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証券取引所の戦略
“NYSE Group is well positioned to compete and address the challenges of a rapidly changing and evolving global financial marketplace.” – John A. Thain, Chief Executive Officer of NYSE Group, Inc. プレスリリースより)

New York Stock Exchange (NYSE) とArchipelago Exchangeとが統合し、NYSE Group Inc.としてNYSEに株式上場を果たしました。まず、導入として、証券取引所の株式会社化・株式上場に伴う利害相反の問題点について関連する過去のエントリをあげておきます。

取引所の組織改革ー規則制定権と利害関係
Competition among Securities Exchanges – Redux
証券取引所がガバナンスを決める時代?
証券取引所規則の正当性?

利害相反の問題に関係して、Flecknerは(1)他市場への重複上場と、(2)自主規制機能の独立性強化という政策論を展開していたのですが、NYSE Group IncはNYSEのみで株式を取り扱っているようで、Flecknerが主張したダブル上場はしていません。また、NYSE Regulationという独立の非営利の子会社が自主規制権限を有することとされ、売買に関する法や規則の執行や、上場審査・上場管理を行うこととされています。

NYSE Group Head Opposes Separate Regulator (NYTimes)によると、NASDAQは別組織であるNational Association of Securities Dealers (NASD) に監督されているのに対して、NYSEは子会社を通じて行うこととされている点が議論を呼び起こしているようです。このあたりは自主規制のためには証券取引所と一体となって専門的知識を駆使する必要があるという立場と、営利団体である証券取引所との利益相反を解決するためには独立性が不可欠であるという立場とのおなじみの論争です。NASD側はNYSEとのJoint Ventureを設立して自主規制部門を統合するとの案を提示しているようですが、そのような立場だとAntitrustからの考察も必要とされるように思います。

もう一つのニュースといえば、オーストラリアのMacquarie Bank Ltdからの買収提案を拒絶したロンドン証券取引所がNASDAQからのより高い買収提案をも拒絶したとのニュースです(LSE Rejects $4.2 Billion Nasdaq Bid Approach:NYTimes)。公的な機能を有した営利団体である証券取引所に対して外国企業ないし外国証券取引所の買収提案がなされるということが普通に行われる時代になってきたということでしょうか。村上ファンドが大証の株式を買い進めたように、東証も上場すれば同じようなことがありうることは容易に予測されます。公的な存在であることと、買収防衛策を講じないといけない場合があることとの関係をどう考えるのか、論理必然の関係にはないので少し整理していく必要があると思います。

さて、東証といえば上場を遅らせるという報道も先日なされたところであり、今のところ動きはみえません。東証は「自主規制機能は市場運営と密接不可分な市場開設者としての機能の根幹であり、市場開設者自身が自主規制機能を発揮するのが最も効率的である」として、自主規制機能の一体運営を主張する立場で、金融庁と対立しているところです。

東証の資金需要がさほどないことを指摘する見解(見解の存在を指摘するものとして、小池拓自「証券取引所と自主規制機能―東京証券取引所の上場を巡って」)もあるようです。ただ、先日の東証のシステム障害などをみているとそもそも設備投資に対する考え方が根本的に間違っているのではないかと思われる(参考記事として読売ニュースのリンクを貼り付けておきます。)わけで、通常の数倍程度の処理能力を有する設計にするためには現在の設備投資計画ではおそらく不十分なのでしょう。
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20060216mh11.htm
http://www.yomiuri.co.jp/atmoney/mnews/20060120mh06.htm

証券取引所が規模の利益を享受する産業であること、流通性を高めることが上場企業の資金調達を容易にすることなどを考慮し、東証が優越的なマーケットであることは東京での雇用市場にも直結することなどをあわせて考えると、のんびりとしている状況ではないように思います。システム投資が金銭の問題だけではないことは承知していますが、金をかけないシステム投資というものもありえないわけで、処理能力なんかは現行の5倍を目指したところでおかしくないでしょう。そのために株式上場という手段をとるべきと思うのであれば、もうそろそろ時期は来ているわけで「自粛」めいた沈黙を守ることに意味はないと思います。

証券取引所の公の機能を維持しつつ、マーケットメカニズムを利用して顧客の集まる取引所を形成するという、ある意味矛盾したような話ではありますが、NYSEの上場は何かを考えるいい機会となりました。
by neon98 | 2006-03-11 04:51 | Securities
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