした。今日の話は、行政による裁量的な支配から法による支配が優位に立つこととなり、リーガルエリートたちの市場がどうなったのかという話である。今日とりあげるのは、Curtis J. Milhaupt and Mark D. West, Law’s Dominion and the Market for Legal Elites in Japan (June 14, 2002)という日本法についての論文では毎度おなじみのお2人による論文である。

米国において従来から存在する議論として、弁護士とはTransaction Costを生むだけの存在であり、経済にとってその存在は望ましくないというものがある。なんとも牧歌的な議論であるが、1985年に13,000人以下であった日本の弁護士数と当時の日本経済発展とが「弁護士=害悪」という論争の一証拠(“EXHIBIT A”)としてあげられていたそうである。弁護士過多を害悪とみなす考え方は法の存在そのものを敵視することが多く、法化社会における事後規制のあり方よりも行政を中心として事前規制型の方が優れているのではないかという主張につながることも多かった(注:これらの主張の解説はP6からはじまり、弁護士が経済発展のお荷物であると論じる主張を丁寧に説明しているので、興味のある方はご覧いただきたい。)現在では日本経済がバブル崩壊以降低迷しつづけたこともあり、そのような見方は後退している。

著者らは、規制緩和、行政裁量の限定、リーガルサービスへの需要拡大を受け、法と弁護士らの経済成長への影響と日本経済のガバナンスに対する官僚の役割という2点にあらためて焦点をあてる。その中核となる主張は、
透明かつ法に基づいたガバナンス機構への移行を反映した法機関と政治経済の変化を主要な原因としてリーガルエリートたちの雇用パターンが変化している
というものである。事前規制型から事後規制型への移行とそれに伴ってエリート官僚を目指すエリート法学生が減少し、エリート弁護士を目指すようになったという主張を検証しようという論文である。東大法学部卒業生に限定した話ではもちろんないが、もともと官僚層を目指す学生が多いという点では東大法学部卒業生を対象として想定してもらうのが一番わかりやすい。

1. 受験者数・合格者数・就業者数からの分析

著者らはまずエリート法学生の選択は官僚か法律専門職の二者択一であると単純化したうえで、国家一種試験と司法試験の受験者数・合格者数・就業者数のデータから就業構造の変化を調査し、エリート法学生が官僚よりも法律専門職へと向かっているという仮説を検証する。
・司法試験受験者数はバブル経済の影響を受けて減少した80年代を除き、概ね継続的に増加傾向にある。司法試験合格者数は80年代までの間はほぼ一定に据え置かれ、90年代に入ってから増加傾向にある。
・国家一種試験受験者数は景気動向を受けて増減するものの長期的なトレンドは見えない。仮に長期的なトレンドとして減少傾向にあるとした場合であってもその原因は合格率の低下ではない。国家一種試験合格者数は1998年に減少するもののそれ以降の数年は増加傾向にある。
・1999年までのデータをみてみると国家一種試験合格者数とエリート官庁就業者数も減少傾向にあり、長期的に就業者/合格者の割合が低下している。この割合の低下が国家一種試験離れの原因となっているとも考えうるが、現行の受験者の一部のヒアリングによると彼らはそのような意識を有していない。
・官僚機構自体が人材離れを受け止め、弁護士法の改正による弁護士の官庁への出向、国家公務員試験の合格者倍増、法科大学院卒業者への国会公務員試験合格者資格の付与など、優秀な法学生を惹きつける対策をしている。
2. 大学別データの分析

