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ライブドア問題-風説の流布・偽計ですか?-
風邪に伴う発熱で体もだるいし、既に著名な方々が色々と書かれているところだし、マスコミ情報はよくわかんないし、無視を決めこもうと思っていたのですが、問題の重要性に鑑みてやはり書いておくことにします。

日本のマスコミ(海外の傾向は知りませんが、敢えてこういう言い方をします。)は何か問題視されると一つの傾向でしか書かず、「袋叩き状態」にしてしまう傾向がおおいにあると思っていて、書かれる側に対する悪意を感じるというレベルの問題だけではなく、社会に対して偏見を撒き散らすというレベルの問題でおおいに問題であると思うところです。例えば、毎日ニュースは、
ライブドア関係者は特捜部の任意聴取に対し「マネーライフを事業に活用する計画はなく、資金調達の手段だった」という趣旨の説明をしているという。
という書き方をしているのですが、買収により株式総額を高めて資金調達をすることだって別におかしな話ではないわけで、それを偽計スキームの動機ととらえるが如く引用するのはフェアではありません。社会的制裁を与える道具としてではなく、事実を伝えるためにツールを使っていただきたいものです。

とはいえ、私を含め、多くの方々にはマスコミ報道を通じてしか事実を知る手段はありませんので、報道されている中での被疑事実らしきものを拾うことにします。ざっとWEB上でのニュースを見る限り、被疑事実は(1)マネーライフ社「買収」に伴う風説の流布・偽計、(2)ロイヤル信販・キューズ・ネット「買収」に伴う風説の流布・偽計、(3)ライブドア本体およびバリュークリックジャパンの粉飾決算とに区分されるように思います。(3)のうちライブドア本体の粉飾決算容疑については47thさんがライブドア本体(単体)粉飾疑惑の気になるところというエントリをされていて、具体的な手口が判明しない以上あまり付け加えることもないわけですが、(1)および(2)の問題はたくさんの問題点を備えているように思います。(1)と(2)は当事者こそ違いますが、同じ手法ですので、上記リンクの毎日ニュースで説明されている方法を引用します。
関係者によると、ライブドアが実質支配する「VLMA2号投資事業組合」は04年6月、マネーライフの全株式を取得して買収。同年10月25日、ライブドアの関連会社「ライブドアマーケティング」(LDM、当時バリュークリックジャパン)が、既に実質ライブドアの傘下だったマネーライフを「子会社化する」と虚偽の発表をした。これに伴い、同組合はLDMとの間で、マネーライフ株とLDM株を1対1で交換する契約を締結。LDM側は株式交換に向け、1600株を発行した。(中略)LDMは04年11月、自社株を100分割すると発表して株価は高騰。同組合が株式交換で得たLDM株の総額は、当初の約2億8000万円が一時44億円余まで膨れ上がった。05年2月になって、同組合は8億円余でLDM株を海外ファンドに売却。その後、スイスの銀行や別のファンドなど複雑な経路をたどり、売買手数料などが差し引かれた約6億6000万円がライブドア本体に還流したという。
要するに既に実質支配下にあるファンドから子会社であるLDMに株式保有者が移転しただけなのに当該事実を隠したまま、「子会社化」するという公表をしたことが「風説の流布」ないし「偽計」に該当するということのようです。特捜部の意図としては、(1)ファンドによる買収、(2)ファンド・LDMとの間の株式交換、(3)LDMの株式分割、(4)ファンドによるLDM株式の売却、(5)ライブドアへの売却資金の還流という「錬金術」を問題視し、それを目的犯(目的犯についての説明は、toshiさんのライブドア捜査と罪刑法定主義というエントリをご覧ください。)としての立証につなげようという意図なのだろうと推察するところです。

戸惑いを感じるのは、(具体的手法を確認しないと一概にはいえないのですが)粉飾決算の嫌疑はさておき、個々の取引や開示自体をとらえたときに違法性を感じない、実は巷に結構ある取引なのではないか?という点です。投資ファンドは一般にオフバランスでかつ税務効率のよい媒体を利用され、特に法形式上独立性・中立性という部分が確保されることを意識します。その限りでプレスリリースなどでは当然のように別個の媒体として記載しますし、株式交換時の法定開示要件を充足している限り、担当弁護士であってもおそらくOKを出すのではないかと思うわけです。

