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コンプライアンスの制度論v.運用論
中嶋 忠三郎『西武王国ーその光と影ー側近No.1が語る狂気と野望の実際(サンデー社)という本をたまたまブックオフで発見し、安かったので購入しました。安かったのでと断った程度ですので、是非お薦めというわけではありませんが、なんとなくそれを読んでいて思ったことを書いてみようという気になりました。
西武鉄道の有価証券報告書訂正問題など、相次ぐ不祥事に揺れる西武グループ。その頂点に君臨してきた堤康次郎氏と義明氏父子の側近として40年以上仕えた著者が、その歴史と内幕を赤裸々に綴った書。著者は1998年に他界している。本書は今から15年前、90年に上梓されたが、発売直前になって西武側により全冊買い取り回収され世に出ることはなかったという、曰く付きの書である。
著者は、元裁判官で堤康次郎・義明両氏の側近社内弁護士として、西武グループの中心にいた人物のようで、堤康次郎氏に対する畏敬の念をあらわし、西武王国全社員に早々の精神を喚起させることを目的とした本として本書を書かれています。本書では、初期の西武グループの成長に伴う色々な事件を回顧し、堤康次郎氏の対応や著者自身の考えなどを述べておられ、事実を客観的に記載するというよりは社是あるいは草創の精神なるものを強調したものになっています。関係者に対する悪意をさほど感じさせない点で、いわゆる告発本とは少し色彩の異なる本であり、また客観的事実を中心とした記載になっていない(事件の当事者としての回顧録である)点で資料的価値はさほどないかもしれません。守秘義務はどうしたのかとか、色々と問題はあるはずのですが、そのあたりはまあ気にせずに読んでみました。

率直な感想は、(1)社内弁護士の立場の人においてすら、牧歌的なコンプライアンス意識を感じさせる時代背景だったのだろうなあ、(2)上場廃止という問題は起こるべくして起こったのだなあという2点です。彼の文章からはコンプライアンスなる意識はあまり感じさせません(選挙違反事件の感想は「担当者がまじめすぎた」「うまくやれなかった」など)し、どちらかというと法律をご存知の経営者としての経営論として読むのが正しいのかと思います。西武グループの成長の経緯、内部での意思決定プロセス(取締役会なるものが存在した形跡がない)、オーナー企業としての実態、親族間の感情などに関する記述を読んでみると、「昔ながらのやり方でずっと昔ながらにやってきて、起こるべくして起こった事件」という感じがしてなりません。

個人的には、ライブドア事件がどのような反応を引き起こすのか、いささか不安を持って眺めています。エンロンを契機としてSOX法という反応に関しては揺り戻しがあるように思っていますし、過剰反応は禁物だと思うのですが、制度改正という議論がなされるべき部分があるのかもしれません。

何か企業不祥事が発生した場合に、腐ったリンゴとしての一事例にすぎないのか、制度的手当てが必要なのかという議論はいつも起こりうるテーマで、いつも興味深く聞いているところです。私の本質的な法制度に対する見方として、人間のインセンティブに反する法は効果が薄いというものがあり、制度論としては当事者に高いモラル付けを要求するシステムよりは当事者のインセンティブ付けを重視したいところです。

割り切った言い方をしてしまえば、事前の規制として幾らCorporate Governanceモデルを充実させようとしても、所詮運用するのは人間のこと、何か問題が常に生じ続けるわけですから、事後の規制としてのサンクションをもっと厳しくしてしまうアプローチだって十分説得性があると思わないでもありません(単純すぎる構図ですけど)。制度をいじって社外取締役を事実上義務化するという方向付けよりも法のEnforcementを強めるべく、予算や人員配置をいじることの方が実効的なのかもしれません。

