カテゴリ:よしなしごと( 76 )

赤信号、みんなで渡れば怖くない的な時代の終焉?
防衛庁が談合利得の返還請求(Asahi.com)訴訟を提起したようである。納税者の立場からすると当然の動きなのだが、比較的腰の重かった行政機関が自身の損害について問題意識を持つようになってきたことは望ましいことであり、法のEnforcementという面でもいいことだと思う。

法のEnforcementという部分は法律実務家として実はすごく悩ましい部分である。法律解釈上、黒あるいはグレーゾーン部分であるものの、法のEnforcementが弱いがために実情をよく知る競争者は当該規制を守らず、コンプライアンス意識の高い企業が損をするということが実際にある。「これ、大丈夫ですか?」と聞かれた場合に、黒と確信する部分については当然Noとお答えするほかないのだが、条文だけからは一見黒のように見え、でも法令の趣旨解釈からすると白のように見え、他の人皆さんやってますよと言われた場合にあれこれ思案をめぐらすものの、あまり明快な答えが出てこない場合が多い。みんなで渡れば大丈夫的な論理は口が裂けても言えないわけで、法律上のあるべき姿と社会的実態が大きくずれている場合には本当に困る。

みんながやっていることが適正な法的評価を経てなされている場合であるならば、顧客企業側にも対応する手段があるのだが、単に行政機関の怠慢のために法が執行されない、あるいは行政機関に十分な調査・執行権限が付与されていないなどの場合には、顧客としても非常に困惑する。法が存在していてそれが守られていない状態は、法が存在しないよりも悪いという趣旨のことが、Awake in a muddleというBlogでとりあげられていた(こちら→正直者が馬鹿をみるような法規制)が、その通りだと思う。

談合=みんなやっている=発注者サイドも事情を熟知している=やらないと業界の中でやっていけないという循環が続いていった場合にはもうどうにもならないわけで、談合に限らず、違法行為をするためのインセンティブを減らすことに尽きる。

違法行為をすることのインセンティブが存在する場合、「あいつはやっているんだから大丈夫なはずだ。」「そんなことを言っていたら業界の競争についていけない。」という圧力により、違法行為をしたくないのにせざるを得ない状況に陥る方がいらっしゃるはずで、違法行為をすることは割にあわないと自覚するためのEnforcementにもう少し力を入れていかないと「正直者が馬鹿を見るような法規制」を遵守する人だけが損をすることになりかねないといえよう。

敷居の高い刑事罰に限らず、営業免許の停止・入札資格剥奪・課徴金・民事訴訟などより効果の高い制度が取り入れられてきている背景もこの点にあるのだろう。刑事事件だとハードルの高いうえ、トカゲの尻尾きりで終わってしまうわけだが、法律守らないと会社つぶれちゃいますよという恐怖の方が実効的だという主張はよく理解できる。
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by neon98 | 2005-12-20 02:37 | よしなしごと

あるlawyerの悩み
Blogには主に会社法・証券取引法の話題をとりあげているが、この分野での自分の専門性はまだまだ高くないと思っている。米国を含めて各国と比較して、日本の弁護士が今まで個人事務所という形態を多くとってきて、さほど専門性というものを意識してこなかったのも事実であり、これからの時代は専門性が高くないと食べていけないという言い方がされるのも事実である。でも、ある法分野での専門性を高めるだけでいいのかと聞かれるとそうじゃないだろうと思っている。

こちらの法律事務所で研修をしていて、あらゆる業務をシステムとして機能させようという意図を感じる。Lawyer全体でのマーケットの違いを反映してか、法律産業向けのソフトウェアなどがたくさん開発され、Discovery向け、Due Diligence向けの文書管理ソフト、法律文書作成支援ソフト、数々の法律関係データベースが整備されている。個人の専門領域もある程度しっかり意識されていて、不動産のみを扱う弁護士、Private Equityのみを扱う弁護士、証券取引法のFilingのみを扱う弁護士、独占禁止法のHSRFilingのみを扱う弁護士、保険の訴訟のみを扱う弁護士を扱う弁護士と様々であり、当該分野での知識はすごい。