著者らはこれらのデータのみでは必ずしも法学生の職業選択傾向は明らかではないとして、両試験において受験者・合格者の比率が極めて高い一部大学のデータを抽出する。
・東大における司法試験合格者・司法研修所入所者の推移は全国的な傾向と合致して増加傾向にあるのに対して、国家一種試験合格者・官庁就業者数は全国的な傾向にもまして減少傾向にある。すなわち、東大生の官庁離れが著しく進んでいる。
・東大生の官庁離れが特定の大学卒業者に対する採用基準(東大生ばかりを採用するという批判に対する反作用)を反映しているかどうかを確認したところ、99年からの3年間にかけて合格者数に対する東大生採用数の割合は増加しており、採用側の東大生に対する逆選好は生じていない。
・同じくエリート大学である京大においてもほぼ同様の傾向がみられる。
3. その他関連データ
・いわゆるダブル合格者は従来官庁に入り、よほどのことがない限り退職することはなかった(注:司法研修所⇒官庁というルートは官庁側の採用基準に合致しないので選択されにくい。)が、最近では官庁を退職して弁護士事務所に勤務する例が増えている
・司法書士・法務部所属従業員数が増加している。
(次回へ続く)
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by neon98 | 2006-06-22 07:55 | Law School

"Remember Who You Are" in Law School
Remember Who You Areという本はHarvard Business Schoolでの最後の授業での教授陣からの言葉を収録したものである。翻訳は読んだことがないのだが、ハーバードからの贈り物という題名で出版されているようだ。卒業後一年が経過したのだなあなどと感慨にひたっていたら、ロースクールでの最後の講義シーンである教授が述べたことを書いておこうという気になった。以下は私が感銘を受けた最終スピーチの概要である。
私が講義で話すのはこれで最後だ。君たちはこのエリート校と呼ばれるロースクールを卒業し、その多くは大規模ローファームに勤務することになるだろう。私もそうだった。

私の多くの友人たちは当初は借金を返済するまでの間だけ大規模ローファームにいるといい続けていた。君たちの多くはとりあえず給与の高い大手ローファームに勤務し、ローンを返済してから将来設計を考えようとしていることだろう。しかし、考えてみてほしい。君たちは金持ちをより金持ちにするためだけにロースクールを志したわけじゃないはずだし、パートナーに顎で使われうることを望んでいるわけじゃないだろう。君たちは誰かの指示に従って仕事をするためだけに高い学費と貴重な時間を費やしてきたわけではない。

大手ローファームにいる間、自分自身の頭で自分の将来を考えてみてほしい。君たちは何らかのかたちで社会に貢献することを望んでロースクールに入ったことと思うが、それが達成できているのかどうかと。私の多くの友人たちは、現状に不満を抱きつつも、とりあえずはといいつつ、大手ローファームで働き続ける。そして、彼らはずっとそこにいるだろう。現状を維持するという判断の多くは様々な言い訳に支えられている。常に自分の頭で考えることだ。

どんな場所に属しようと自分の頭で考える癖をなくすな。上司であるパートナーがOKと言ったとしてももう一度自分の頭で考えてみることだ。それが自分の良心に照らして正しいことなのかどうか、もう一度考えることだ。それがプロフェッショナルとしての仕事というものだ。君たちはエリート校といわれるロースクールを卒業し、エリートとしての行動を期待される。自分がどういう形で社会に貢献できるのか常に考えることだ。君たちの仕事はただ金儲けをすることではなく、ローンを返済することでもなく、何らかのかたちで社会に貢献することだ。
そう話した彼は、学生たちからのスタンディングオベーションの中を少し誇らしげにゆっくりと歩いていった。僕はこの言葉を聞くために留学してきたのかもしれないなあとそう思ったことを覚えている。
"The first piece of advice comes from my mother...'Kim!' she would say, every morning as I left the house, leaning her face down into mine and looking me straight in the eye. 'You go out there today and be a leader. Stick to your guns about what you know to be right and wrong, and don't let anyone else drag you around by the nose. Remember who you are!'" (Remember Who You Areより)
帰国してから何をしよう?自分の頭で考えるか。
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by neon98 | 2006-05-11 12:08 | Law School

Securities Regulation履修の薦め
証券取引法といえば、法律実務家ですら頭を抱える難解な条文の集合体なわけで、業務で必要な場合に仕方がなく条文と注釈とを並べてうーんと唸るだけであまり好きな分野ではなかったのですが、それにもかかわらず、LLMで履修選択してよかったなあと思うのがSecurities Regulationです。比較法的視野を持つことにより日本法をよりよく理解できるようになるというのはほぼ全ての法分野についていえることなのですが、証券取引法の場合は米国法との類似性が強いためにこのことはさらにいえるでしょう。