当事者のインセンティブに合致しないシステムであれば、可能な限り合致するように制度的手当てをするべきだと思いますが、企業不祥事のたびに叫ばれる制度改正論に対しては慎重に反応していく必要があるのではないかと考えています。あくまでも一般論としてのエントリにすぎませんので、その点はよろしくお願いします。
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by neon98 | 2006-01-22 15:33 | Corporate Governance

Blogにおける文化の衝突
徘徊先のいとう先生のBlog経由でトラックバックをめぐる4つの文化圏の文化衝突――「言及なしトラックバック」はなぜ問題になるのかという記事を発見しました。ライブドアブログが、1月10日から「トラックバック元の記事にトラックバック先のブログURLが含まれていない場合、受付を拒否する仕組みを導入」すると発表したことを受けてのトラックバック文化の衝突について言及した記事です。インターネットの世界は(1)法令(2)システム上の制約(3)マナーという3つのレベルで機能していて非常に面白い世界だなあと常々興味をおぼえているところで、これを契機としてまずは自分がどのように考えてリンクなりトラックバックなりをしているのかを分析しようと思います。

ここでは、トラックバックを巡る4つの文化圏ということで、(1)内容の関連性が必要か、(2)相手へのリンクが必要かという2つの座標軸で文化圏を分けて(詳細は直接リンク先をご覧いください。)おられます。まずは、私がどの立ち位置にあるのか、考えてみることにします。

私の感覚では(1)TBに内容の関連性は必要、(2)相手先へのリンクは原則するが内容の関連性があればあまり厳密に必要性を感じないというものです。基本的には「言及リンク文化圏」に属しつつも片足の親指だけを「関連仲間文化圏」に突っ込んでいるという感じでしょうか。

1. トラックバックにおける機能とマナー

トラックバックはあるエントリの筆者および読者に対して関連するエントリを書きましたからご参考までにご覧くださいねと連絡をするものであり、内容の関連性は当然ながら必要と思っているところです。ただ、関連するレベルとしては一応相手先のエントリに言及したものの、メインテーマとして別のテーマに引っ張ってしまった場合は一応トラックバックをするかどうか悩みどころです。相手先の特性や相手先との関係をみて考えることにするでしょうね。

トラックバックは一方的なものであり、相手先やその読者の方々に対してご覧くださいとお願いするものだという感覚が根っこにあるのだと思います。ですから、著名ブログにトラックバックするときは高度の関連性がないとわざわざTBするのも迷惑だなあと思ってしまったりしますし、個人的に知っている方だと多少関係あるけどまあいいかと思ったり、私は運用を変えているように思います。例えば、このエントリにしても、明らかに元記事と関連性はあると思いますが、敢えてTBを打ったりしません。有名BlogはTBするのにとまどいますし、英語のBlogにTB打ってもしょうがないので当然打ちません。

2. リンクにおける機能とマナー

リンクに関しての著作権の取扱いは色々な考え方があるように思いますが、リンクのみで著作権法違反になることはないと思っています。私は承諾不要ということでいいと思うのですが、マナーとしてはリンクしたことを知らせる場合もあれば、そうでない場合もあります。

リンクはソースの明示に加え、私のブログの読者に対する便宜の提供という意味があるように思います。他人の功績を自分のもののように自慢することはPlagiarism(盗作)にほかならないと思いますのでリンクなり、出展の表示はおぼえている限り一応するようにしているつもりです(論文ほど厳密にはしませんけど)。リンクそのものを嫌がられる方針の方もおられるかもしれませんが、一応WEB上で公開されているものですし、いちいちリンクの承諾をとることはしていません。

3. マナーとは自分を守り、相手を思いやるもの

私のような考え方が必ずしも多数とは限りませんし、私の考え方が一貫しているとも思いません。所詮趣味でのブログですから自分と相手が気持ちよく過ごせればいいやくらいの気持ちでしています。私がトラックバックするときは控えめにしますが、頂くトラックバックは基本的に歓迎しています。わりと関連性はゆるやかに見てますし、アダルトものや特に関連性が薄いものでない限りはあまり削除したりしてません。自分は保守的にマナーを運用し、相手からのものはゆるやかに運用することで、お互いに気分よくすごしましょうという以上のことは考えてないのかもしれません。