その反面、業界は非常に狭い世界ですからどこかで役員の兼任があったり、投資ファンドの背後にいる投資家側としても監視はしないといけないわけですから、人的な面において「実質支配」とまではいえなくとも本当に独立しているの?と言われるとグレーな場合もありうると思います。実質支配という場合に、資金の供給割合でみるのか、人的側面でみるのか、投資委員会の構成でみるのか、例えば人的側面という場合に雇用関係で見るのか、金銭の授受の有無で見るのか、長年の友人関係や親族関係でみるのか、その判断は実に複雑なものとなるはずです。逆にいうと背後にいる投資家と何ら関係がない人間が投資ファンドに派遣されたり、投資家が投資ファンドに対して何らの決裁権を有しないスキームというのはさほど多くないわけで、これらを全部実質支配というのか、このあたりの問題がでてまいります。

もう一つ気になるポイントは、何をもって「風説の流布」「偽計」というのかという点です。本件では開示自体に虚偽情報は存在しないはずで、ある開示をする際に付随的に必要とされる開示がなされなかったこと(不開示)をもって「風説の流布」「偽計」ととらえているようです。理屈の上では開示と不開示が同時になされていはいるのですが、違法行為を構成しうるのは不開示にほかならないわけで、立件のためには不開示がまず構成要件に該当するという判断がなされる必要があります。注釈も何もありませんので調べられませんが、「風説の流布」は積極的作為を前提とした文言であり、この中に不作為を読み込むのは日本語としておかしいでしょう。「偽計」という用語が過去にどのように裁判例で使われてきたのか検討する必要はあるのですが、Hibiya_Attorneyさんがライブドアの強制捜査(続報)の中で否定的な意見を述べられていて直観的には私も同意見です。

47thさんが、なんで「風説の流布」なんだろう?というエントリの中で、日本版10b-5として証券取引法158条が機能する可能性を示唆されています。有価証券報告書等の法定開示、インサイダー取引規制による間接開示強制、証券取引所規則による開示強制に加え、Material Omission一般が罰せられる可能性があるということなんでしょうか?バスケット条項が従来からインサイダー取引規制に存在するとはいえ、これはあくまでも取引の規制ですから直接の開示要求と同じ効果は有しないはずで、当局はこれに加えて刑事罰もありうる風説の流布・偽計の中に開示義務を読み込んでいくのでしょうか?そして、どうして証券取引法157条ではないんでしょうか?157条は、「不正の手段、計画または技巧」(一号)、「誤解を生じさせないために必要な重要な事実の表示」の欠如(二号)を罰則とともに定めており、少なくとも第一号については過去に適用事例があるようです。

粉飾決算疑惑については意見を留保せざるを得ませんが、風説の流布という点に関しては従来多くの人がセーフだと思っていたところにいきなり刑事罰の可能性が示唆されたというニュアンスで事件をとらえています。
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by neon98 | 2006-01-19 08:13 | LEGAL(General)

"I have a dream" but who has this speech?
1月15日はキング牧師の誕生日を記念し、お休み(今年は日曜日なので月曜日が振替休日)である。Martin Luther King, Jr (Wikipedia)を知らない人はおそらくほとんどいないだろうし、かの有名なスピーチを知らない人も少ないだろう。
I have a dream that one day this nation will rise up and live out the true meaning of its creed・・・・
今日はロースクールでの著作権法の講義でのお話を思い出して書いている。d0042715_14181772.jpgEstates of Martin Luther King, Jr. Inc. v. CBS, Inc., 194 F.3d 1211 (11th Cir. 1999)は、I have a dreamのスピーチの場面を収録したドキュメンタリーをCBSが放映したのに対し、キング牧師の遺族らが著作権法違反で訴えたもの。事件そのものは、キング牧師が公衆の面前で演説をしたとしても著作権の放棄とはいえない(注:1909年著作権法体制のもとでは、著者は作成と同時にコモンロー上の著作権を取得し、General Publicationによりコモンローの権利を失うーしたがって、著者はGeneral Publicationまでに制定法上の要件を充足し、連邦著作権法上の権利を取得しないといけない)としたもので、キング牧師の遺族らに著作権の保護を認めているのだが、それでいいのか?というDiscussionがあった(判決全文を読んでいるわけではないので他の論点があるのかもしれないのは注意されたい。但し、Fair Useにあてはまるような事案ではなかった。)。