とはいえ、米国証券法もすさまじい数の条文の集合体であることに代わりはなく、「私募」とは・・・、「証券」とは・・・なんて感じで教えていたら、すぐに飽きちゃったに違いありません。こちらのロースクールに来ていいなあと思った教え方が機能を中心として教える方法です。具体的にいうと、
(1)投資家間の情報の格差がどのような問題を引き起こすのか、それは経済的に評価してどうなのか。
(2)アナリストはどのような業務を行い、利益相反と言われる問題は何なのか。Regulation FDはそれにどのように対処しているのか。
(3)インサイダー取引はそもそも悪いことなのか。判例はどのように変遷してきたのか。
(4)公募の際に引受証券会社、会計士、弁護士の果たす役割は何か。
(5)情報開示のコストは何か。
等の問題を現実の事例を敷衍しながら判例・条文を確認していくと、非常に面白いですし、ようやく難解な日本の証券取引法の条項の趣旨なりが理解できてくるわけです。

証券取引法は司法試験受験科目ではもちろんありませんでしたし、法学部で選択することもなかった私としては、OJTで勉強するほかなかったわけですが、体系的・機能的・有機的に証券取引法を理解するには米国法を通じて学ぶ方法が非常に有益でした。極めて実務的にFilingの中身だけをどんどん見ていくという講義もあるようですので、全ての講義で大きな視座を与えてくれるわけではないと思いますし、根本的には教授との愛称だと思いますが、個人的にはLLMで一番履修選択してよかったなあと思える科目の一つではあります。

でも日本に帰国しても証券取引法ロイヤーにはならないだろうし、なれないと思いますが・・・。
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by neon98 | 2006-01-20 06:13 | Law School

Plagiarismの扱い
ニュース記事をみて書きたくなったのでもう一つだけエントリ。京大教授が助手論文から盗作(Asahi.com)したということなので、関連エントリをしておく。

米国においては、Plagiarismは大学のみならず、実務家にとっても重大なルール違反として受け止められていてCitationは非常に厳格に運営されている。単なる著作権法の問題にとどまらず、著作権の切れた文献についても同様に引用しなければならない。誰かの貢献を自らの貢献として発表すること自体がルール違反なのであって、元の貢献が著作権法の保護に値するかどうかは関係がない。

ロースクールにおいてもThe Bluebookという引用ルールの本を買わされ、論文を書く際には引用ルールを細かく指導される。年度の最初にクラス全員を強制的に集め、Plagiarismについての警告が行われたくらいだ。ロースクールでのペーパーでPlagiarismの批判を受け、過去に退学になった生徒もいるようた。彼・彼女は、少しばかりの誘惑にかられたばかりに、将来を失うという高い代償を支払うこととなった。法律事務所のアソシエイトのメモでもCitationが正確になされていない文章は、内容以前の問題として評価されない。Law Journalの編集委員はこのCitationをひたすらチェックするのが主な仕事となっていることは以前書いた。

この教授の問題は、著作権法違反、盗作というルール違反にとどまらず、密室内で発生しがちな「暴力」的慣行を如実に物語っている。セクハラに続き、こういう問題が表に出てきて、これが氷山の一角だとすると、教授陣からして研究者の卵が人間として扱われているのか、疑問に思わざるを得ない。3ヶ月の停職処分というのはいささかぬるい気がする。多くの大学関係者がこのような問題に無関係であることは承知のうえで書かせていただいたので、どうぞ気を悪くしないでいただきたい。
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by neon98 | 2005-12-21 05:33 | Law School