(理由を示すことなく、独断と偏見で、コメントやトラックバックを削除する権利は留保してますのでその点はご了承くださいね。WEB上の日記に近い位置づけなので自分の日記は自分で管理できると思ってます。)

マナーだけでは自己防衛できないので、Blog管理者がTBを管理できるようにライブドア方式のTB制限策を入れることには賛成です。人の考えはマチマチでしょうから、管理者が選択できるようにしておけばいいのでしょうね。

(追記)Exciteも同様のサービスを開始しており、導入を検討中です。TBスパムを削除するのが面倒なので検討中なのですが、エキサイト同士のTBには拒否機能がないという中途半端な取り組みなので、うーんと思っているところです。と書いてたら早速TBスパムが・・・。渋谷で働く社長さんところは変なサイトをあまり熱心に取り締まってないですね。
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by neon98 | 2006-01-21 02:11 | よしなしごと

証券取引法の推薦書
eonumaさんから初心者向けの証券取引法の推薦書を紹介してほしいというご依頼がありました。
初心者にとって、最初のつかみとして(余りに細かい条文に立ち入る前に)、お勧めの本があればご推薦いただきたいです。証券取引法読本 有斐閣 河本一郎、あるいは、アメリカ証券取引法 アメリカ法ベーシックス 黒沼悦郎など、どうでしょうか?
日本の法律書は定義・趣旨・条文・学説の説明が中心に少し判例が紹介されているものが中心で、ケースブックのようなものが少ないので選択がやや難しい面があります。可能であれば背景にある問題点・立法趣旨なども一緒にとらえて根幹にある制度趣旨だけを大枠としてとらえたいところです。例えば、公開買付規制からすると(1)適用範囲の大枠の説明(2)制度趣旨(3)批判や比較法制(4)TostNetの扱いなどをざくっと説明し、特別関係者の定義などは問題になったときに条文を必死で読めばいいのだから思い切って削るとか注に落とすとか、有価証券届出書の提出義務の有無なども細かいところは削るとかの配慮があってもいいと思うのですが、ピッタリと思うほどの本は私は知りません。

とりあえず思いつく初心者向けの本をあげておきます。ここにはわりと証券取引法にも詳しい方々がいらっしゃるので、(1)初心者向け(2)読み物的なもの(3)大枠をとらえるのに有用なものくらいの指定でどなたかが教えてくださるかもしれません(なんて他人にふったりして^^)。

1. 日本法
近藤光男ほか『証券取引法入門』(商事法務)が制度趣旨などを重視していてお気に入りなのですが、やや古いのは気になります。
河本 一郎ほか『証券取引法読本』(有斐閣)もかなりお薦めです。近藤先生の本と比較して気に入った方を手に取られるのが無難かと思います。
堀口亘『ハンドブック証券取引法』(勁草書房)も候補の一つではあります。私自身はすごい好きな本ではないですが、まあお好みで。

2. 米国法
黒沼悦郎『アメリカ証券取引法 アメリカ法ベーシックス』(弘文堂)が一番でしょうね。代替案として、デービッド・L. ラトナーほか著(神崎克郎ほか訳)『最新 米国証券規制法概説』(商事法務)もわりと好きです。これも好みがあるでしょうが、翻訳本は基本的に読みにくさで難点があるかもしれません。

とりあえず私の好みであげておきましたが、ひょっとしたらビジネス本の分類でもう少しピッタリの本があるかもしれませんし、色々と手にとられて確認してください。ご参考まで。
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by neon98 | 2006-01-20 13:49 | 読書・映画等

今日ツボにはまったもの
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by neon98 | 2006-01-20 12:27 | Photo

