カテゴリ:読書・映画等( 27 )

アメリカの内なる文化戦争
近藤健『アメリカの内なる文化戦争ーなぜブッシュは再選されたか』(日本評論社)。2004年アメリカ大統領選挙は、オハイオで選挙人を獲得したブッシュ陣営が勝利した。当時の雰囲気からいうと「ブッシュを支持するか、ケリーを支持するか」ではなく、「ブッシュ支持か、反ブッシュか」であってケリー候補そのものがもう一つリーダーとしての魅力に欠けると言われた。そもそも論においては、好景気下において現職大統領に勝つということは至難の技である。しかし、おそらく多くの留学生が住んでいる地域は都市部・東海岸OR西海岸における民主党が基盤とする地域であり、教授や学生の「ブッシュ嫌い度」からするとなぜブッシュが再選されたのかがどうにも私には理解できなかった。

共和党と宗教右派・ネオコンと呼ばれる階層とのつながりというのは当時日本でもよく報道されており、有名な話ではある。現在の両党の文化的支持基盤および地域基盤というものを考えるにつれ、建国当時から共和党は南部に、民主党は北部に、比較的強い基盤を有していたものだと思い込んでいたのだが、アメリカ憲法史なるものの書物を読むにつれその大前提が間違っていることに気がついた。私が知りたいと思ったのは、ニューディール時代以降万年野党であった共和党が与党となっていく過程と、民主党が南部での支持基盤を失っていく過程であり、今まで読んだどの本もこの点を分析したものはなかったが、この本は私の疑問に応えてくれる貴重な本である。

妊娠中絶・同性愛・人胚性幹細胞研究に対する「道徳的価値」に対する相対性(他者の価値観に対する寛容性と言い換えてもよい)が選挙の争点になる先進国は珍しく、ある意味ではイスラム教的価値観の国との対立軸といえるアメリカは非常に面白い存在である。連邦最高裁の微妙なバランスが崩れ、「文化戦争」なるものがどのような結末を迎えていくのかは今後の課題であるが、その背景として是非一読しておくべき本であるように思われた。
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by neon98 | 2006-06-24 14:19 | 読書・映画等

菜の花の沖
先日の旅行中に読み始めた司馬遼太郎の『菜の花の沖』全六巻をようやく読み終えた。高田屋嘉兵衛という船頭・商人を通じてみた鎖国・士農工商という身分制度の論理、商品経済、ロシア交易の話である。毎度のことながら、登場人物に語らせる言葉が重い。
商人たる者は、欲に迷うな。とさえ、嘉兵衛は、自分の手育ての者たちに教えてきた。
これは一種の極端な表現であったが、利と欲はちがうのだ、ということを教えるための表現で、世間をひろく見渡すに、欲で商いをする者はたとえ成功しても小さくしか成功せず、かりに大きく成功してもすぐほろぶ、ともいった。
彼が重視したのは信用というものであり、高田屋の品は目方や品質の検査をされることなく、取引をされたのだという。すべての商売の基本たるものはそこにあるというものだろう。
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by neon98 | 2006-06-14 12:11 | 読書・映画等

旅をする人々ととどまる人々
前にも書いたように23歳の頃読んだ沢木耕太郎の「深夜特急」を再び読み返してみた。当時はこの本を読んで(あるいは映画化されたものを観て)同じルートをたどる若者が多数いたものだし、現在もそうなのかもしれない。

この本は私の中では2つのパートに分けられる。前半は、香港・バンコク・マレー半島・シンガポール・カルカッタ・カトマンズと抜け、再びインドに戻り、西へ向かうまでの部分であり、後半は、パキスタン・アフガニスタン・イラン・トルコ・ギリシャ・イタリア・モナコ・スペイン・ポルトガル・フランスと抜け、ロンドンで旅を終えるまでの部分である。前者は主人公が好奇心を持ち、人と関わりながら生活の中に溶け込んでいく部分であるが、後半に近づくにつれ、好奇心が崩壊していき、人と関わるのを避け、金銭をケチるだけの危険な旅に変容していく。そして、ただひたすら前に進みながら(ピサにいながらピサの斜塔を見ようともしない。)、旅を終えるだけの理由を探そうとしていたようにも思える。
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旅行記というには旅の記述に乏しく、10数年後に書かれたものであるためにタイムリーでもない。当時彼が考えたであろうことを旅を卒業した後に書いた自伝的小説であり、旅を続けるごとに少しずつ退廃的になっていく心境を見事に描ききっている。旅の直後に書いたのであれば逆に距離をおいた自己分析はできなかったであろうし、一定の年齢に達した後に振り返った「創作」であるからこそ、共感を覚えるのだろう。