日本人だったら法令の解釈・あてはめから議論がなされるところ、最初の意見は「キング牧師のスピーチはアメリカの財産であってそれを自由に使えないのはおかしい」からはじまり、「いや、ドキュメンタリを作成する会社はそれで金儲けをしているのだから、著者に対してきちんと著作権の対価を払うべきだ」「皆が注目し、TV放映までされている場面でスピーチをしている以上、ライセンスを与えていると解釈すべきじゃないか」「この遺族らは親父の偉業をネタに飯食ってるだけで、何もしてないんだから保護している必要はない。親父の権威をけがしている。」・・・色んな意見がでるわでるわ。まともな意見から、ちょっとね・・・みたいな意見まで。Policy Considerationだけで終わってしまったこのケース分析でしたが、それだけでも議論が続けられる面白い場面でした。

Who should have the copyright of the speech?
Should the speech be treated as public domain?
Is there any framework that allows CBS to reproduce the part of speech?
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by neon98 | 2006-01-15 10:29 | LEGAL(General)

Law and Economicsとその限界
法と経済学の文献を読んでいると、発想の転換を迫られるというか、自分がこうあるべきとなんとなく思っているものの前提が覆されるときが多くて、とても面白いんですが、一方でその限界を感じることが多いわけです。

法と経済学の定義というのは知りませんので、私の中では、理論と実証研究との両方を指して法と経済学と呼んでいるんですが、理論は仮定がすんなり納得できるのかどうか、実証研究は無関係の要素を排除できるのかどうか、細かく考えていくとわりとある理論なり実証研究が有益である範囲がすごく狭くなる(適用範囲が狭い)ということがいえましょう。

それ以外に道徳というものをどう考えるのかという部分があって、経済学をベースに政策論として望ましいんだと主張をされたとしても、「だめなものはだめ!」という道徳の世界が残っているし、残っているべきなんだと思います。The Becker-Posner Blogの臓器売買についてのエントリ(Should the Purchase and Sale of Organs for Transplant Surgery be Permitted? BECKEROrgan Sales--Posner's Response to Comments)を読みながら漠然とそんなことを考えていました。冷静な反論もむろん可能な議論だと思うのですが、それ以前に道徳の問題として考える余地がない領域というものが存在するのではないか、と思うこの頃でした。
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by neon98 | 2006-01-12 03:23 | LEGAL(General)

ババヌキで終わらせないために
カネボウ粉飾決算の公判(Nikkei)で証拠調べが終了し、次回は論告・求刑の予定とされています。
帆足被告は、化粧品本部長だった1994年ごろから、繊維など不振部門の架空売り上げにかかわったと説明。社長就任後も粉飾を続けたことを「株主の判断を誤らせた」と謝罪する一方で、歴代の社長の実名を列挙し、自分だけの責任ではないと強調した。
彼の言い分はむろん罪を逃れる理由にはならないわけですが、同じ粉飾決算をしていても最終的にババを引いた人間のみが責任を問われている点については不公平だといえなくはないでしょう。

粉飾決算の事件において過去からの慣習で粉飾を行っているケースは結構あるように思います。過去からの積み重ねを知った時点で、それを公表し、決算を修正することが要求されるわけですが、この行為は実際には容易ではありません。倒産への引き金をひきかねない行為ですから、取引先・従業員すべてに影響を与えることが予想されます。とりあえず今期は過去の慣例に従い、利益がでたときに「ソフトランディング」をしようという誘惑もあるでしょう。

長銀・日債銀のケースでも思いましたが、この手のケースでは最後にババを引いたものが損をする構造になりがちです。捜査当局からすると、時効の問題、証拠の散逸の問題等で一定の限界があることは事実ですが、過去からの蓄積も含め、きちんと責任をとる構造になってほしいものだと思います。他の社長の責任を主張する彼の行為は日本人的には潔くないものとうつりがちですが、気持ちはわかるような気がします。
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by neon98 | 2006-01-11 10:09 | LEGAL(General)