Securities Regulation履修の薦め
証券取引法といえば、法律実務家ですら頭を抱える難解な条文の集合体なわけで、業務で必要な場合に仕方がなく条文と注釈とを並べてうーんと唸るだけであまり好きな分野ではなかったのですが、それにもかかわらず、LLMで履修選択してよかったなあと思うのがSecurities Regulationです。比較法的視野を持つことにより日本法をよりよく理解できるようになるというのはほぼ全ての法分野についていえることなのですが、証券取引法の場合は米国法との類似性が強いためにこのことはさらにいえるでしょう。

とはいえ、米国証券法もすさまじい数の条文の集合体であることに代わりはなく、「私募」とは・・・、「証券」とは・・・なんて感じで教えていたら、すぐに飽きちゃったに違いありません。こちらのロースクールに来ていいなあと思った教え方が機能を中心として教える方法です。具体的にいうと、
(1)投資家間の情報の格差がどのような問題を引き起こすのか、それは経済的に評価してどうなのか。
(2)アナリストはどのような業務を行い、利益相反と言われる問題は何なのか。Regulation FDはそれにどのように対処しているのか。
(3)インサイダー取引はそもそも悪いことなのか。判例はどのように変遷してきたのか。
(4)公募の際に引受証券会社、会計士、弁護士の果たす役割は何か。
(5)情報開示のコストは何か。
等の問題を現実の事例を敷衍しながら判例・条文を確認していくと、非常に面白いですし、ようやく難解な日本の証券取引法の条項の趣旨なりが理解できてくるわけです。

証券取引法は司法試験受験科目ではもちろんありませんでしたし、法学部で選択することもなかった私としては、OJTで勉強するほかなかったわけですが、体系的・機能的・有機的に証券取引法を理解するには米国法を通じて学ぶ方法が非常に有益でした。極めて実務的にFilingの中身だけをどんどん見ていくという講義もあるようですので、全ての講義で大きな視座を与えてくれるわけではないと思いますし、根本的には教授との愛称だと思いますが、個人的にはLLMで一番履修選択してよかったなあと思える科目の一つではあります。

でも日本に帰国しても証券取引法ロイヤーにはならないだろうし、なれないと思いますが・・・。
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by neon98 | 2006-01-20 06:13 | Law School

教養のありかた
立花隆の東大生はバカになったか―知的亡国論+現代教養論という本を読み終えた。一部東大を他大学と比較して論述する箇所はあるものの、基本的には全ての大学に共通するものである。(1)あの東大ですら問題があるという論理、(2)ショッキングなタイトル、(3)立花隆が個人的に東大で教えた経験から東大が選択されただけで、東大のみを批判することが目的とは思われない。東大関係者にはカチンと来る記載があるやもしれないが、一読を薦めたい。

筆者の主張は、最近の大学生の基礎学力の低下を契機として考えた教養重視の教育改革論なので、我が身に照らして素直に共感する部分と、「最近の若者は・・・」という年寄りの愚痴と思える部分と両方あるのだが、実際教養の必要性というのは常々感じるところである(当たり前か)。

大学の教養課程で例えば文学を選択すると正岡子規の一生について延々と講義を続けられ、何が面白いものだと当時は思ったから出席しなかったし、今でも絶対に出席しないだろうけれど、役に立つかどうかということではなく、勉強すること自体はいいことというものはあるものだ。

実学と理学(知識学)という分類では法学は実学に入れられてしまうのだが、広く法学という場合に実学というよりは理学に近いものも含まれている。例えば、「国際法は法か」という多分に理念的な思索は一銭の役にも立たないけれど、それを考えることで体系的な知識が身についたりすることもあるだろう。また、物理学・地質学・化学・生物学・医学・・・あらゆる絡みで法律問題が発生することは当然であり、専門知識とまでは言わなくてもお客さんの話す用語くらいはわからないと困る場合も多い。仕事を離れても、特に留学に来てからは自分の国のことを、会話相手の国の事情と比較しながら説明したりする機会が多く、教養の無さを実感することも多い。

