<   2006年 05月 ( 30 )   > この月の画像一覧

特命調査
ある筋からの依頼で、メキシコのカンクンというリゾート地の現地調査にいくことになった。調査対象はハリケーンからの回復状況調査を中心とし、具体的調査項目としては(1)カンクン周辺海域の潜水方式による海洋調査、(2)カンクンにおけるリゾートホテルのサービス状況調査、(3)カンクン周辺の遺跡保存方法調査、(4)カンクン市内におけるレストランの食料保存・調理状況調査が含まれる。残念ながらある筋からは費用が出されないため、私費での渡航となるし、リゾートホテルのサービス状況調査には家族の意見を聴取することも含まれるため家族での渡航となるが、偉大な調査目的達成のためにはやむなしと判断する。海洋調査には危険が伴うため、ここ数週間走りこみを継続し、体を鍛え続けてきた。Cカードと3点セットを持参し、万全の体制で挑む。調査期間は一週間。
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真面目な現地調査であり、調査結果はある筋からデータ使用の許諾が得られれば学術論文として発表される可能性がある。TAX REFUNDをもらい、残された有給を消化し、帰国前に悪あがきとして遊びにいくんじゃないかという邪推は無用である。そこんとこよろしく。ということでしばらく更新ありません^^。
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by neon98 | 2006-05-29 13:17 | 日常・海外生活

中古品市場の日米比較
ぼちぼち帰国に向けて身の回りのものを少しずつ整理しはじめた。うちの奥さんがMoving Saleということでとりあえず使わない冬物類などを中心に処分。ご近所さんと一緒にMoving Saleを開催したところ、色んな人種の人々の色んな需要があるので、中古のかばんやら上着やら結構色んなものが売れてびっくりしたらしい。車や家具も処分していく予定なので6月中旬くらいにはあちこちの掲示板に出そうと思っているのだが、アメリカ人と日本人とでは中古品市場に関する感覚が全然違うのにはいつもびっくりする。

例えば、日本での中古車なんかは誰かが乗った瞬間に値が下がり、2年も乗ったら半額くらいになったりする場合があるけれど、アメリカだとせいぜい10%から20%程度減価される程度にとどまる。自動車なんかだと10年間の定率法による償却をしているようなイメージというといいすぎだろうか。アメリカで中古車評価でよく利用されるのがこの(Kelly Blue Book)であり、この金額をベースに交渉が行われる場合が多い。

家具などでも日本人が提示する金額は相当安いらしく、日本人が開催するMoving Saleには朝一番に殺到するアメリカ人がいた。彼曰く、日本人はわりと丁寧に家具を利用するし、その割りに安い出品が多いということのようだ。日本人である私としては、アメリカ人が提示する中古品価格だと高いし、概して乱暴に利用されていることが多いので、イマイチ購入意欲がそそられない。自動車なんかは本当に整備が悪い。

「もったいない」精神が定着した日本人であればもっと中古品を利用していいはずだし、日本における中古品市場が発達し、中古品価格が高騰してもいいはずなのだが、現実は違うのはなぜだろうか。幾つか仮説をたててみた。

(1) 物を捨てることに相当程度罪の意識があり、誰かに中古品として利用してもらうことはこのような罪の意識を軽減させることになる(「使ってもらってありがたい」)ので、対価が安くても売り手にとって売買が十分な効用を持つ
(2) 保管スペースがなく、処分コストが相対的に高いために中古品に対する需要が少ない
(3) 中古品が個人的関係のある人に対する売買であることが多く、そのような関係において対価を受領することに対する「恥」の意識がある
(4) 新製品により得られる満足度が高く、また新製品の価格が安く、中古品に対する需要が十分に喚起されない(これは日本に限定されず、多かれ少なかれそういう面があるのだが)
(5) 米国と比較して経済的格差が乏しく、中古品でもいいから欲しいという階層が比較的少ない
(6) Moving Saleをしようにも十分なスペースがないし、個人売買で家具を配送するにもコストがかかりすぎる
(7) 手間をかけて中古品を売却するだけの時間的余裕がない人達が多い

日本でもインターネットオークションにより幾らかは改善される余地があるし、リサイクルショップなども以前と比較すると随分充実してきているのだが、フリーマーケット的な個人市場はやはりまだまだ未開拓という気がする。
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by neon98 | 2006-05-29 11:25 | 日常・海外生活