振り上げた拳を下ろすにはーThe 3rd Day of Strike
本日で地下鉄・バスのストライキが3日目に突入しました。これらの交通機関がストップするとNew Yorkerの市民生活に著しい支障をきたすのですが、それにも関わらず、人々はこの状況を克服し、乗用車やタクシーに乗り合い、別の交通機関を利用し、なんとか職場までたどりついているように見えます。皆が市民生活に支障をきたす一方で労働組合側にも様々な圧力がかかっており、ストライキを維持するのは容易ではないように思います。なぜこのような異常な状況に陥ったのか、New York Timesの記事をもう少し丁寧に追いかけて考えてみたいと思います。

1. ストライキの経緯

まず、主要な争点は、新規雇用者の年金の満額受給開始年齢を55歳から62歳に引き上げるなどの年金改革にあります。当局側は先週16日金曜日のストライキ期限までに一部譲歩し、組合側に譲歩を迫ったものの、組合側は当局に1Billionドルの剰余金があることを理由として譲歩を拒否し、ストライキの期限を20日火曜日に設定しました。

公共機関の労働者のストライキは州法で禁止されており、既に13日の段階で、裁判所から労働者に対してストライキを禁止し、地下鉄・バスを運営するようにPreliminary Injunctionが発せられています。

当局側は、16日までの段階で、年金の満額受給開始年齢を62歳まで引き上げる一方で、受給資格を30年勤務から25年勤務に引き下げるなどの「最終提案」を行いました。年金改革は州立法府の法改正が必要な事項であり、当局が交渉により決定することができる事項ではないため、当局は労働組合側と協議のうえ当局・組合双方による法改正の請願を行うことを要求しています。これに対して組合側は法改正への請願は最終提案などというかたちで強制できるものではないと反発を強め、第一弾のストライキとして、19日月曜日、NY州の管轄にない(州法でストが禁止されていない)Queensのバスでストライキを開始しました。

当局は、スト開始直前に受給開始年齢を現状維持にすることを合意し、その代わり労働者の年金負担率を現行の2%から6%に増加させることを提案しています。また、今後3年間の賃上げについても一部譲歩を行いましたが、組合をこれを拒否し、20日火曜日には州法で禁止されたNYCityの地下鉄・バスにおいてもストライキを開始しました。

このストライキは親組合からは支持されず、組合内部でも全員一致で決議がされたわけではありません。組合は一日につき1Millionドルの罰金を科せられ、NY州知事、NY市長からも批判が相次ぎ、一時は組合指導者の収監を裁判所が示唆するほどでした(これにはNY市長からの反対があり、実行されていません。)。
組合側は罰金が支払能力を超えていることを理由に平然とした構えを見せていますが、組合員も一枚岩ではない中で持ちこたえるのは苦しいでしょう。

2. 振り上げた拳を下ろすには

労働組合との交渉も、労働組合側での交渉も代理人として行ったことがあるのですが、組合指導者の面子を考慮してあげないと組合としての意思決定ができないという側面が多分にあります。

当局側からは既に年金満額支給開始年齢の引き上げという提案は撤回されており、これ以上大きな提案は望みにくいのではないかと推察します。違法なストに対して譲歩をする枠組みをつくると今後に懸念を残すことになりますから、ストを契機として当局から譲歩をするというのは難しいのではないでしょうか。

他方、労働組合としても一度開始したストを成果なく終わらせることは困難です。既に個々の労働者は賃金を、組合は罰金ならびに世論の批判を受け、多くのものを犠牲にしています。違法なストであることは非難されるべきでしょうけど、立法でしか変更できない年金制度を組合に押し付けるという交渉スタイルに反発を覚える理屈はよく理解できるところです。成果なきストとなれば、指導者の組合での立場がたたないことから拳を振り下ろすのが難しいのでしょう。

米国の文化に「振り上げた拳を下ろすだけの理由」というものがあてはまるのかどうかはわかりませんが、このまま進んでもお互いにデッドロックのままで交渉に勝者は存在しません。拳を下ろすだけの理由として、ここは仲介者に頑張っていただき、「当局の提案には依然反対であり、協議を継続していくが、NY市民の皆様に迷惑をかけることは組合としても本位ではない。仲介者に労をとってもらったことや、当局が一部提案を撤回したことをも考慮して、ストライキは一時停止する。」と言わせるための大義名分を与えることが必要ではないかと思います。