何だって勉強する以上は面白いと思ってやった方がいいし、わかるようになれば面白いものなのだろう。教養なんてものは人がどのように生きてきたかを示すもので、一朝一夕で身につくものではないのだから、何が役立つとかあまり考えずに面白いと思うことは楽しんで勉強すればいいのではないかと思うようになった(とはいえ、本を読む時間は有限なのである程度選択はせざるを得ないのだが。)。

ただ、教養があるとかないとかいう表現は多分に主観的である。それゆえ、違う世代の方から受ける無教養との謗りは敢えて反論はせず、話半分に聞き捨てることにしている。彼らにとって教養だと思われるものと、我々の世代にとって教養とされるものは当然違うのであり、彼らの思うところの教養スタンダードを充足することは私にとっての課題にはならないのだ。なお、この本では日本の大学と欧州の大学の歴史がすごくわかりやすく(多分にわかりやすすぎる点は問題なのだが)説明がされているので、大学の歴史紹介として読んでもいいと思う。立花隆という人は強引な論理展開に若干抵抗があって、あまり好きになれなかったのだけれど、この本はあまり抵抗なく読めた。
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by neon98 | 2006-01-20 04:48 | 読書・映画等

ライブドア問題-風説の流布・偽計ですか?-
風邪に伴う発熱で体もだるいし、既に著名な方々が色々と書かれているところだし、マスコミ情報はよくわかんないし、無視を決めこもうと思っていたのですが、問題の重要性に鑑みてやはり書いておくことにします。

日本のマスコミ(海外の傾向は知りませんが、敢えてこういう言い方をします。)は何か問題視されると一つの傾向でしか書かず、「袋叩き状態」にしてしまう傾向がおおいにあると思っていて、書かれる側に対する悪意を感じるというレベルの問題だけではなく、社会に対して偏見を撒き散らすというレベルの問題でおおいに問題であると思うところです。例えば、毎日ニュースは、
ライブドア関係者は特捜部の任意聴取に対し「マネーライフを事業に活用する計画はなく、資金調達の手段だった」という趣旨の説明をしているという。
という書き方をしているのですが、買収により株式総額を高めて資金調達をすることだって別におかしな話ではないわけで、それを偽計スキームの動機ととらえるが如く引用するのはフェアではありません。社会的制裁を与える道具としてではなく、事実を伝えるためにツールを使っていただきたいものです。

とはいえ、私を含め、多くの方々にはマスコミ報道を通じてしか事実を知る手段はありませんので、報道されている中での被疑事実らしきものを拾うことにします。ざっとWEB上でのニュースを見る限り、被疑事実は(1)マネーライフ社「買収」に伴う風説の流布・偽計、(2)ロイヤル信販・キューズ・ネット「買収」に伴う風説の流布・偽計、(3)ライブドア本体およびバリュークリックジャパンの粉飾決算とに区分されるように思います。(3)のうちライブドア本体の粉飾決算容疑については47thさんがライブドア本体(単体)粉飾疑惑の気になるところというエントリをされていて、具体的な手口が判明しない以上あまり付け加えることもないわけですが、(1)および(2)の問題はたくさんの問題点を備えているように思います。(1)と(2)は当事者こそ違いますが、同じ手法ですので、上記リンクの毎日ニュースで説明されている方法を引用します。
関係者によると、ライブドアが実質支配する「VLMA2号投資事業組合」は04年6月、マネーライフの全株式を取得して買収。同年10月25日、ライブドアの関連会社「ライブドアマーケティング」(LDM、当時バリュークリックジャパン)が、既に実質ライブドアの傘下だったマネーライフを「子会社化する」と虚偽の発表をした。これに伴い、同組合はLDMとの間で、マネーライフ株とLDM株を1対1で交換する契約を締結。LDM側は株式交換に向け、1600株を発行した。(中略)LDMは04年11月、自社株を100分割すると発表して株価は高騰。同組合が株式交換で得たLDM株の総額は、当初の約2億8000万円が一時44億円余まで膨れ上がった。05年2月になって、同組合は8億円余でLDM株を海外ファンドに売却。その後、スイスの銀行や別のファンドなど複雑な経路をたどり、売買手数料などが差し引かれた約6億6000万円がライブドア本体に還流したという。
要するに既に実質支配下にあるファンドから子会社であるLDMに株式保有者が移転しただけなのに当該事実を隠したまま、「子会社化」するという公表をしたことが「風説の流布」ないし「偽計」に該当するということのようです。特捜部の意図としては、(1)ファンドによる買収、(2)ファンド・LDMとの間の株式交換、(3)LDMの株式分割、(4)ファンドによるLDM株式の売却、(5)ライブドアへの売却資金の還流という「錬金術」を問題視し、それを目的犯(目的犯についての説明は、toshiさんのライブドア捜査と罪刑法定主義というエントリをご覧ください。)としての立証につなげようという意図なのだろうと推察するところです。