旅をする人々ととどまる人々
前にも書いたように23歳の頃読んだ沢木耕太郎の「深夜特急」を再び読み返してみた。当時はこの本を読んで(あるいは映画化されたものを観て)同じルートをたどる若者が多数いたものだし、現在もそうなのかもしれない。

この本は私の中では2つのパートに分けられる。前半は、香港・バンコク・マレー半島・シンガポール・カルカッタ・カトマンズと抜け、再びインドに戻り、西へ向かうまでの部分であり、後半は、パキスタン・アフガニスタン・イラン・トルコ・ギリシャ・イタリア・モナコ・スペイン・ポルトガル・フランスと抜け、ロンドンで旅を終えるまでの部分である。前者は主人公が好奇心を持ち、人と関わりながら生活の中に溶け込んでいく部分であるが、後半に近づくにつれ、好奇心が崩壊していき、人と関わるのを避け、金銭をケチるだけの危険な旅に変容していく。そして、ただひたすら前に進みながら(ピサにいながらピサの斜塔を見ようともしない。)、旅を終えるだけの理由を探そうとしていたようにも思える。
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旅行記というには旅の記述に乏しく、10数年後に書かれたものであるためにタイムリーでもない。当時彼が考えたであろうことを旅を卒業した後に書いた自伝的小説であり、旅を続けるごとに少しずつ退廃的になっていく心境を見事に描ききっている。旅の直後に書いたのであれば逆に距離をおいた自己分析はできなかったであろうし、一定の年齢に達した後に振り返った「創作」であるからこそ、共感を覚えるのだろう。

不思議なことに以前はこの本を読むたびに旅に憧れ、旅にでようと思ったものだが、今回はなぜか自分のこととは考えられず、むしろ元の場所に帰ろうと思ってしまった。現在海外に住んでいるとはいえ、私は所詮帰国を前提に一時的に滞在しているにすぎない。そのコミュニティに所属せず、母国への帰国という選択以外ありえないと思っている時点で、単なる旅行者と本質的に異なる点はないのだ。「旅行者」として2年間アメリカに滞在している現在においてはどことなく帰国する理由、ひとところに住むつく理由を探しながら読んだしまったような気がするのは気のせいだろうか。

帰国したらまた大変な日々が待っているけれど、それもまた楽しい。絶対やめてやると思いながら働いた留学前だった(笑)けど、不思議なことにその生活が少し懐かしくもある。

(写真はネパールのポカラから見たヒマラヤ山脈)
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by neon98 | 2006-05-28 15:38 | 読書・映画等

私の子供たちが観るアニメはなぜ全て日本製なのか?
Mehra, Salil, "Copyright and Comics in Japan: Does Law Explain Why All the Cartoons My Kid Watches are Japanese Imports?" . Rutgers Law Review, Forthcoming Available at SSRN

まずはお断りから。筆者は、This is a work-in-progress; please do not cite or redisseminate without permission. と記載してあるが、無断引用禁止というのは著作権法32条に違反する記載として効力は否定される(例えば、服部弁護士の見解)し、米国著作権法においてもFair Useにとどまると考えられるので、「未完成品なので改変の可能性があり、論文や訴訟等における権威として利用すべきではないという注意書き」として理解することにする。何よりもご自身がWEB上で不特定多数に公開しているペーパーであるわけだし、出典を明示しない方が問題があるだろう。考え方を変えた場合にはエントリそのものを削除するほかない。

キャッチーなタイトルに惹かれ、どうでもいいと思われる論文を思わずメモをとりながら真剣に読んでしまう。業務に必要不可欠などんな論文を読むときよりも真剣度が高い(笑)。
外国人が日本を訪れた際に興味をおぼえるのがラブホテルであり、パチンコであり、電車の中で漫画を読んでいるサラリーマンの姿であるという。そのことからすると、ラブホテルを題材にした論文があるのも不思議ではないが、漫画を題材にした論文があるのも不思議ではない。

この論文の論旨は、日本の主流漫画と同人誌のマーケットが共存していることを題材にして、著作権の保護を強化すれば著作者に創作のインセンティブが与えられ、より良い製品や革新がうまれるという考えに疑問を投げかけるというものである。