本日22日木曜日、州の仲介者は労働者がストライキを停止し、職に戻る枠組みを暫定的に提案したそうです。組合の最終意思決定がどうなるかわかりませんが、これを逃してしまうと降り時を失うことになるように思います。仲介者と組合幹部の英断に期待したいものです。

<参考記事>
No Timetable Is Announced on Resumption of Service
Tough Stance, Tougher Fines: Union Leader Is in a Corner
Transit Union Calls for Strike in Divided Vote
Leaders of Both Sides at the Table in Marathon N.Y. Transit Talks
Changing Transit Workers' Pension Plan Might Pose Dilemma for Legislature
Transit Union Tries New Tack on Pensions
New Transit Talks Set; Strike Is Put Off to Tuesday
Preliminary Injunction
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by neon98 | 2005-12-23 02:13 | LEGAL(General)

PrivilegeとInternal Investigation
Practising Law Instituteで、The Attorney Client Privilege and Internal Investigationsというセミナーがあったので参加してきました。不祥事発見の際の内部調査に関しては以前からずっと興味があったので、企業側の弁護士として(1)企業の刑事罰・行政罰を回避・軽減するためにどう行動すべきか、(2)Inhouse/Outside Counselそれぞれの立場で誰に対して報告すべきか、(3)民事訴訟でのPrivilegeの確保と捜査協力、(4)Conflictと弁護士倫理などの問題について楽しくきかせていただきました。Hypoは概ねこんな感じです。

1. PはA社のCEO兼議長である。ライバルのB社の社長であるQから、A社従業員がB社のWEBサイトにハッキングし、企業秘密を盗み出していると通告され、刑事告発および民事訴訟を提起することを示唆された。PはすぐさまInhouseのIに相談し、PとIは内部調査を行うことを決定した。誰が内部調査を行うべきか。

2. PとIは最終的にOutside CounselであるOに内部調査を依頼することにした。Oは「私の調査範囲はどこまでで、予算や調査対象資料などはどうなるのか」と聞いてきた。また、報告は誰に対してするのか、書面によるべきか口頭によるべきか。

3. Oは第一次調査の結果、従業員Bが不祥事を働いている可能性が高いと判断した。また、従業員Bの部署の部長Cもまた不正を知りつつ、何もしなかったという疑いを抱いていた。OがまずCにインタビューをしようとした際、「あなたは私の弁護士ですか?私自身に弁護士が必要ですか?必要だとしたら有能な人を紹介してもらえませんか?」と聞いてきた。

4. OはさらにBに対してインタビューを試みたが、Bは弁護士を雇いたいというので後日にインタビューを延期することにした。Bは弁護士と相談した結果、インタビューに協力しないと通告してきた。A社はBを解雇できるか?〔設問を一部変更〕

5. OはA社に詳細な報告書と簡易な報告書を提出した。A社は捜査機関に簡易な報告書を提出したが、検察官からは詳細なものを見せるように言われた。どうするか。Privilegeの放棄との関係を考慮せよ。

面白かったのは、内部調査を行う法律事務所自体がAdversed Partyにあたり、開示がWaiver of Privilegeにあたると解釈する余地があるとして、不祥事の内部調査を行う際に、(1)特別委員会を設置し、(2)委員会がPrivileged書面を読む法律事務所とPrivileged書面以外の内部調査を行う法律事務所を分けて内部調査を依頼(調査事務所にはPrivileged書面を開示しない)し、(3)委員会が両方の調査報告書の大筋に齟齬がないか確認(齟齬がなければPrivileged書面は結論を左右しないから、調査事務所の調査に問題はないという理屈)し、(4)さらに、事件全体を扱う法律事務所は別に雇うということが実際行われたと聞いたこと。これにはさすがのアメリカ人弁護士も皆そこまでやるか?と思ったらしい。
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by neon98 | 2005-12-22 07:34 | LEGAL(General)

判決の短さと裁判官の独立
Toshiさんが会見予定についてお知らせくださったのはこれだったようで、井上薫判事が再任拒否の撤回を要求(Asahi.com)されたようです。この方とは面識もなく、判決文を直接読んだ経験も(記憶の限りでは)なく、裁判官としての資格うんぬんを議論するつもりはありません。
会見で井上判事は「所長の指図は裁判干渉だ。憲法が定める裁判官の独立を侵害する。再任拒否のまま終われば、裁判干渉が公認されたという前例が裁判史上に残る」とし、「裁判官の独立も、国民の基本的人権も、絵に描いた餅になる」と話した。
かつての寺西判事補のように政治活動の自由を理由とした場合に裁判官の独立が議論になることはよくあったのですが、判決の短さというとどうなのでしょうか。