不思議なことに以前はこの本を読むたびに旅に憧れ、旅にでようと思ったものだが、今回はなぜか自分のこととは考えられず、むしろ元の場所に帰ろうと思ってしまった。現在海外に住んでいるとはいえ、私は所詮帰国を前提に一時的に滞在しているにすぎない。そのコミュニティに所属せず、母国への帰国という選択以外ありえないと思っている時点で、単なる旅行者と本質的に異なる点はないのだ。「旅行者」として2年間アメリカに滞在している現在においてはどことなく帰国する理由、ひとところに住むつく理由を探しながら読んだしまったような気がするのは気のせいだろうか。

帰国したらまた大変な日々が待っているけれど、それもまた楽しい。絶対やめてやると思いながら働いた留学前だった(笑)けど、不思議なことにその生活が少し懐かしくもある。

(写真はネパールのポカラから見たヒマラヤ山脈)
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by neon98 | 2006-05-28 15:38 | 読書・映画等

憲法で読むアメリカ史
阿川尚之「憲法で読むアメリカ史(上)」「憲法で読むアメリカ史(下)」を読み進める。

合衆国憲法は条約であるということの意味がより実感を伴って理解できるようになる。建国当時のフェデラリストに関する論争もむろんであるが、チェロキー族事件、黒人奴隷、いずれに関しても最高裁が連邦分裂を回避するという目的を達成するために政治的に行動してきた様子が描かれている。現在のアメリカでは見るべくもないが、当時の連邦政府の基盤が如何に脆弱なものであったかということであろう。国際法が法かという命題についての論争があったりしたが、国際法が法としてのEnforcementを持つためには「人類の共通の敵」が登場することが必要なのかもしれない。

Law SchoolによってはIntroduction的な講義を受講しないといけない場合があろう。古典に近い憲法判例を必死に読むのも悪くないが、古すぎる英語はNativeでもわからないといっていたので、日本語の本で手抜きをするのも悪くない。ロースクールではPracticalに講義を取り続けたのだけど、実際Too Practicalな細かい知識はもう忘れてしまっていることを考えるとCriminal Lawとかあまり使えなさそうな科目選択をしても面白かったような気がする。実際法学部で選択して面白かったのは使わない西洋法制史とか東欧法だったりする。もっとも、実際問題としては9ヶ月のプログラムでそんな「無駄」な選択をする勇気はないのだけど。
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by neon98 | 2006-05-17 07:44 | 読書・映画等

コーポレートガバナンスと人的資本
実はまた大量に本を購入しちゃいまして、帰国までに読みきらないとなんて考えているとBlog用に法律ネタを書いている時間がないんですよね。

今は小佐野広『コーポレートガバナンスと人的資本ー雇用関係からみた企業戦略』を読んでいるのですが、経済学者のわりには経済学っぽくない、もっといえば科学っぽくない本で、主張だけがわりと淡々と書いてあるという感じなので、穏当な主張にある程度納得しつつも斬新さを感じることなく読み進めています。

株式持合いの減少や敵対的買収の増加により従業員が人的資本を投下するインセンティブが乏しくなっていることを背景としつつ、従業員の定着を促すにはどうしたらいいのか、みたいな話を淡々と書いておられるのですが、法律家でも可能なレベルの分析にとどまっていて、「へえー!」というボタンを押す機会がありません。

あっさりと「定着的な労働システムがコーポレート・ガバナンス改革を妨げる可能性がある」という実証結果なんか紹介されているのですが、何をもって「ガバナンス改革」と主張されているのかがわからない以上、どういう主張なのかがわからないんですよね。これくらい多義的な言葉を使用されるのであればもう少し丁寧に実証結果を紹介されないと、意味がないような気がします。テーマとしてはとても重要なことを扱っておられるので理解をしたいのですが、この本だけを読めば概ね理解できるという程度の記述量がないのが残念なところです。

面白そうな議論があればご紹介しますが、やや期待外れの感が否めないのは、法律家として自らの考えをボコボコに打ち砕いてくれるような斬新なものを期待しているからなのでしょうか。値段と分量からして専門書ではないのでやむを得ないといえばやむを得ないのですが、ビジネスマンを対象とするほど実践的な理論ではないし、少し読者層を読み違えたような感じがしました。