1. 同人誌の著作権侵害性

ここでの同人誌とは、他の有名な著者による著名キャラクターを使って描いた漫画である(私などには「同好の士が資金を出し合って作成した雑誌」(Wikipedia)という定義付けの方が正確に思え、同人誌全てをこのように定義付けすることには疑問があるのだが、筆者が同人誌のうち著名キャラクターを使った描いた漫画のみを「同人誌」と呼称しているものと考えることにする。)。まず、筆者は、日米の幾つかの判例をひいて、日米いずれの著作権法においても、著作権の対象となるキャラクターを利用した同人誌が著作権侵害になり、著作権者は同人誌の著者およびそれを流通においた者を相手に著作権を行使することができると説明している。ちなみに、パロディであるとの主張に関しては、フェアユースという概括的例外条項が存在しない日本法においては、パロディであるとしても私的利用あるいは引用などといった個別例外条項を探さねばならず、即売会などで販売される同人誌を私的利用ということはできないし、多くの同人誌がオリジナルの引用・批判をしているものではない(同様の理由でアメリカ法においてもパロディにはならない。)という理由で、著作権侵害にはならないという主張を否定している。

また、同人誌がそして、営利目的のものではないという主張に対しては、同人誌は、ほとんど毎週開催される即売会(最大手の即売会での売上げは一日あたり15M米ドルを超えるらしい)のほか、上場企業である株式会社まんだらけのようなチェーン展開の本屋やインターネットにおいても販売されており、必ずしも無視できる規模の著作権侵害であるとは限らないとする。

2. 日本に著作権法が存在するのになぜ同人誌とそのマーケットが存在するのか

この説明としては、訴訟嫌いという文化的価値が漫画家たちに権利行使をすることを妨げているという説明や、訴訟提起によるレピュテーションリスクに基づく顧客層の喪失を避けるために権利行使しないという説明がありうる。

また、個々の権利者が権利の不行使によって利益を享受することはなくとも、産業全体として利益を享受するという説明もありうる。ただ、この説明ではなぜ個々の権利者がなぜ権利行使しないのかを説明できない。そこで、筆者は、著作権者が権利行使しない根拠を、日本の法制度のもとでは訴訟をするインセンティブが存在しないという説明(弁護士へのアクセス、訴訟遅延、認められる損害の少なさなど)に求める。例えば、日経新聞がその記事の著作権侵害に関して東京とNYそれぞれの裁判所に訴訟提起したところ、東京では11の記事の侵害に対して約800米ドル(+訴訟費用)、NYでは420,000米ドル(弁護士報酬含む)が認められたということである。

3. フェア・ユース概念への示唆

ここでの論旨は日本の著作権Enforcementシステムを批判することにはなく、同人誌マーケットと主流漫画マーケットが相互依存し、助け合うことにより、日本の漫画市場にはよく作品が生まれているという主張である。

筆者は、米国のショーや映画が日本市場に受け入れられており、英語を読める日本人が多数存在するにもかかわらず、米国の漫画は日本に存在せず、日本の漫画は多数米国に輸入されている理由を同人誌マーケットと主流漫画マーケットの相互依存に求める。同人誌マーケットと主流漫画マーケットの相互依存のメカニズムは明確ではないものの、筆者によれば(1)新しい才能のある漫画家の原資となる、(2)新しい漫画スタイルの機会となるなど産業全体への利益があり、その利益が個々の権利者への損失を上回っているとしている。

結論として、筆者は同人誌マーケットの実態は商業目的のものを含むとしたうえで、そのようなものもフェア・ユース概念に取り込んで考えたとしても、創作と革新を促すという著作権法の目的に沿うのではないかと、フェア・ユースをより広くとらえていくことを提案している。

感想めいたことを言ってしまうと、日本の漫画・アニメが隆盛であることを日本の著作権Enforcementシステムに求めてしまう説明はいささかこじつけという気がしないでもない。アメリカ人の描く絵の下手さかげんを見てしまうと、むしろ私は筆者の否定する日本の漫画文化の定着度合いに根拠を求めた方が素直な気がするのだが。なぜアメリカの漫画は日本に受け入れられないかというと、多くの面白い漫画が日本に存在するのに、面白くないアメリカの漫画を受け入れる理由がないからであり、フェア・ユース概念を広くとらえたところでアメリカの漫画が日本に入ってこないであろうことは私には容易に予測できる(笑)。
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by neon98 | 2006-05-27 04:49 | LEGAL(General)