PosnerによるLaw School Ranking
ロースクールランキングというものがある。その中で最も有名なものがU.S. News & World Reportによるものだ。当のロースクール業界からは反対を受けているが、優秀な出願者の確保、寄付金集め、卒業生の就職確保などで多大な影響力を有するものらしい。少し前にあるロースクールでUSNEWSに誤ったデータを提供してしまった結果、ランキングが大幅に低下してしまい、決まっていた就職に支障が出るなど困った結果が起きたことがあったようだ。これは当然ながらJDを対象としたランキングだが、多くの学校はJDと同じ授業を受け、同じ教育環境におかれるのだから、LLM出願者にも関係がないとはいえない(むろんLLM卒業校のランキングがその人の将来を左右する局面がJD学生と比較して少ないとはいえるだろう。)。

このランキング制度には弊害もあって、対象となるロースクールに間違ったインセンティブを与えるとの指摘もある。指宿教授のブログの過去記事で紹介されている記事(Law.com)では、ランキングをあげるための以下のような作為的な手法が幾つか紹介されている。
For example, schools can delay granting sabbaticals or leave to their professors until the spring semester in order to improve their student-faculty ratios for the survey. That means an overload of courses in the fall and a thin selection in the spring.

They also can divert students with lower LSAT or grade point averages to their part-time programs, the credentials of which have less weight in the ranking computations. The result is a two-tiered system where students with perhaps more diverse backgrounds and experiences are separated from other students whose LSAT scores and grade-point averages happen to be high.

Law schools may also reduce their first-year class size, the class that the publication uses to compute some of its data. Such a move could cause students who may otherwise have been accepted into the school to wait until their second year to attend their first-pick school.
ランキングが著しく改善したロースクールがあり、その原因を検証したところ、教育内容等の変化ではなく、卒業生の進路を把握する努力をしたというのが原因だったそうだ。また、ランキングを負いすぎるとLSATのスコアのみを重視するようになり、少数者の学習機会を与えるインセンティブに欠くという批判もある。

このような批判があるとはいえ、出願者が学校を選択するにあたり、ランキングおよびその背景にあるデータが有益な情報となるのはたしかであり、ランキング制度そのものをなくすという方向には賛成しがたい。上のLaw.comで紹介されているランキングに関するシンポジウムに参加した著名なRichard A. Posnerが、Law School Rankingsというペーパーを書いている。

ポズナーもランキング制度を、出願者が選択をするための情報を提供する最も効率的な方法として支持はするものの、USNEWSの手法を恣意的であると批判をしている。彼の批判の要点は、(1)ランキングの有効性はランキングを決定するにあたっての数々の指標に充てられる恣意的な重みづけにより損なわれる、(2)順位間の格差の大きさを示さないという点にある。脚注4によれば、2004年のランキングを決定する指標とその重み付けは以下のとおりである。
quality assessment by academics, 25%; quality assessment by lawyers and judges, 15%; median LSAT score, 12.5%; median undergraduate GPA, 10%; acceptance rate, 2.5%; employment rate at graduation, 6%; employment rate nine months after graduation, 12%; bar passage rate, 2%; expenditures per students for instruction, library, and supporting services, 9.75%; student/teacher ratio, 3%; average per-student spending on all other items (e.g. financial aid), 1.5%; and total number of volumes and titles in library, 0.75%
Posnerは、Top45校のデータを調査し、多くの出願者にとって有益なcomposite rankingというものをあげる。これは、mean LSAT; LSAT dispersion; job replacement; clerk replacement; and business-law faculty qualityという各指標それぞれのランキングを重み付けすることなく平均をとったものである。彼がそれぞれの指標を重要とした理由の要点は以下のとおりである。

LSATのスコアは現在のランキングと相関関係が高い、またランキング内の指標のうちacademic reputation, non-academic reputation, GPAなどの主観的な指標とも相関関係が高い。ロースクールを他の生徒からも学び、成功者同士の人脈をつくる機会と位置づけると、LSATの平均値は重要である。

LSAT dispersionは、生徒の中でLSATのスコアにどれだけバラつきがあるかを示す。バラつきが大きいと、教師が低いレベルの生徒にあわせて講義をするプレッシャーを感じ、教育レベルが低くなる(Posnerの考え方からすると当然かもしれないが、彼がAffirmative Actionに対して否定的だということがわかる。この指標をとると当然ながらAffirmative Actionで有名なUC Berkeleyのランキングが低くなることが指摘されている。)。