まあ社外取締役の議論やらインセンティブとしての株式保有制度などは比較的丁寧に書いてありそうなので、もう少し読めば評価が変わると信じたいものです。
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by neon98 | 2006-03-01 01:08 | 読書・映画等

乗っ取り屋と用心棒
ようやく入手して読んでみた乗っ取り屋と用心棒。厳密な意味で専門書ではないのだが、よく勉強されているなあと素直に感心した。「第6章 様々な鎧と用心棒」はどちらかというと業界内ネタを週刊誌的興味をもって読んだのだが、本来そういう本ではない。全体を通じて一つのポリシーが感じられる。

「四類型登場の背景」というコラムは裁判例動向の予測という観点からも重要だろう。なんでLBOがいけないんだろう?という疑問は、日経新聞記事で鬼頭裁判長のインタビューを読んでもなぜ駄目なのかは全く理解できなかったし、今もできないのだが、わざわざ判決文に書かれた背景なるものが若干触れられている点は参考になる。でも、これをベースに対抗策導入した企業がたくさんあるし、どうするんだろう。
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by neon98 | 2006-02-24 15:07 | 読書・映画等

In America
d0042715_15173096.jpgNY映画シリーズというわけではないが、In Americaという映画をみた。悲しくもHeart Warmingな移民のストーリー。上記リンクにあるAmazonの評価でもほとんどが5つ星にあげる。

誰もが成功を夢見て集まるニューヨーク。背負っているリスクの違いこそあれ、僕も彼らと本質において大差がないのかもしれない。邦題はイン・アメリカ 三つの小さな願いごと。たいしたストーリーではないと人は言うかもしれない。けれど、シーンごとに登場人物が語る言葉の重みを素直に受け止めたいそんな映画。ごちゃごちゃ言わんと素直にみて、素直に感動しよう。
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by neon98 | 2006-02-08 15:31 | 読書・映画等

Leon-The Professional
d0042715_7271115.jpg何度も繰り返し見たにもかかわらず、ニューヨークにいるときにレオンをもう一度見たくなった。あの景色、この風景。あの場所だなあと思いながら見ていくと別の映画のように思えるもの。ちなみに、舞台となるリトルイタリーは、僕の大好きな中華街に侵食され、一区画しか残っていない。殺し屋レオン。豚の人形を使いマチルダを落ち着かせるレオン。文字の読み書きができず、報酬もきちんともらえないレオン。そして、圧巻のラストシーン。
He deals the cards as a meditation
And those he plays never suspect
He doesn’t play for the money he wins
He doesn’t play for the respect
He deals the cards to find the answer
The sacred geometry of chance
The hidden law of probable outcome
The numbers lead a dance

I know that the spades are the swords of a soldier
I know that the clubs are weapons of war
I know that diamonds mean money for this art
But that’s not the shape of my heart....

Shape of My Heart by Sting

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by neon98 | 2006-02-05 07:38 | 読書・映画等

証券取引法の推薦書
eonumaさんから初心者向けの証券取引法の推薦書を紹介してほしいというご依頼がありました。
初心者にとって、最初のつかみとして(余りに細かい条文に立ち入る前に)、お勧めの本があればご推薦いただきたいです。証券取引法読本 有斐閣 河本一郎、あるいは、アメリカ証券取引法 アメリカ法ベーシックス 黒沼悦郎など、どうでしょうか?
日本の法律書は定義・趣旨・条文・学説の説明が中心に少し判例が紹介されているものが中心で、ケースブックのようなものが少ないので選択がやや難しい面があります。可能であれば背景にある問題点・立法趣旨なども一緒にとらえて根幹にある制度趣旨だけを大枠としてとらえたいところです。例えば、公開買付規制からすると(1)適用範囲の大枠の説明(2)制度趣旨(3)批判や比較法制(4)TostNetの扱いなどをざくっと説明し、特別関係者の定義などは問題になったときに条文を必死で読めばいいのだから思い切って削るとか注に落とすとか、有価証券届出書の提出義務の有無なども細かいところは削るとかの配慮があってもいいと思うのですが、ピッタリと思うほどの本は私は知りません。