PSLRAの評価(3・終)
前回の続きである。

4. 結果

(1) 仮説1の検証―訴訟提起と各変数の相関関係

(仮説1) PSLRAが施行される前と比較して、PSLRAにおいて提起される訴訟を説明するには、積極的会計、内部者取引およびガバナンスの要素がより重要である。

PSLRA施行前において、損害額に関する変数である時価総額と取引高はいずれも重要である。これに対して主張の見込み(merit)に関係する変数は、内部者持株比率を除き、重要ではない。この結果はPSLRA施行前において訴訟提起を左右する要素は詐欺の可能性と無関係のものであるという主張を支持するものである。

PSLRA施行後においては、損害に関する2つの変数に加え、主張の見込み(merit)に関する変数のうち幾つかが重要になった。例えば、決算修正、異常発生高と訴訟提起との間に有意の相関関係が存在する。さらに、内部者取引も訴訟提起との間の有意の相関関係が存在するが、異常な内部者取引に限定した場合はそのような相関関係は存在しなかった。なお、忙しさ(社外取締役の兼任が多いこと)も訴訟提起との相関関係が存在した。

(2) 仮説2の検証―会計詐欺と内部者取引の主張と各変数の相関関係

(仮説2) PSLRAが施行される前と比較して、PSLRAにおいてなされる会計粉飾や内部者取引の主張を説明するのに、積極的会計および内部者取引がより重要である。

少しわかりにくいが、要するにここでは会計粉飾や内部者取引に関する主張がなされた訴訟対象企業において、実際に積極的な会計や内部者取引が多いといえるのかどうかという命題の検証がなされることになる。

PSLRA施行前においては、会計に関するいずれの変数(決算修正、異常発生高、売上増)も会計粉飾の主張と相関関係にない。唯一相関関係にあるのは内部者取引に関する主張のみである。これに対して、PSLRA施行後においては、決算修正が有意の相関関係にあり、内部者取引はそのような関係にない。従って、PSLRA施行後の方が会計粉飾の主張に成立の見込み(merit)があるといえる。

PSLRA施行前においては、内部者取引変数(内部者取引、異常な内部者取引)は内部者取引の主張と相関関係にない。他方、会計詐欺の主張との正の相関関係は認められ、ガバナンスの変数である社外取締役の平均任期との間で負の相関関係がある。これに対して、PSLRA施行後においては、会計詐欺の主張との有意の相関関係は認められない一方で、内部者取引との有意の相関関係が認められる(但し、異常な内部者取引との有意の相関関係は認められない。)。従って、原告側弁護士はPSLRAのもとでより注意深く行動し、成立の見込みのある訴訟を提起するようになったものの、異常な内部者取引であることを要求する司法判断には注意を払っていないことになる。

PSLRA施行前の内部者取引と会計詐欺の相関関係は、ルーズな制度のもとで原告が詐欺の性質を厳密に特定していなかったことを示している。PSLRAが主張責任を厳格化し、特定する努力を著しく欠く主張に対して制裁を加えるようになったために、PSLRA施行後においては、積極的会計と会計詐欺の主張、内部者取引と内部者取引の主張とには相関関係がみられるようになってきた。異常な内部者取引に限定した方が司法判断に近いが、Netでの内部者取引で訴訟を提起したとしても制裁まで心配する必要はなく、単に訴訟が却下されるだけにすぎない。

(3) 仮説3の検証―訴訟結果と各変数の相関関係

(仮説3) PSLRAが施行される前と比較して、PSLRAにおける訴訟結果を説明するには、積極的会計、内部者取引およびガバナンスの要素がより重要である。

仮説3の検証においては損害に関する変数は検討対象から除外されている。和解という従属変数はもし訴訟が却下され、名目的金額で和解された場合には0となり、名目的金額以上で和解された場合は1となる。

