研修での仕事やら、撤退準備やらで少しバタバタしているのだが、頭の中に残っているものを後に残しておく意味で読んだ文献のことなどを少し整理しておこうと思う。自分向けのメモに等しいので、ややわかりにくい点があるやもしれないがその点はお許しいただきたい。
シリーズ 日本のCorporate Governanceを考える(4)―ガバナンスモデルの多様性というところで少し触れたことのあるState Competition Theoryについて、
State competition for trusts (Ideolog)というエントリがなされている。
遺言信託として使用されるDynasty Trust (100年以上継続する半永久的な信託)に関して、Rule against perpetuities (永続する信託等を無効とする法理ーBARBRIで習います。)を制限して安定的な遺言信託がなされるようにしたり、各州の間でより良い制度を競いあっているという話で、アメリカの信託制度に詳しくない私にはこれ以上突っ込みようがないのだが、面白いのはどういう原理で州間の競争原理が働いているのかという仮説である。
以下、引用するようにRibstein教授は州間競争の原理はfranchise fees or taxesではなく、local business(大部分は弁護士業)であるとしている(立法者としての弁護士がビジネス主体としての弁護士業を拡大・保護するという原理であろう)。
The best academic work on the competition for trust funds is Sitkoff & Schanzenbach’s path-breaking study. As I've discussed, the work interests me in demonstrating that the real driver of state legal competition is not franchise fees or taxes, but the interests of local businesses, predominately lawyers, an I idea I first discussed in Delaware, Lawyers and Choice of Law, 19 Delaware Journal of Corporate Law 999 (1994). Lawyers compete for clients by maintaining the law of the state in which they are licensed. I proposed this as a rationale for lawyer licensing in Lawyers as Lawmakers: A Theory of Lawyer Licensing, 69 Mo. L. Rev. 299 (2004).
会社法の世界でも州間競争という議論はよくなされており、デラウェア州法がなぜ優位にたったのかという議論はよくある。いわゆるRace to the topとかRace to the bottomという議論である。ただ、Mark J. Roe, Delaware's Competition, 117 Harv. L. Rev. 588 (2003)は、州間の競争というよりはデラウェア州法と連邦法とのせめぎ合いととらえていて、会社法の領域でデラウェア州法が連邦政府の意向を無視してしまうと証券法などの分野での改正により事実上デラウェア会社法が改正されてしまうという主張をしており、SOX移行の動きをみている限り、この主張は的を得ているように思われる。なお、同じ著者による同趣旨の論文として、
Delaware's Politicsというものがあるので、興味があればご参照されたい。