戸惑いを感じるのは、(具体的手法を確認しないと一概にはいえないのですが)粉飾決算の嫌疑はさておき、個々の取引や開示自体をとらえたときに違法性を感じない、実は巷に結構ある取引なのではないか?という点です。投資ファンドは一般にオフバランスでかつ税務効率のよい媒体を利用され、特に法形式上独立性・中立性という部分が確保されることを意識します。その限りでプレスリリースなどでは当然のように別個の媒体として記載しますし、株式交換時の法定開示要件を充足している限り、担当弁護士であってもおそらくOKを出すのではないかと思うわけです。

その反面、業界は非常に狭い世界ですからどこかで役員の兼任があったり、投資ファンドの背後にいる投資家側としても監視はしないといけないわけですから、人的な面において「実質支配」とまではいえなくとも本当に独立しているの?と言われるとグレーな場合もありうると思います。実質支配という場合に、資金の供給割合でみるのか、人的側面でみるのか、投資委員会の構成でみるのか、例えば人的側面という場合に雇用関係で見るのか、金銭の授受の有無で見るのか、長年の友人関係や親族関係でみるのか、その判断は実に複雑なものとなるはずです。逆にいうと背後にいる投資家と何ら関係がない人間が投資ファンドに派遣されたり、投資家が投資ファンドに対して何らの決裁権を有しないスキームというのはさほど多くないわけで、これらを全部実質支配というのか、このあたりの問題がでてまいります。

もう一つ気になるポイントは、何をもって「風説の流布」「偽計」というのかという点です。本件では開示自体に虚偽情報は存在しないはずで、ある開示をする際に付随的に必要とされる開示がなされなかったこと(不開示)をもって「風説の流布」「偽計」ととらえているようです。理屈の上では開示と不開示が同時になされていはいるのですが、違法行為を構成しうるのは不開示にほかならないわけで、立件のためには不開示がまず構成要件に該当するという判断がなされる必要があります。注釈も何もありませんので調べられませんが、「風説の流布」は積極的作為を前提とした文言であり、この中に不作為を読み込むのは日本語としておかしいでしょう。「偽計」という用語が過去にどのように裁判例で使われてきたのか検討する必要はあるのですが、Hibiya_Attorneyさんがライブドアの強制捜査(続報)の中で否定的な意見を述べられていて直観的には私も同意見です。