PSLRA施行前においては異常な内部者取引のみが単独で有意の相関関係を持つ。これに対して、PSLRA施行後においては決算修正と内部者持株比率が有意の相関関係を持つ。決算修正がなされた場合に裁判所が却下しにくいことは自明であり、和解が多く成立することは理解しやすい。内部者持株比率が多い場合に和解が成立しやすいことは、経済的に裕福なものがリスク回避的である可能性を示唆している。注目すべきことは、内部者取引という変数が勝訴的和解との間で有意の相関関係を有していないことである。雑な訴訟提起の判断をした原告は報われないということであろう。

5. 結論

まとめると、(1)PSLRA後は詐欺の可能性に関係する要素(特に決算修正と内部者取引)が訴訟提起、主張、訴訟結果を説明する重要なものとなる、(2)詐欺の可能性に関係する要素はPSLRA前は重要ではなかった、(3)損害に関係する要素はPSLRA施行前後にわたり重要である。損害に関係する要素は詐欺の有無と無関係であるが、弁護士の報酬とおおいに関係のあるということだろう。PSLRA施行後において詐欺の可能性に関係する要素が訴訟活動の要因となっていることを考慮すると、PSLRAは少なくとも連邦議会の考えた目的の一部は達成していることになる。

ただ、筆者ら自身もこの検討結果に幾つかの欠陥があることは認めている。例えば、PSLRA施行によりmeritのある訴訟が提起されなくなることは否定できないが、その潜在的コストはこのモデルにおいては計測不可能であり、更なる検討が必要であるとしている。

まあ、要するに筆者らは、PSLRA施行により証券詐欺訴訟の主張の正確性が高まったという事実を指摘しており、逆に失ったものは計測不能であるとして、PSLRAそのものには賛否までは表明していない。ペーパーの分析手法からして正しい謙抑的な態度であるように思われる。

以上、ペーパーの中身をまとめてみた。むろん、このペーパーは各変数と訴訟活動との相関関係をまとめたものにすぎず、因果関係などはもっと複雑怪奇で単純なものではないのだが、政策評価のための重要な資料となる。データとあわせて読むと非常にわかりやすいペーパーであり、読まれた方にわかりにくい部分があるとすれば紹介している私の責任にすぎないので、興味があれば是非原文にあたっていただきたい。
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by neon98 | 2006-05-26 05:08 | LEGAL(General)

エンロン経営陣の結末
アメリカのみならず、世界中にも多大な影響を与えたエンロン事件ですが、陪審がKenneth L. LayとJeffrey K. Skillingに対する有罪の判断(但し、一部のインサイダー取引については無罪)をくだしたようです(Enron Chiefs Guilty of Fraud and Conspiracy (NYTimes))。NY Timesによれば、刑期などを含む判決自体は数ヶ月後になる見込みとのことです。

Worldコムの事件などとあわせて大騒ぎとなり、Internal Controlの重視, PCAOBの創設、弁護士による"Up-the-ladder"報告義務、オフバランス取引の開示、会計基準に合致しない会計慣行に関する開示制限、MD&A開示、刑罰強化、オプション会計・・・・、ありとあらゆる部門で影響を与えてきたこの事件、結末としてはどうなるのでしょうか。
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by neon98 | 2006-05-26 02:50 | Corporate Governance

我妻栄 in 深夜特急
沢木耕太郎「深夜特急」を読み返していて、ああこんなくだりがあったなあと思った。主人公(沢木)がバンコクーデリーの変更不可のチケットをインド航空の従業員と交渉してバンコクーカルカッタに変更してもらうシーンである。
チケットを書き換えてもらい、礼を言って出ていこうとすると、彼は突然、流暢な日本語で話しかけてきた。
「我妻先生はお元気でしょうかね」
私が驚くのを楽しみでもするように彼はさらに言った。
「私は、東京大学で我妻先生に法律を習っていました」
我妻先生とは『民法大意』を書いたあの我妻栄のことだろうか。彼に訊ねると、そうだと答える。こちらも大学時代に、教科書として『民法大意』を使わされたことはあるが、その民法の大学者に直接教えてもらったわけではない。
といきなり我妻大先生が登場するのである。
(中略)そそくさとそこを出てから、彼が本当に東大で我妻栄に習ったのかどうか、疑問に思えてきた。我妻栄に直接教壇の上から講義を受けたにしては若すぎたからだ。あるいは、それは日本人の度肝を抜くための、彼の得意のジョークだったのかもしれない。我妻先生はお元気ですか、といきなり言われても、弟子でもない日本人にわかるわけがない。日本人の東大崇拝を逆手にとって、日本人を煙にまいては面白がっているだけなのかもしれない。そうだとすれば、私もまたうまくからかわれたということになる。
いくら我妻栄大先生とはいえ、法律科目について聞きかじったこともない人にはさすがに無縁の人であろうし、ここで敢えて我妻先生の名前を出している以上は沢木耕太郎の創作とは思えない部分である。なんとも面白い経験があるものだ。