憲法上の裁判官の独立が三権分立の重要な要素として機能しなければならないことは当然としても、裁判官としての基本的能力まで再任拒否事由に当たらないという意見は少ないと思います。当事者の納得を得るために判決理由を当事者に対してわかりやすく説明すること、判決の法形成機能や上訴での反論機会を与えるために裁判官の思考過程を少なくとも専門家にわかるように説明することまでは裁判官に必要不可欠な能力であると思います。私も弁護士として裁判官の資質に対するアンケートに答えたことがありますが、おそらくは弁護士による裁判官の評価も再任の判断に利用されているはずです(弁護士による評価がすごく重視されているとは思いませんが。)。所長が裁判に介入しているとはいえると思いますが、どんな裁判を行っても干渉されるべきではないとまでは思いません。

問題は再任拒否の過程が透明性を欠いたり、ご本人に争う手段が残されているかどうかというプロセスの問題であるように思います。実際はこのあたりに批判があるのかもしれませんが。
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by neon98 | 2005-12-22 05:31 | LEGAL(General)

外国税額控除についての最高裁判決
外国税額控除についての最高裁判決が注目を集めている。Tax Lawyerではないのでやや抽象論のコメントに終わってしまうけれど、この判決の射程をどのようにとらえるのがいいのか、困惑してしまう。
本件取引は,全体としてみれば,本来は外国法人が負担すべき外国法人税について我が国の銀行である被上告人が対価を得て引き受け,その負担を自己の外国税額控除の余裕枠を利用して国内で納付すべき法人税額を減らすことによって免れ,最終的に利益を得ようとするものであるということができる。これは,我が国の外国税額控除制度をその本来の趣旨目的から著しく逸脱する態様で利用して納税を免れ,我が国において納付されるべき法人税額を減少させた上,この免れた税額を原資とする利益を取引関係者が享受するために,取引自体によっては外国法人税を負担すれば損失が生ずるだけであるという本件取引をあえて行うというものであって,我が国ひいては我が国の納税者の負担の下に取引関係者の利益を図るものというほかない。そうすると,本件取引に基づいて生じた所得に対する外国法人税を法人税法69条の定める外国税額控除の対象とすることは,外国税額控除制度を濫用するものであり,さらには,税負担の公平を著しく害するものとして許されないというべきである。
企業がコストとして租税を軽減するための工夫をすること自体は正当な目的というべきで、問題は租税法の文言・立法趣旨からして「著しく逸脱」するものかどうかという点にあるはずだ。外国税額控除という制度が最高裁のいうように、「同一の所得に対する国際的二重課税を排斥し,かつ,事業活動に対する税制の中立性を確保しようとする政策目的に基づく制度」と位置づけるのであれば、もっとも租税が安くなる手法を選択し、法形式と実態が合致した取引を実行し、現実に外国において租税を負担している以上は容易にその法形式を否定すべきではないのではあるまいか。私には高裁での以下の要旨の方が説得的なように思われる。
(1) 本件取引の経済的目的は,C社及びB社にとっては,C社からB社へより低いコストで資金を移動させるため,被上告人を介することにより,その外国税額控除の余裕枠を利用してクック諸島における源泉税の負担を軽減することにあり,被上告人にとっては,外国税額控除の余裕枠を提供し,利得を得ることにあるのである。このような経済的目的に基づいて当事者の選択した法律関係が真実の法律関係ではないとして,本件取引を仮装行為であるということはできない。
 (2) 被上告人は,金融機関の業務の一環として,B社への投資の総合的コストを低下させたいというC社の意図を認識した上で,自らの外国税額控除の余裕枠を利用して,よりコストの低い金融を提供し,その対価を得る取引を行ったものと解することができ,これが事業目的のない不自然な取引であると断ずることはできない。したがって,本件取引が外国税額控除の制度を濫用したものであるということはできない。
租税という分野においては比較的容易に実質論が重視されやすいのだろうが、国益という観点からみて税収のみを考慮すれば足りるという問題ではないように思う。節税以外に重要な取引上の目的がみあたらない場合に法形式が無視されやすいということはよく言われるけれども、そのことのみをもって法形式が無視されるとした場合に法の予見可能性という部分は著しく損なわれることになる。