とりあえず思いつく初心者向けの本をあげておきます。ここにはわりと証券取引法にも詳しい方々がいらっしゃるので、(1)初心者向け(2)読み物的なもの(3)大枠をとらえるのに有用なものくらいの指定でどなたかが教えてくださるかもしれません(なんて他人にふったりして^^)。

1. 日本法
近藤光男ほか『証券取引法入門』(商事法務)が制度趣旨などを重視していてお気に入りなのですが、やや古いのは気になります。
河本 一郎ほか『証券取引法読本』(有斐閣)もかなりお薦めです。近藤先生の本と比較して気に入った方を手に取られるのが無難かと思います。
堀口亘『ハンドブック証券取引法』(勁草書房)も候補の一つではあります。私自身はすごい好きな本ではないですが、まあお好みで。

2. 米国法
黒沼悦郎『アメリカ証券取引法 アメリカ法ベーシックス』(弘文堂)が一番でしょうね。代替案として、デービッド・L. ラトナーほか著(神崎克郎ほか訳)『最新 米国証券規制法概説』(商事法務)もわりと好きです。これも好みがあるでしょうが、翻訳本は基本的に読みにくさで難点があるかもしれません。

とりあえず私の好みであげておきましたが、ひょっとしたらビジネス本の分類でもう少しピッタリの本があるかもしれませんし、色々と手にとられて確認してください。ご参考まで。
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by neon98 | 2006-01-20 13:49 | 読書・映画等

教養のありかた
立花隆の東大生はバカになったか―知的亡国論+現代教養論という本を読み終えた。一部東大を他大学と比較して論述する箇所はあるものの、基本的には全ての大学に共通するものである。(1)あの東大ですら問題があるという論理、(2)ショッキングなタイトル、(3)立花隆が個人的に東大で教えた経験から東大が選択されただけで、東大のみを批判することが目的とは思われない。東大関係者にはカチンと来る記載があるやもしれないが、一読を薦めたい。

筆者の主張は、最近の大学生の基礎学力の低下を契機として考えた教養重視の教育改革論なので、我が身に照らして素直に共感する部分と、「最近の若者は・・・」という年寄りの愚痴と思える部分と両方あるのだが、実際教養の必要性というのは常々感じるところである(当たり前か)。

大学の教養課程で例えば文学を選択すると正岡子規の一生について延々と講義を続けられ、何が面白いものだと当時は思ったから出席しなかったし、今でも絶対に出席しないだろうけれど、役に立つかどうかということではなく、勉強すること自体はいいことというものはあるものだ。

実学と理学(知識学)という分類では法学は実学に入れられてしまうのだが、広く法学という場合に実学というよりは理学に近いものも含まれている。例えば、「国際法は法か」という多分に理念的な思索は一銭の役にも立たないけれど、それを考えることで体系的な知識が身についたりすることもあるだろう。また、物理学・地質学・化学・生物学・医学・・・あらゆる絡みで法律問題が発生することは当然であり、専門知識とまでは言わなくてもお客さんの話す用語くらいはわからないと困る場合も多い。仕事を離れても、特に留学に来てからは自分の国のことを、会話相手の国の事情と比較しながら説明したりする機会が多く、教養の無さを実感することも多い。

何だって勉強する以上は面白いと思ってやった方がいいし、わかるようになれば面白いものなのだろう。教養なんてものは人がどのように生きてきたかを示すもので、一朝一夕で身につくものではないのだから、何が役立つとかあまり考えずに面白いと思うことは楽しんで勉強すればいいのではないかと思うようになった(とはいえ、本を読む時間は有限なのである程度選択はせざるを得ないのだが。)。

ただ、教養があるとかないとかいう表現は多分に主観的である。それゆえ、違う世代の方から受ける無教養との謗りは敢えて反論はせず、話半分に聞き捨てることにしている。彼らにとって教養だと思われるものと、我々の世代にとって教養とされるものは当然違うのであり、彼らの思うところの教養スタンダードを充足することは私にとっての課題にはならないのだ。なお、この本では日本の大学と欧州の大学の歴史がすごくわかりやすく(多分にわかりやすすぎる点は問題なのだが)説明がされているので、大学の歴史紹介として読んでもいいと思う。立花隆という人は強引な論理展開に若干抵抗があって、あまり好きになれなかったのだけれど、この本はあまり抵抗なく読めた。
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by neon98 | 2006-01-20 04:48 | 読書・映画等

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