日本でも例えば外債発行を行う業務は全弁護士の98%は「はい?」という反応しかできないであろうし、何か核になる分野での顧客開拓・維持が必要なのはそのとおりだろう。個人事務所で営業をされている弁護士でも顧客との間でよく経験を積まれている業務があって、得意分野なるものは存在している。判例のデータベースなどは裁判所も協力して全裁判例をデータに取り込んで利用できるリソースを開発すべきだろうし、法律文献も雑誌社ごとにDVDなどのデータベースに落とすのではなく、WestやLexisのように業界横断的なデータベースが欲しいところだ。組織化・専門化という流れはこれからの加速していくだろうということは前提として、果たしてそれだけでいいのかということはよく考える。

d0042715_2272665.jpg僕自身はなるべく特定の分野だけに限定せずに知識を習得しようと努めてきた。意識してきたのは、お客さんから相談されたときに「これは危ないな」と最低限気づくことができる能力であって、これは分野横断的な経験がないとなかなか対応できない。何も知らない分野に取り組むことは組織体としてはまさしく非効率にほかならないのだろうけど、問題点発見能力が必要とされる場面をクリアできる能力というのをまず意識しないと本当にお客さんに迷惑をかけてしまうことになりかねないので、まずは最低ラインとしてのGeneralist的能力は必要だと思っている。

顧客が仕事を依頼するとき、○×法律事務所に依頼するというのか、Aさんに依頼するというのか、色々と考え方があるのだろうけど、基本的には個人としてのつながりが先にたち、それに組織としてのバックグラウンドを追加して考慮するという思考なのだと思う。担当の弁護士が案件を通じて、もっともよく当該顧客の業務、システム、人的関係、会社文化を理解していて、相性があうから継続されているのであり、顧客側としても基本的には手持ちの弁護士リストの中からどこに依頼するかを決定する。依頼者自身の業務自体が専門的な特定分野に限定されている場合もあるだろうし、案件ごとに弁護士を変える場合も多いだろうけど、会社の法律案件を全部持ってこられるお客さんも少なくない。本当に対応不可能な事案というものはさすがに倫理上お断りすることになるのだが、基本的には相談を聞き、Conflictがない限りは受け、自分でまたは他の弁護士との共同により対応するわけで、事案の整理・論点発見・対応方針の決定の際には特定の法分野のみの知識では極めて不十分である。また、「専門」なんてものは顧客が決めるのだという意見にも一理あって、ある顧客はある弁護士のことをM&A専門だと思えば、他の顧客はPL法専門だと思ったりする。結局は相性の問題なのだろう。

個人の幸福追求という観点からしても単純作業のみをしていたいという人はあまりいないだろうし、ローファームという組織面からしても新人アソシエイトをマシーンのごとく単純作業に酷使するというのは求人活動に支障を及ぼすと思われる(実際には多かれ少なかれマシーンになる場合は存在しているだろうが・・・)。米国の弁護士が専門については詳しいけれど、少し専門を外れるとすぐわからないと平気でいうという面もあるわけで、すごく基本的な質問に対しても対応できないのには驚く。狭い対応能力は必然的に組織的バックアップを要求するが、顧客サイドとしても案件にずらずらと10人以上も弁護士を並べられてもコストとして割りあわない(僕が依頼者の案件を海外法律事務所に相談したときに同じことをされ、何人かの弁護士にはお帰り願ったことがある。)。

リーガルマーケットの大きさはリーガルリスクの大きさや法律分野の複雑さ・予見困難さと比例していくだろうから、日本のリーガルマーケットが米国と同様の規模になることはありえないと思っている。米国の場合、判例法主義や連邦・州法の二段構造のため、法を発見することが困難であるのに対し、日本の場合はその場で調査をしても対応が可能である場合が多い。かけられるコストの問題、対応可能性の問題からして、一つの狭い法分野のみに固執していくのは不適切であり、危険でもあると思う。

法律のみを知るというだけではもちろん足らず、会計・税務・顧客業界の慣行なども知らないといけないわけで、私自身は仕事を通じて法律以外のことをたくさん学んでいくことが非常に楽しいし、よいサービスを提供するために必要だと思っている。個人的には、M&Aについての専門性を高めていく(専門といえるほど狭い法分野とはいえないのだが・・・)ために論文を読んだりすることはもちろん好きなのだが、案件を通じてお客さんの業界のことをたくさん教えてもらったり、取引の実態に合致した契約書を作成するために業界のことや在庫変動の時期とか色々と細かく詰めてことの方が実は楽しい。基本的な実務家としての私の欲求は何かの法分野を深く追求するというよりも、ある事件をお客さんが喜ぶようなかたちに工夫を凝らしていき、喜んでもらうことであって、実は分野などどうでもいいのだと思うことも多い。