47thさんが、なんで「風説の流布」なんだろう?というエントリの中で、日本版10b-5として証券取引法158条が機能する可能性を示唆されています。有価証券報告書等の法定開示、インサイダー取引規制による間接開示強制、証券取引所規則による開示強制に加え、Material Omission一般が罰せられる可能性があるということなんでしょうか?バスケット条項が従来からインサイダー取引規制に存在するとはいえ、これはあくまでも取引の規制ですから直接の開示要求と同じ効果は有しないはずで、当局はこれに加えて刑事罰もありうる風説の流布・偽計の中に開示義務を読み込んでいくのでしょうか?そして、どうして証券取引法157条ではないんでしょうか?157条は、「不正の手段、計画または技巧」(一号)、「誤解を生じさせないために必要な重要な事実の表示」の欠如(二号)を罰則とともに定めており、少なくとも第一号については過去に適用事例があるようです。

粉飾決算疑惑については意見を留保せざるを得ませんが、風説の流布という点に関しては従来多くの人がセーフだと思っていたところにいきなり刑事罰の可能性が示唆されたというニュアンスで事件をとらえています。
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by neon98 | 2006-01-19 08:13 | LEGAL(General)

あれから11年ーいささか個人的なこと
11年前の1月17日のことはやはり忘れることはできません。私自身の被害はたいしたものではなかったのですが、当時考えたことが現在の私にたいして影響を及ぼしていると思うわけで、毎年この日が来るごとに考えごとをしてしまいます。

20歳の成人式を迎え、旧友たちと深夜まで飲み明かした1月15日から1日と数時間が経過した早朝のことでした。寝ている私の真下からドンっという衝撃が続き、部屋の中の本棚・タンスなどが数秒の間に崩れ去るのを呆然と眺めていました。幸い、家の中の誰も下敷きになることはなく、家にも重大な被害はなかったのですが、生活インフラが崩壊し、交通も麻痺し、死者が増えていくニュースをラジオで聞きながらの生活は忘れられないものがあります。数ヶ月後に地下鉄サリン事件が起き、それ以降阪神大震災に関するニュースはあまり注目を浴びなくなりました。

「事件が風化する」という言葉は否定的なニュアンスで使われますが、つらい記憶を忘れてこそ、新しい生活に取り掛かれるという面があるので、自然のままに忘れること自体を否定的にとらえる必要はないと思います。ただ、教訓めいたものを忘れることとは少し違うのではないかと思っているところです。

「安全と水はただ」とよく言われましたが、この頃から危機管理ということが徐々に叫ばれるようになった記憶があります。当時の村山政権の対応は危機管理という意味で赤子に等しいもので、然るべき情報が国家の最高責任者に適正に伝達されていないということを感じたものです。阪神高速道路が倒壊している情報を既に中央に報告しているのに何も動きがなく、ゴルフに興じておられた様子や、救助犬が検疫を通過できず、海外からのボランティアがいらだつ様子などが報道されました。

中央では何も情報が把握できていない中で、迅速な対応をされたのが自衛隊の方でした。自衛隊法の災害支援に関する条文を利用し、現場の判断で災害復旧に動いたのが自衛隊で、地震発生後数時間の間に崩壊したビルの中での人命救助作業にとりかかっていました。自衛隊・警察・消防の方々には足を向けて寝られないなあと思ったことをよく覚えています。

ボランティア革命ということが言われだしたのもこの頃だと思います。お上に頼るということでは駄目だという認識が共有され、各地から支援物資をたくさん頂戴しました。被災地の中で比較的被害が軽かった私どもの地域からも(私も含めて多数が)ボランティアに参加しました。ボランティアというと美しいものととらえがちですが、現実には統制のとれていない若者の集団という面も多くあり、リーダーシップということの必要性を実感しました。マスコミ報道でとりあげられる地域にはたくさん支援物資が配分されるがそうでない地域にはいきわたらない、支援物資の仕分けなどバックアップの仕事はたくさん人手が必要なのに目立たない仕事にはボランティアが来ない、支援と「施し」の区別がなされていないなど、問題点もたくさん見つけられたと思っています。