本件においては、手数料<外国税額という構図にあり、不自然な取引であるという認定がなされたのだろうか。この判決の射程は広く解釈されるべきではないと思う。金融の世界におけるコストには当然租税も含むと考えるべきであり、「租税回避目的」というキーワードのみで判断がなされないように慎重な対応をしていただきたい。
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by neon98 | 2005-12-21 04:33 | LEGAL(General)

司法のしゃべりすぎ?
タクシー全面禁煙望ましいと裁判所が指摘(Asahi.com)したという記事。タクシーの全面禁煙には賛成なのですが、裁判所が言うべきことはどうかは議論になりそうだ。

判決文が短いとして再任拒否が問題になった井上薫裁判官(町村教授のBlog参照)の著作に司法のしゃべりすぎという有名な本がある。判決文が短いのがどうかという部分は当事者に理由を理解させるに足りないほど短いのかどうか具体的に考えないとコメントのしようがないのだが、結論に影響しない部分で蛇足的に意見を述べるのは必要ではないという意見には基本的には賛成している。もっとも法の予測可能性を高めるという意味合いで裁判所の適用する法的思考過程を説明することは非常に有益と思っているので、結論に直結しない部分であっても説明をすべきだとは思うので、完全に同意しているわけではないのだが。

他方で、ケースブックに出てくるアメリカの判決文を読んでいると、皆好き放題書いていてびっくりするわけで、それと比較すれば多少の個人意見を入れることくらいいいじゃないかと思わなくもない。
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by neon98 | 2005-12-21 00:34 | LEGAL(General)

消費者団体訴訟制度のパブリックコメント
今日はもう一つエントリ。消費者契約法の一部を改正する法律案(仮称)の骨子
(「消費者団体訴訟制度」の導入について)に対する御意見募集
ということで、内閣府からパブリックコメントのお知らせ。大規模の消費者を対象とした消費者被害が多発していることを受け、適格消費者団体による訴訟提起制度を制定し、消費者保護法規の実効性を高めようとする試みである。大きな論点としては、(1)適格消費者団体の範囲、(2)団体に差止請求権のみを認めるのか、損害賠償も認めるのか、(3)消費者保護法規として消費者契約法違反にとどめるのか、それ以外の消費者保護法規も含めるのか、(4)重複訴訟などをどう防止していくのかなどである。

国民生活審議会の報告書(PDF)日本経団連の立場日弁連の立場(PDF)を比較してもらえれば論点がわかるようになっている。

恥ずかしいがこれまでの議論の過程をよく知らないので詳細なコメントは控える。一つだけコメントするとすれば、適切なインセンティブが与えられない制度はうまく機能しないということ。善意や奉仕、超人的な努力といった類のものに支えられているものがたくさんあることは自覚しているけれども、制度全体としてみたときにこういったものは特殊なものであり、個人を抽象化した制度論としてはうまくいかない。

差止め制度については既に被害を受けた個人が適切なインセンティブを有しないことから個人以外の誰かが行うことは適切なのだろうが、消費者団体というかたちが適切なのだろうか。政府は市場原理という理由により政府ではなく、第三者機関が責任を有するものとしているが、どういう市場原理を想定しているのだろうか。運営者、財源等により団体に与えられるインセンティブが異なってくるけれど、差止めのみを行う団体が持つインセンティブとして何があるのか、聞いてみたい。

損害賠償請求権を当事者とは別個の団体に強制的に付与となると制度設計としてはゆきすぎで、最低限被害者の意思選択が認められたうえで、誰がどのように訴訟遂行していくのかという問題になる。この団体に損害賠償請求を認めないことは一つの合理的な考えではあると思うが、零細な被害者が実効的に訴訟提起できる制度は整備されてもいいんじゃないだろうか。

一歩前進とも評価できるけど、政府の役割放棄?ともとれますが…。市場万能主義と言われるアメリカの連邦政府の方が消費者保護の動きは活発そうにみえます。
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by neon98 | 2005-12-17 06:17 | LEGAL(General)

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