これだけ法律がどんどん変わり、色んな種類の仕事が世の中に登場すると全部やろうとするのはもう無理だということは認識しながらも、色んなことを知りたいし、やってみたいという欲求とどう両立させるのかが個人的には非常に悩ましい。

依頼されたことをきちんとして依頼者の信頼に応え、かつ、一定の興味のある分野は追いかけていき、飽きたらまた違うことを勉強し、助けてくれる人脈も大切にし、専門外のことにもアンテナを張り続けるという努力(不可能ですかね?)をしていくと、何かの偶然や顧客の勘違いでいつかは何かの分野の第一人者とは言わないまでもお客さんに「○×に強い」と評価してもらえるようになるのだろうか?などと思うことがある。

まあ深刻に悩んでいるわけではなく、最終的には考えてもしょうがないわなーと思うわけだ。人生など計画的に生きようとするのが間違いであって、その都度楽しいと思うことを頑張りましょうねという以外の答えはないのだろう。帰国したら何しようかなあ。
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by neon98 | 2005-12-17 22:07 | よしなしごと

謝罪をされてもチャンスは二度とない
耐震強度偽装問題に関する14日の証人喚問を衆議院TVのWEBサイトで一応さらっと聞いてみた。とはいえ、自民党の渡辺議員の最初の10分でもういいやという気分になり、途中でやめた。自民の武部幹事長が謝罪(Asahi.com)しておられるけれど、覆水盆に帰らずである。40分の持ち時間で33分、自分が話すというのは尋問技術として論外であり、コメントの余地がない。

政治家である以上パフォーマンスの必要性までは否定はしないが、重要な事項を聞き出せないでいてら何のパフォーマンスにもならない。国会の証人喚問が法廷での証人尋問と全く同一であるとは言わないけれど、国政調査権を与えられた国会として行う調査の手段なわけで、意見を押し付け、国民に頑張っていると見せかける場面ではない。きちんとした質問をし、ほんの少しだけパフォーマンス的要素を混ぜれば自然に国民に頑張っているように見えるわけで、今回の質問者は国民にパフォーマンスすらできていない点が問題なのである。

Toshiさんのエントリで、パフォーマンスを批判されており、それ自体はもっともなご意見なのだが、私の印象としては素人目に見てもパフォーマンスにすらなっていないような質問であることが問題なような気がする。90%の事実調査と10%のパフォーマンスという割合なら、政治家の質問としてはいいんじゃないだろうか。いずれにせよ、本当に聞くに堪えないという意味では100%同意する。

具体的にいうと、(1)国政調査の場面で証人の反省を問うことは意味がない(刑事事件の弁護人からの質問ではない)、(2)質問者の意見を聞いてもしょうがない、(3)事実を聞いていない質問が多すぎる、(4)意味のない質問の前段(「ただいまの・・・発言は重大な発言だと思うのですが・・・・」)が多すぎて何が聞きたいのかわからない、などなど聞くに堪えない点は幾らでも列挙できる。聞いていると睡魔がおそってくる。

皮肉でも何でもなく、悪い尋問技術の実践としてロースクールや司法研修所でとりあげたらどうだろうか。まずは何が気になったかを考えさせ、自分ならどう聞くか尋問事項を考えさせる。いい実践教育になるに違いない。こんな感じの講評がかえってくるんだろう。
事実について聞きたいのか、事実に対する評価を聞きたいのか、区別せよ。
事実に対する評価を当該証人から聞くことに意味があるのか、考えよ。
質問の前提を明らかにするために多少の導入を入れることは許されるが、導入部分が単なる自分の意見の押し付けになっていないか、考えよ。
証人喚問の場面で相手を責めることに何の意味もない、刑事事件で反省の弁を引き出す場面とは違うということを自覚せよ。
時間は無限にあるわけではないことを自覚し、事実を中心とした質問の流れを組みたてよ。
何よりも尋問に割り当てられた時間の少なくとも5倍以上の時間をかけて準備せよ。
今度、裁判所で言ってみましょうか。前回の証人尋問少しミスったのでもう一度チャンスをくださいって。
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by neon98 | 2005-12-17 03:25 | よしなしごと

