「深い河」遠藤周作(講談社文庫)を再度読み直す。彼の作品の背景にあるキリスト教的背景を押し付けず、全ての宗教の背景にあるであろう人間に対する「愛」をテーマにした作品として非常に面白い。
僕も、特定の宗教に真摯に帰依することなく、あらゆる宗教に基づいた行事を楽しむ典型的な日本人である。人智を超越した何かが存在することの可能性までは否定はしないが、今後も特定の宗教を真面目に信じることはないであろう。
だからといって、宗教倫理に相当する価値観がないかというと、そんなことはない。キリスト教的価値観を掲げながら、倫理を超越した行動をとりがちな某国の人よりもより倫理的だし、人間を大切にした行動をとろうとは心がけている。特定の宗教を信仰するか否かにかかわらず、肉親や親しい人の死の場面を皆みてきたはずで、生死の関わる局面で人の行動原理たるものが何かというものは文化として受け継がれているのではないか、そう思う。