得意のジョークという筋書きはさすがに深読みのしすぎではあるまいか。我妻栄先生を知らないのにも関わらず、インド人がジョークのネタとして我妻栄先生を選択する可能性がどれだけあるものかを考えてみればおのずとわかるというものだ。
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by neon98 | 2006-05-25 12:09 | よしなしごと

PSLRAの評価(2)
さて、前回の続きである。検証する方法論が面白い。

2. 仮説の提示

PSLRAによる訴訟制限(施行やPleading standardを厳格に要求する判決など)が株価に与える影響は正の関係にあり、市場参加者は概ねPSLRAが株主の利益に合致すると信じているようである。但し、市場参加者がPSLRAの影響を正しく判断するだけの情報へのアクセスと能力を有しているかは定かではない。従って株価研究は間接的な証拠でしかない。

PSLRA施行前後における訴訟提起数や訴訟の種類についての研究も存在するが、これらはPSLRAがnon-meritoriousな証券訴訟を減少させる機能を有しているかどうかについて直接的な証拠にはならない。

そこで、このペーパーにおいては以下のような仮説をたて、その検証を行う。

(1) PSLRAが施行される前と比較して、PSLRAにおいて提起される訴訟を説明するには、積極的会計、内部者取引およびガバナンスの要素がより重要である。

高められた主張責任により原告側はより客観的な詐欺の証拠(会計基準違反や内部者による株式大量売却)などを求められる結果、訴訟提起時点におけるmeritがPSLRAにより変化する。

(2) PSLRAが施行される前と比較して、PSLRAにおいてなされる会計粉飾や内部者取引の主張を説明するのに、積極的会計および内部者取引がより重要である。

Forward-looking statementの主張がより困難になったこと、主張責任が強化されたことから原告側の主張はForward-looking statementに関するMisstatementを主張するインセンティブを欠き、会計粉飾や内部者をより主張しやすくなるはずである。また、投資家を欺き、自らが詐欺により利益を得たという客観的証拠はScienter(故意)を推認する。

(3) PSLRAが施行される前と比較して、PSLRAにおける訴訟結果を説明するには、積極的会計、内部者取引およびガバナンスの要素がより重要である。

訴訟において弱い主張しかない場合は原告側と被告側は訴訟コストを考慮した名目的な金額で和解をするはずである。ただ、原告側弁護士は、和解金額は常に主張の見込みを反映すると主張しているので、それが事実であるならば、merit factorsは和解結果を説明するにあたって(1)と同様に機能する。

3. データの抽出

(1) 証券詐欺訴訟を提起された企業郡の選別

サンプルとして抽出されるのはCRSPおよびCompusatに掲げられた全てのコンピュータハードウェア・ソフトウェア産業の企業である。まず、これらの企業郡からPSLRA施行前(1991-1995)に証券詐欺訴訟を提起された企業と施行後(1996-2000)に訴訟提起された企業とを識別する。

この時点でいえることは(a)施行前が51件にすぎないのに対し、施行後は68件となっていること、(b)施行前は会計に関する主張を含む場合が27.4%にすぎないのに対して、施行後の割合は57.3%となっていること、(c)内部者取引の主張についても同様に33.3%から75.0%に増加していることである。(b)および(c)の結果に関する一つの説明は、原告がPSLRA施行後においてもMotion to dismissに耐えうる請求原因を選択するようになったということである。他方、(b)に関しては単に近年の会計報告の質が低下しているとの説明も可能であるし、(c)に関してはストックオプションを中心としてインセンティブ報酬制度のために内部者取引事例が増加しているとの説明も可能である。