仰木監督のご冥福をお祈りします
ろじゃあさんのところで、ニュースを知りました。以前のプロ野球は死んだのかというエントリでご紹介したように私はずっと近鉄バファローズを応援していました。監督が西武ライオンズを追いかけるその姿がとても美しく見えたもんです。
少し古いけど、阿波野がいて、ブライアントがいて、9点差でも安心できないけど、10点差で負けていてもまだまだ逆転できるんじゃないかというミラクルチームを僕は必死で応援した。一人一人の個人打撃成績のわりに集団で破壊力のある「いてまえ打線」と、阿波野、大塚、赤堀(もちろんあとで入ってくる野茂もすばらしかった。)に代表される投手陣。完璧にみえた西武と比較して、穴だらけにみえただけに応援するだけの価値が見出せたものだ。(過去のエントリより)
d0042715_046772.jpg彼が監督を引き受けるチームは必ずしも戦力に恵まれていたとは言い難かったように思います。日替わり打線などと揶揄されながらも臨機応変に、若手を育てながらチームを指揮されておられた姿は、私の想像する合理的な尊敬できる上司の像と重なったものです。

10・19のロッテ戦、怒りと悔しさは忘れられません。その翌年の優勝時のブライアントの4連発(@ダブルヘッダー)は鮮明に覚えています。たしか当時は中学生か高校生か、中間試験で早く帰れたのでずっとTVにかじりつき、得点差を見てあきらめかけていたところでのあの興奮は今でも忘れられません。もちろん当時阪神大震災の被災者だったものとして、「がんばろうKOBE」のスローガンのもとでのオリックスでの活躍は忘れちゃいかんのですが、近鉄ファンだった私の中での仰木監督は近鉄時代なのです。

彼の一つの業績として、10・19の再現シーンをもう一度ご覧ください。阿波野選手のお子さんも10・19に生まれたとかいう因縁のドラマもありました。

長い間、お疲れさまでした。安らかにお眠りください。合掌。
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by neon98 | 2005-12-16 00:47 | よしなしごと

比較法の視点とStay Foolish
比較法の勉強で一番大切なことは、いかにルールが似ているかではなく、いかにルールが異なるのかを社会経済の背景も含めて細かくみていくことではないかと思う。内部統制の議論にせよ、ああSOX法と同じだなーと思いながら見ていくのじゃなくて、どこが違うのかを中心に見ていかないと見えるものも見えなくなってしまう。日米の比較というだけではなく、例えばコンプライアンスと内部統制は実際どこが違うんだ?と見ていくともう少し何かがわかってくるのかもしれない(わかってこないような気もする。)。

そして、法律の世界に限らず、大切なのは醒めないことではないかと思う。面白いと思って取り組んでいくのか、醒めて嫌々やるのか、あらゆる意味で違ってくる。LLMなんて所詮実際には役に立たないでしょ、たった一年のプログラムで何ができるの?という声に耳を貸す必要はないと思う。法律事務所の研修だって同じこと。醒めながら何かをするのであれば、さっさと帰国して他の道を探せばいい。

スティーブ・ジョブスのスピーチがあちこちに出回っているけれど、本当にいい言葉だ。何が役に立つかなんて本当にわからない。そのときそのときを一生懸命醒めないで頑張ろうと素直に思える。俺もまだまだ青いな。

上の3つの段落はいずれも関連性がないといえばないが、どこか一本の筋でつながっているように思える。

P.S. こういうエントリでお茶を濁しているんだから、法律系のエントリがもうそろそろ来るんだろうなと思っていてくださって結構です。
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by neon98 | 2005-12-15 09:20 | よしなしごと