トップローファームへの就職、エリートへの道と思われているClerkへの就職については特段説明が必要ないだろう。ビジネスローに関する教授陣の質という指標については、多くの学生が法律実務に興味があることからすれば教授陣の質というデータはビジネスローに絞るべきだという彼の主張を反映している。

これらの指標によるランキングをまず弾き出し、これを単純に平均した平均ランキングが彼の主張するcomposite rankingである。これにより弾き出したランキングと元のUSNEWSのランキングを見てみよう。
d0042715_7343166.gif
当然ながら、ビジネスローに強いといわれてきたロースクールの順位はUSNEWSランキングよりも向上し、学者系といわれるYaleなどの順位は下がることとなる(だからといって、Yaleを蹴るかというのは別問題だけど。)。でも、えー、Stanford、そんなとこまで落ちちゃうのーという驚きはもちろんある。ちなみに、中堅・下位校になるとUSNEWSランキングとの差異はもっと大きくなる。興味がある人は原文Table3の「USNWR RANK」と「AVERAGE RANK」を比較していただきたい。

ちなみにPosnerは出願者のあるべき学校選択について以下のように指摘している。

まず、Richard SanderによるAffirmative ActionのA Systemic Analysis of Affirmative Action in American Law Schools, 57 Stanford Law Review 367 (2004) (PDF47thさんのエントリ)の中で、権威あるロースクールに通って平凡な成績、低いランクのロースクールに通って好成績をおさめることのトレードオフが証明されたとする。
次に、ローファームは、出身校とそこでの成績との両方を重視しているが、最高レベルのロースクール以外では成績が重視されているとする。
このことの帰結は、ギリギリの成績で合格した出願者はランクの低いロースクールを選択すべきだということになる。すなわち、ランキングの高いX校でのB平均よりも、ランキングの低いY校でのAマイナス平均を選択せよということになろうか。

感情的にしっくり来ないものはあるけれど、エリート弁護士として成功するということに興味を抱く出願者に有益な情報として割り切ってしまえば、一つの考え方としておもしろい。典型的な出願者にとっての賢いロースクールの選び方とでも言うべきかもしれない。
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by neon98 | 2005-12-10 07:41 | Law School

LLMs Rule the World
やや刺激的なタイトルの元ネタはこちら。

(以下、記事内容のまとめ)

政治の世界においてLLMは重要な役割を果たしている。例えば、グルジアの内閣の構成員の多くがアメリカ法のトレーニングを受けており、革新的な学位としてみなされることのないLLMは実際には政治的な変化を促進している。LLMには各国から主要人物が集まり、例えばコロンビアの最近のクラスにはthe general counsel of Haiti's Central Bank、the dean of Mozambique's law school、およびsenior advisers to the Guatemalan Truth Commission and to New Zealand's Ministry of Maori Affairsが参加していた。

グローバリゼーションの時代において、コーポレートロイヤーが米国または英国でのLLMで学ぶことはもはや必須である。LLMは米国の依頼者を理解し、クラスメートを通じたネットワークを作ることに寄与する。多くのCorporate Law Firmをみると、創業者はLLMsだ。代表的な例として、Zia Mody of India's AZB & Partners, a Harvard grad; Wei Xiao of China's Jun He Law Offices, a Columbia grad; and Ken Tsunematsu of Japan's Nagashima Ohno & Tsunematsu, also a Columbia gradがあげられる。

LLMは1990年代にブームとなり、米国の大学または大学院で法を学ぶ外国人の数は1994年から2001年にかけて3,453名から6,552名へ90%も増加した。9/11以降毎年若干の減少傾向が見られたが、2004年に再び増加に転じている。

LLMがアメリカの評判を高めるとは限らないが、ロースクール側は複雑なアメリカ社会を理解させようと努める。卒業生がアメリカに好感を持つにせよ、持たないにせよ、アメリカのシステムを取り入れていくのだ。