(2) 訴訟提起されていない企業郡の選別

その後、同様の企業郡の中から同様のサンプリング期間内に証券詐欺訴訟を提起されていない企業を抽出し、当該抽出対象企業郡からさらに訴訟提起された企業と同様の株価下落をしている企業を識別し、マッチングを行う。ここで得られる結果は、同様の株価下落を経験しつつも、訴えられた企業とそうでない企業との差異であり、原告側弁護士の判断過程を反映したものとなるはずである。

この時点でいえることはPSLRA施行後の方が訴訟提起のために大きな株価下落を必要としているということであり、この事実は弁護士がPSLRAの障壁を乗り越える動機付けとして大きな潜在的な損害が必要であるという説明と整合的である。

(3) 変数の把握

さらに、なぜ訴訟が提起され、解決されるのかを説明する要因として、(a)損害、(b)会計、(c)内部者取引、(d)ガバナンスという4つの変数をとりあげる。

(a) 損害:時価総額と取引高を把握する。この時点でいえることは、(i)時価総額と取引高は訴訟と正の相関関係がある、(ii)PSLRA施行前後において時価総額に特段の差異はみられないが、PSLRA施行後において取引高は上昇している、(iii)PSLRA施行前後にわたって、訴訟提起を受けた企業はそうでない企業に比較して、時価総額と取引高が大きいという事実である。

(b) 会計:決算修正(restatement)、異常発生高(abnormal accrual―営業活動や経済環境に帰着する通常の発生と区別される、経営者の裁量による収入認識)と売上増を把握する。この時点でいえることは、(i)PSLRA施行後に決算修正と売上増が顕著になったのに対し、異常発生高については特段の差異はみられない、(ii)訴訟提起されていない企業と比較した場合、訴訟提起された企業においては決算修正が有意に多い(特にPSLRA施行後においてその減少が顕著である)、(iii)訴訟提起されていない企業と比較して、訴訟提起された企業においては売上増が多いことであり、(iv)異常発生高に関してはPSLRA施行後に限り同様の現象がみられることである。

(c) 内部者取引:異常な内部者取引のみを把握する(従前と同レベルの内部者取引は除外する)。この時点でいえることは、(i)PSLRA施行後において内部者取引は増加している(オプション報酬制度の増加と整合的である)が、異常な内部者取引には特段の差異はみられない、(ii) PSLRA施行前後にわたり、訴訟提起された企業とそうでない企業との間において異常な内部者取引に有意の差はみられない一方で、内部者取引(異常な取引に限定されない。)をとりあげると訴訟提起された企業の方がそうでない企業よりも多い。従って、原告側弁護士としては過去の売買実績と比較して異常かどうかを考慮することなく、内部者取引の多い企業を訴える傾向があるといえる。

(d) ガバナンス:社外取締役の平均任期、忙しさ(社外取締役の平均兼務数)、独立性(社外取締役の割合)、社外取締役の持株比率、社内取締役の持株比率を把握する。この時点でいえることは、(i)PSLRA施行前後にわたり上記5つのガバナンス変数に有意の差はみられない、(ii)PSLRA施行前後にわたり訴訟提起を受けた企業の方が社外取締役の数が多い(これは訴訟提起を受ける企業郡が相対的に規模が大きいことに起因するのかもしれない)、(iii)PSLRA施行前後にわたり訴訟提起を受けた企業の方が外部取締役の持株比率が低い(有意の差がみられるのはPSLRA施行後においてのみである)、(iv)(予想に反し)PSLRA施行後においては訴訟提起を受けた企業の方が取締役の独立性が高い(筆者注:これも同様に企業規模に起因する可能性がある)。

(4) ロジット回帰モデル(Logit regression model)

ここではそれぞれの変数が訴訟にどのように影響するのかを検討するためにロジット回帰モデルを利用している。

(長くなったので続く)
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by neon98 | 2006-05-25 05:57 | LEGAL(General)

PSLRAの評価(1)
今日ご紹介するJohnson, Marilyn F., Nelson, Karen K. and Pritchard, Adam C., "Do the Merits Matter More? Class Actions under the Private Securities Litigation Reform Act" (September 2002)は、PSLRA施行前後の訴訟提起・訴訟結果に関するデータを題材にして、PSLRAが初期の目的を達成したかどうかを検討するペーパーである。