「浦島太郎」脱却計画
考えてみれば昨年の6月頃から日本の法律実務から遠ざかっているわけで、帰国した後はあらゆる面で浦島太郎であることは間違いない。法律知識の面では新会社法、証券取引法、民法、民事訴訟・執行・担保法、個人情報保護法、破産法・・・ほとんどあらゆる法律が改正されてしまったし、その間新しい判例もどんどん出ているはず。ネットで日経ニュースをチェックしているとはいえ、紙面で読むほど情報量がないわけで、ビジネス情報の面でもかなりの出遅れが予想される。さすがにまずいだろうということで、商事法務を送ってもらったはいいものの、書棚に蓄積されるだけであまり読んでいない。

d0042715_7393586.jpgむろん米国にいる機会を日本法だけの学習に充てるわけにもいかず、空いた時間を少しずつ充てていくことになるが、うーん、これはつらい。まずは、新会社法から初めていくことにするが、「浦島太郎」脱却計画の目玉は何故かマツケンサンバだったりする。。。流行っていることは知っていたけど、Japan TVを申し込むわけでもなく、ネットで映像を探したりするわけでもなかったので、近所の日本人の子供にマツケンサンバの実演を見せられて、こんなものかと初めて知った。
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by neon98 | 2005-12-13 07:40 | よしなしごと

「親日派」子孫の財産没収する法律
しばらくTOB絡みの話が続いたので話題を変えてみよう。「新日派」子孫の財産を没収する法律が韓国で成立したというニュース(Asahi.com)が配信された。
朝鮮半島の植民地化や植民地統治に協力したとされる人の子孫の土地や財産を国が事実上没収するとする新法が8日、韓国国会で成立した。「親日派」の先祖までさかのぼり、築いた富を奪うものだが、親日派の認定方法や財産権侵害との関係で論議も呼びそうだ。

 新法は「親日反民族行為者財産の国家帰属特別法」。与党・開かれたウリ党議員が発議した。対象期間は日露戦争から第2次世界大戦終戦までで、特に1905年に日本が韓国の外交権を奪った第2次日韓協約や10年の日韓併合条約の締結を推進したり、日本から爵位を受けたりした公職者らを「親日反民族行為者」と規定。大統領直属の委員会が認定する。
日本人としては複雑な気持ちにならざるを得ないが、そのことはさておき、お隣の国の憲法はどうなっているのだろうか。事後法による実質処罰といえるのではないか(民族に対する罪を事後的に制定するのに似ている)、実質処罰が正当化されるとしても「罪」と因果関係のない財産の取扱いの問題、子孫に対する「罪」の帰属の問題、対価なき没収という問題、あらゆる点で常識では考えにくい事態になっているように思う。あまり他国のことを批判したくはないが、もう少し別のやり方がなかったのか。民主主義による横暴ではないのか。
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by neon98 | 2005-12-09 03:19 | よしなしごと

実践的な法律学?
ホームズ裁判官は「一般的命題は具体的な事件を解決しない」と述べたそうである。私も実務家としての特性からか、哲学的というか、抽象的にすぎる議論は苦手である。例えば、法人実在説、法人擬制説と言われればむろん学説の名称と簡潔な説明程度は可能だが、学説自体からアプリオリに導かれる結論は存在しない以上、それ以上深く内容を追及しようとは思わない。どちらかというと、先日のラブホテルの実証研究の方が興味深く読めるし、少なくとも立法政策論として機能しうるだけに実践的である。

実務家としてのそもそもの発想の根源は「具体的事件の最も有効な解決方法とその手段は何か」という命題であって、法律学という学問自体にはあまり興味がない。法律が好きかと言われると、嫌いではないけれど法律学そのものにはあまり興味がなく、法律というツールを使って具体的事件を解決する知的作業には興味があるとしか答えようがない。

法学部に初めて入ったときに私は法律に対して難解・形式的といったイメージしか有しておらず、司法試験を受験するために仕方がなく入ったものの、法学が面白くなくてどうしようか悩んでいた。そんな時、ある教授はこう言った。
法律なんてものを難しく考えちゃいけない。これは道具なんですよ。皆さんが幸せに暮らすための道具にすぎない。だから、法解釈も皆さんが幸せに暮らすことができるように解釈すべきなんです。
実務と学問は乖離しているものだと思い込んでいただけに、学者サイドから出たこの発言は目から鱗だった。法学初心者の段階で、学者にせよ、実務家にせよ、法律学の究極的な目的は「皆さんが幸せに暮らすこと」なんだと意識できたのは大きかった(むろん幸せなんてものはそれ自体定義のない多義的な用語なのだけれど。)。法律学において結論の妥当性以上に重要なものは存在しないというのはそれ以来私の信念である。むろん、結論の妥当性というのは個別具体的な事件の解決以外に、当該解釈が社会全体に与える影響も含まれる。この教授は、講義において、ある法理論が具体的背景においてどう利用されてきたのか、歴史的背景も含めて丁寧に教えてくれた。彼の講義もすばらしかったのだが、彼はこの一言を新入生に伝えるために存在しているのだと、私は今でも信じている。