(以上、記事のまとめ)

大雑把な記事の内容は上記の通りだが、第一印象として記事はLLMという学位を過大に評価していると思われる方が多いのではあるまいか。僕もそう感じた一人なのだけど、日本人以外からはLLMはもう少し高く評価されているのではないか、と思う。

日本人は国民が皆「中流階級」に属していて(あくまでも相対的にみてという話)、ずば抜けた階層に所属しなくても留学という制度を利用することが可能である。もちろん留学のための障害はあるにせよ、法律事務所派遣、企業派遣というかたちで金銭的な障害は乗り越えられ、奨学金を利用している人は少ない。高い階層、すごい金持ち、ずばぬけた秀才でなくてもLLMに参加できるのである。必然的に企業に勤める方、弁護士の留学がほとんどになって、バックグラウンドが大きく異なることは少ない。日本での受け止められ方は、「渉外弁護士は皆留学しているし、それだけだと付加価値としてはあまりないよね。」というのが正直なところで、記事を読んだときの違和感はここからうまれる。

でも最近はLLMという機会を十分に活かしきれたのだろうかと疑問に思うこともないではない。むろん当時は精一杯努力したけれど、ごろごろいる日本からのCorporate Lawyerの中の一人にすぎず、英語力の問題もあって授業での議論に十分参加できたとも言い切れない。反省したところでLLMに参加するときの僕の実力はそれまでの人生を反映しているのだから、後悔してもしょうがないのだけど、英語のNative Speakerだったらなあと思ったことは何度もあった。

実際、LLMの学生のバックグラウンドは日本以外の国をみてみると多様で、某国首脳の子息、外交官、人権活動家、国連関係、人種差別撤廃運動家と多様で、すごい金持ちか、高い階層の出身か、特殊なバックグラウンドの人もたくさん含まれている。別にビジネスローなんてちょこちょこ勉強したところで日本からでも相当の知識は習得できるし、こいつらとの人脈をきっちり築いておくことの方が重要なんじゃないかとも思ったりするわけだ。

第一学期目は授業についていくだけで必死で食事時間と睡眠時間以外はほとんどケースブックと格闘していたけど、第二学期は手を抜くコツも覚え、色んなやつらと遊びに行き、パーティにはほとんど全て参加した。多くの同期生はそれぞれの国に帰り、それぞれのフィールドで活躍しており、たまにメールで近況を聞くのを楽しみにしている。
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by neon98 | 2005-09-30 07:56 | Law School

ロースクール回想記
 今年某ロースクールでLL.Mを取得する予定の方とお会いする機会があった。彼はCorporate Lawyerで基本的には自分の専門分野を深めたいと思って留学をされたようだが、授業選択の結果が正しかったのかどうか少し疑問を呈されているようだった。

 アメリカのロースクールの授業は当然ながらJDなど当該法律を初めて学ぶ人向けに開講されており、例え日本においてであれ、数年間の法律実務経験を有する人たちにとって難しくもなんともないというのが彼の感想で、僕もその意見に100%同意する。もちろん個々人の経験も違えば、ロースクールも違う、受講する講義を担当する教授も違うということで、一般化することは危険なのだけど、少なくともCorporate LawyerにとってLL.M.で目新しいことは少ないのではないかと思う。割り切って言ってしまえば、新しいのは英語だけだ。特に会社法・証券取引法という分野では、日本はその多くはアメリカから法律を持ってきているわけで、契約実務の分野でもアメリカの契約をそのまま日本語訳したような契約書も多数みかけるわけだから、詳細は知らないまでも実はほとんどの知識は既に取得しているものなのだ。

 そもそも僕は留学して何かをキャリアのために身につけようと思っているわけではないし、生活を含めて色んなものを楽しみ、感じられればよいと思っているので、仮に講義から得られるものが少なくとも留学が無駄だとは思っていない。ここで学んだことは即効性のある知識としてではなく、もう少し広いレベルの教養として自分の中に生きていけばいいのではないかと思っている。ただ、何も授業で得たものはありませんというのではあまりにもさびしいので、自分の反省も含めてどのようにロースクール生活をおくるべきか(僕にとってはおくるべきだったかということでもある。)、少し書いてみたい。