どの分野を専門として食べていくとしても、弁護士にとってやはり米国の訴訟システムは面白い。良くも悪くも法律家、裁判がこれだけ生活に根付いた国はほかになく、悪名高いFrivolous lawsuitを引き起こすシステムが学術的にどう評価されているのか、ゴシップ記事以外にきちんとしたものを読んでおくのも悪くないと思った。アホアホ裁判を量産する国であっても、経済力において世界No.1であり、顧客にとってこの国での商売が避けられない以上は弁護士としても傍観しているだけではいられないのである。

統計の話に深入りするだけの知見はないが、どういう手法でPSLRAの評価をしようとしているのかが興味深いところであるから、短くこれらの点にも触れておきたい(詳しく知りたい方は原文をどうぞ)。とりあえず今日のところはイントロまで。

1. イントロダクション

Private Securities Litigation Reform Act(PSLRA)はクリントン元大統領の拒否権を乗り越えて1995年12月に成立した。立法の背景には、原告側弁護士は企業の株価の著しい低下の後直ちにステレオタイプの請求原因を書き連ねて訴訟提起する、または原告側弁護士には訴状に記載されていない維持可能な請求原因をDiscoveryの過程で発見する十分なインセンティブがあるという連邦議会の見方が存在する。

すなわち、PSLRAは以下の改正により、Frivolous lawsuitsが提起されるのを抑制する役割を持つものとされたのである。
(1) Misleadingな表明を特定し、なぜそれがMisleadingなのかという理由に関する原告の主張責任を強化し、さらに必要とされる被告の主観的要件を強く推認させる特定の事実を原告が主張することを要求する。
(2) 意図的に虚偽を述べておらず、十分な注意文言を伴う場合はセーフハーバーにより免責される。
(3) 主張責任を充たせない原告はDiscovery手続に入ることができない。
(4) 裁判官に対してFrivolous claimsを提起した者に金銭的制裁を加えることを要求する。

このペーパーによると、PSLRAの施行により証券詐欺訴訟の却下率は高まっている一方、訴訟提起数は一時的に減少した後増加傾向を示し、PSLRA施行前のレベルを超える数の訴訟が提起されている。

原告側弁護士は、(1)訴訟は常に理由(merit)があるのであり、PSLRA施行により理由のある訴訟まで却下されるようになったにすぎない、(2)訴訟提起の数の急増は単に詐欺の数の増加を示しているにすぎないと主張している。

よりシニカルな訴訟提起数の急増の説明は、原告側弁護士からすると彼らに入手可能な情報だけでは当該案件が詐欺によるものか判断できず、却下率が上昇すればDiscoveryにたどりつく可能性が低くなるからより多くの訴訟を提起しなければならないというものである。

このペーパーの目的は、証券詐欺訴訟におけるmeritはPSLRA後より重要になったかどうか(PSLRAはnon-meritoriousな証券訴訟を減少させるという目的を達成しているか)という根本的な疑問に応えることである。
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by neon98 | 2006-05-24 02:37 | LEGAL(General)

So Kong Dong, Fort Lee NJ
豆腐チゲの有名店でManhattanやQueensからも食べに行く人がいるらしいということで行ってきました。ManhattanからだとGeorge Washington Bridgeをバスで渡るか、Port AuthorityからもLincoln Tunnel経由でバスが出ています。ミツワに行かれるついでに少し足を伸ばしてはいかがでしょうか(交通の便が多少悪いですが)。

So Kong Dong
130 Main St, Fort Lee, NJ 07024-6934
(201) 585-1122

メニューは豆腐チゲ(具は幾つか選ぶことができる)とKorean BBQしかありませんが、チゲの辛さはnot spicy, not too spicy, medium, hot, very hot (だったかな?)の5種類から選べます。そんなに辛くありませんが、香辛料をあまりきつくしてしまうと豆腐の味が負けてしまうので初めての方はMedium(せいぜいHotどまり)くらいで挑戦することをお薦めします。スープに溶け込んだやわらか豆腐に、卵をとじこんで味わってください。カメラを持参するのを忘れ、写真はありません^^。
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by neon98 | 2006-05-22 23:58 | 日常・海外生活

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