そんなプラクティカルな人間が現在読んでいる本が何故かこれである。『現代アメリカ法の変更』モートン・J・ホーウィッツ・樋口範雄訳(弘文堂)。渡米前にある方から頂いた。一文の得にもならないと言われればそれまでである。せっかく頂いたから読んでみようという以上の考えはなかったのだけど、読んでみるとなかなか読みごたえがある。翻訳の日本語が必然的に難解であるに加え、米国史の基礎知識も要求され、非常に難しいのだけれど、探してみれば実践的な価値もあるように思えてきた(読み終えられるように実践的で役に立つと思い込もうとしているのかもしれないけれど。)。

契約の修正原理、因果関係論、法人理論のいずれにしても、ある特定の時代背景を基礎として、ある特定の効果を狙って主張されてきた理論なのであり、異なる時代背景・文化背景のもとでは適切ではないかもしれない。その意味では、ある特定の法原則を時代背景と一緒にみていくことはその本質的な理解のために不可欠である。

もう一つの理由は、ツールとしてではあれ、一生お付き合いしていくであろう法律のことである。せっかくだから実践的でなくとも学問として好きになってあげてもいいではないか。理論そのものとして好きになれた方が興味が長続きするし、ずっと仕事が好きでいられるかもしれない。そう思ったからかもしれない。

実際、何かの理論を歴史の流れの中でとらえるという作業は好きだ。ケインズは、不況下での失業問題を解決しようとして財政政策による政府介入という経済モデルを考えだしたが、彼が違う時代に生まれていたら異なる経済モデルを考え出したに違いない。ある時代とある環境にあることによってはじめて有効とされる理論だってあるはずだから、歴史のつながりの中での有機的な理解は有益なはずだ。そう思ってようやく第3章まで読み終えたところだ。目次は以下のとおり。面白そうでしょ?さすがにご紹介する程度にまで理解できる自信もないので、本のご紹介にとどまると思います。

序章
第1章 古典的法思想の構造
第2章 契約自由と客観的因果関係に対する革新的法思想からの批判
第3章 サンタ・クララ判決再考―法人理論の発展
第4章 アメリカ法におけるホームズ裁判官の地位
第5章 財産権概念の革新的変容
第6章 リーガル・リアリズムとは何か?
第7章 リーガル・リアリズムの遺産
第8章 リーガル・リアリズム、官僚的国家および法の支配
第9章 第二次大戦後の法思想
終章
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by neon98 | 2005-12-07 12:36 | よしなしごと

Blogにサブタイトル追加
LLM留学日誌と題しながら、LLMネタがあまりない現状を踏まえ、サブタイトルを追加。LLM中はとてもBlogなど書いている余裕も見ている余裕もなかったので、LLM関係のネタは回想記になってしまっている。日誌とするのもどうかと思ったけど、もう慣れてきたので変更するのにも抵抗を覚え、こんな感じでお茶を濁す。

新日本無線の取締役会意見がミスリーディングだと批判しつつ、一番ミスリーディングなのはお前のBlogのタイトルやろと言われると反論の余地がない。。。2年目NYと追加することである程度理解してもらえるやろか。。。
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by neon98 | 2005-12-06 14:41 | よしなしごと

Bunさん無事生還
Bunさんが長い逃亡生活から無事帰還されました。これで捜索活動は中止します。何回か(第一回第二回)ちょっかいを出してみたのですが、ヒマラヤの山奥に逃亡されていたようで、電波が届かなかったそうです。淋しかったです。

何はともあれ、毎日巡回コースの方が無事帰還されたのはうれしい限りです。またお邪魔します。
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by neon98 | 2005-12-01 00:27 | よしなしごと

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