1.専門分野を深めたいというのであれば自分で勉強するしかない
Corporate Lawyerが多くとる科目としては、Corporation, Merger & Acquisition, Corporate Finance, Securities Regulation, Antitrust, Bankruptcy…といったところがほとんどではないだろうか。多くのロースクールでは、これらを全部選択受講した段階で、ほぼ一年の受講枠が埋まってしまうと思う。それでも80%は本を読めばすんなり理解できることだと思う。英語の巧拙はあるにせよ、授業で取り扱うことはほとんど知っているという状態だろう。それ以上のことをやりたければ、教授のところに行き、自分でもリサーチをし、論文などをどんどん読んでいくほかない。
僕の基本的な選択肢は自分で勉強するというもので、本や論文を教授に紹介してもらい、個人的に質問(というか雑談)に行き、LL.M.ペーパーの題材にもした。多くのロースクールにおいて、教授は比較的親切だし、Appointを入れて個人的に相談に乗ってもらえると思うので、これらの機会を生かさない手はない。
Assignment以外のものを読むなんてとても時間がないという方、次の学期には要領をつかみ(読むのが早くなるのが半分、手の抜き方を覚えるのが半分)、ぐっと楽になるはずですから、ご心配なく。

2.専門分野以外のことも勉強して損はない

 専門分野についてどのように知識を深めたところで、日本に帰国してアメリカ法の流れをおいかけていくのは不可能だから、知識として利用できるのはほんの数年間だけだと思う。Corporate Lawに関係する分野だけでなく、Contractだとか、Tortだとか、International Trade, IP系の科目だとか、なんでもいいから勉強してみるのも悪くない。英米法を勉強して日本法の理解が深くなるということは実際あると思うので、日本であまり知らなかった法律を勉強するのも面白い。

3.法律以外の周辺のことも教養として勉強して損はない

僕が反省しているのは授業選択をPracticalにやりすぎたのではないかということだ。別に役に立とうが立つまいが面白ければそれでいいのだ、くらいの感覚で授業を選択した方が面白い生活がおくれるような気がする。統計学だとか、Public Policyとか、Law and Economicsだとか、Legal Historyだとか、一見どうでもいいような(失礼)ものにこそ、学ぶ価値があるような気もする。多くのロースクールではIntroductionの中に含まれていることが多いのかもしれないけど、憲法をきちんと学んでおくと、人種差別、ゲイ差別など新聞で話題になっていることがよりわかるようになるので、これは是非お勧めしたい。

たった一年で何もかも勉強するのは不可能だし、そんなことをしていたらそれこそずっと図書館で誰とも話さずに本を読み続けることになってしまう。せっかくの留学期間、それももったいない。貴重な機会だから友人を作り、色んな場所を旅行し、色んなものを楽しむべきというものだ。結局何を選択し、何を捨てるのかは個人の選択の問題であって、他人がとやかく言うべきものじゃないのだけど、ひとつの意見として参考になればいいと思う。

皆さんの留学が実りあるものになりますように。
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by neon98 | 2005-09-23 23:53 | Law School

LAW JOURNAL
ロースクールのLaw Journalメンバーと話す機会を得た。一流ロースクールはほぼ独自のロージャーナルを持ち、いずれも学生により運営されている。一流ローファームのアソシエイトの多くは在学中にロージャーナルの編集に携わっており、就職に相当有利だそうである。教授になったり、LAW CLERKになる際にも重視される経歴である。