関西には地震がないと皆が信じていました。そういう意味で被害者自身に十分な備えがあったとは思いません。ただ、日本という国全体で危機管理という精神が備えられていたのかというと、反省することは多く、その反省が現在に活かされていくことを強く希望する次第です。11年の歳月を経て私の中でも徐々に震災の記憶は風化されてきました。このこと自体は肯定的にとらえつつも、教訓なり、当時に考えたことは今度に残していきたいと強く思います。マニュアルを作成することまでは誰もがします。それを超えて人を動かすことこそ「危機管理」といえるわけで、色んなところでそれが根付くかどうかが問われていくのでしょう。
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by neon98 | 2006-01-17 12:54 | よしなしごと

ドンキホーテによるオリジン東秀に対するTOB
ドンキホーテによるオリジン東秀に対する「敵対的」TOB(Nikkei)が開始されたとのこと。
ディスカウントストア大手のドン・キホーテは15日、持ち帰り弁当・総菜店を展開するオリジン東秀にTOB(株式公開買い付け)を実施すると発表した。現在、ドン・キのグループ全体で30.92%ある出資比率を51.2%に引き上げ、子会社化を目指す。取得額は約100億円。取締役も派遣しオリジン側への経営関与を強め、小型店の共同開発・出店スピードを速める。
取締役会の賛同を経ておらず、これから検討がなされるとのこと。とりあえず速報ベースで備忘用にUPしておきます。
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by neon98 | 2006-01-16 13:08 | M&A

"I have a dream" but who has this speech?
1月15日はキング牧師の誕生日を記念し、お休み(今年は日曜日なので月曜日が振替休日)である。Martin Luther King, Jr (Wikipedia)を知らない人はおそらくほとんどいないだろうし、かの有名なスピーチを知らない人も少ないだろう。
I have a dream that one day this nation will rise up and live out the true meaning of its creed・・・・
今日はロースクールでの著作権法の講義でのお話を思い出して書いている。d0042715_14181772.jpgEstates of Martin Luther King, Jr. Inc. v. CBS, Inc., 194 F.3d 1211 (11th Cir. 1999)は、I have a dreamのスピーチの場面を収録したドキュメンタリーをCBSが放映したのに対し、キング牧師の遺族らが著作権法違反で訴えたもの。事件そのものは、キング牧師が公衆の面前で演説をしたとしても著作権の放棄とはいえない(注:1909年著作権法体制のもとでは、著者は作成と同時にコモンロー上の著作権を取得し、General Publicationによりコモンローの権利を失うーしたがって、著者はGeneral Publicationまでに制定法上の要件を充足し、連邦著作権法上の権利を取得しないといけない)としたもので、キング牧師の遺族らに著作権の保護を認めているのだが、それでいいのか?というDiscussionがあった(判決全文を読んでいるわけではないので他の論点があるのかもしれないのは注意されたい。但し、Fair Useにあてはまるような事案ではなかった。)。

日本人だったら法令の解釈・あてはめから議論がなされるところ、最初の意見は「キング牧師のスピーチはアメリカの財産であってそれを自由に使えないのはおかしい」からはじまり、「いや、ドキュメンタリを作成する会社はそれで金儲けをしているのだから、著者に対してきちんと著作権の対価を払うべきだ」「皆が注目し、TV放映までされている場面でスピーチをしている以上、ライセンスを与えていると解釈すべきじゃないか」「この遺族らは親父の偉業をネタに飯食ってるだけで、何もしてないんだから保護している必要はない。親父の権威をけがしている。」・・・色んな意見がでるわでるわ。まともな意見から、ちょっとね・・・みたいな意見まで。Policy Considerationだけで終わってしまったこのケース分析でしたが、それだけでも議論が続けられる面白い場面でした。

Who should have the copyright of the speech?
Should the speech be treated as public domain?
Is there any framework that allows CBS to reproduce the part of speech?
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by neon98 | 2006-01-15 10:29 | LEGAL(General)

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