彼らは一年生終了時にメンバーに選抜されるために論文を書き、選抜試験をくぐりぬけ、応募論文を審査し、Citationなどをチェックして著者とともに論文をしあげる。ご存知のとおり、アメリカのCitationルールは日本と比較してはるかに複雑かつ厳格であり、引用ミスは学者のみならず、実務家にとっても恥とされるうえ、場合によっては盗作との非難を受けかねない。とはいえ、Citationのチェックは面白い作業でも何でもない。なぜ、彼はメンバーになったのだろうか。
「キャリアのためだよ。知ってると思うけど、ここは非常な学歴社会だ。ローレビューの編集長になり、Law Clerkに採用してもらえば、非常に優秀な層の人脈も築けるし、今後の弁護士としてのキャリアにとってこのうえない名誉になる。正直、毎晩遅くまでこんなことやってられないけど、見たこともない分野の論文をたくさん読む機会に恵まれるし、就職にも有利だ。十分やる価値はある。」
論文を応募する教授陣にとっても一流ロージャーナルに論文を発表することは必要不可欠の作業だから、Applicantも必死だ。でも、何も専門知識のないロースクール生がどうやって選ぶのかというと、やはり基本的には教授のネームバリューとトピックだそうだ。時々実績のない学者の論文をとりあげることもあるが、学生が評価することの難しさもあって、そのような機会はあまり多くはないとのこと。

自由競争社会といいながら、実はキャリアの多くはロースクール選択時に、1L終了時に、そしてロージャーナル応募時に決まっていってしまう。良くも悪くもすさまじい競争社会に彼は生きている。
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by neon98 | 2005-06-30 03:17 | Law School

LLMとは?
今日友人と話をしていて、また永遠の謎を思い出した。LLMをもう卒業してしまって、今さら非常に恥ずかしいんですけど、どなたかご存じだったら教えてください。
LLMって何の略なの?
英語ではMaster of Lawとか表記されるけど、ラテン語から来ているらしい。英辞郎でひいてもでてこない。英米法辞典では、法学修士としかでてこない。
数十人に聞いたけど、誰も知らない。MCLだと、Master of Comparative Lawと英語なんですけどね。

(追記)
回答をNY lawyerさんのBlogで発見した。Legum Magisterというらしい。
LL.M. is Latin for Legum Magister, which means Master of Laws. In Latin, the plural form of a word is abbreviated by repeating the letter. Hence "LL." is short for Laws. Legum is the possessive plural form of the Latin word lex, which means "specific laws". When used in the plural, it signifies a specific body of laws, as opposed to the general collective concept embodied in the word jus, from which the word juris and the modern English word "justice" are derived.
ということらしい。
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by neon98 | 2005-06-24 09:01 | Law School

Americal Law School System
BarBriを受講していると、その効率の良さもさることながら、内容の浅さが気にかかる。内容の浅さという面では、範囲が膨大であることと期間が2ヶ月しかないことからやむなしという感じがしないでもない。でも、そんな浅いことすらロースクールでは教えない。ロースクールで授業を受講していて「面白いけど、で何がルールなの?」という疑問をぬぐえなかったのはどうも皆に共通する要素のようだ。

ケースからルールを読み取る能力、依頼者に有利なようにルールを解釈して主張する能力などを徹底的に鍛え、ルールを覚えること自体には重きをおかない教育システムといってよいのだろう。推測だけど、(1)各州法律が違い、どの州で実務をするかわからないのに細かいルールを覚えることにあまり意味がない、(2)細かいルール自体は調べたり、専門家になればわかることであって、それよりも法律家としての議論の立て方などを鍛えることが重要である、という風に考えられているような気がする。アメリカ人も何がルールかわからないとよくこぼしており、1LのJDなどは授業は思考を混乱させるためにあるんじゃないかとまで言っていた。

秋学期に最初に授業を受けた時の印象は、「JDはなんて馬鹿な質問をするんだ」「議論の立て方に説得力が全くない」だったけど、それでも次の学期になると見違えるように説得的な議論をしはじめた(Upper Classでのことなので、2Lか3Lのことをさしています。)。その意味では教育課程は(少なくとも必死についてきた一部の学生にとって)成功といえるのかもしれない。

違うリーガルシステムの中での違う教育システムから得た感想を述べているだけであって、良し悪しを論じているわけではないので、念のため。
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by neon98 | 2005-06-04 02:19 | Law School

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